海、きれいだね・・・
すみません、思った以上に前回から期間が空いてしまいました・・・一週間に二回書くかも、とか言ってたのに・・・それにストックも減ってきましたし・・・しっかり書いて、しっかり投稿しなければ!それでは続読よろしくお願いします。
リンから解いた鎖で五本の丸太を筏になるように上下交互に通して縛っていく。それを端と真ん中で計三回。すると本当に乗るためだけの簡素な筏の完成!
「よし、出来た。問題は浮くかどうかだね。」
「これ本当に浮くの?船とかは原理と形的に浮くのは分かるんだけど。」
リン、君は一体どこまで知識の幅を広げているの?それは浮力、重力、抵抗などの物理範囲でしょう?お姉ちゃんは文系で生物基礎と化学基礎しか取ってないから全く分かんないよ。一年生の時に取ってた物理では赤点だったしねー。ああ、受験勉強とか思い出したくない。
そんな負のスパイラルは放っておいてと。出来た筏を縛っている鎖の片方を現実で言う、マングローブの木の足元に括り付けた。そして『インテシオ』を自分にかけ、身体強化して、作った筏を川へとゆっくり着水させる。
「そーれ!」
すると筏はしっかりぷかぷかと浮いてくれた。着水は問題なし。残りは二人乗って沈まないかどうか。さすがの私といえど水棲魔物のいる川には落ちたくない。こわごわと筏に体重を乗せていく。半分以上を乗せてみたがびくともしないので一気に残りの半分を乗せてみた。結果はというと。
「おおー、しっかりしてるねー。我ながらいい出来だよ。」
私の全体重を支えているにも関わらず、ほとんど沈んでいる感じがしない。お父さん譲りのいくら食べても太らない体質がこんなところで役に立つとは。どんな時に親に感謝するかなんて全く見当がつきません。
とりあえず完全に安定しきっているので次にリンを手招きする。
「こっち来て、出発するよー。」
「私が乗っても大丈夫?沈んだりしない?」
「だーいじょーぶ。」
リンは私より軽いから。この分だとイーヴァさんを乗せても大丈夫そう。鎧ありだと分からんけど。あー、怒っているだろーな、イーヴァさん。帰りたくない。
リンは怖いとは言っていたけれど言葉とは裏腹に、一気に筏に飛び乗ってきた。おかげで少し筏が沈みかけたけどすぐに再び浮力が働き安定する。さーてしゅっぱー・・・と思ったところでで重要なことに気が付いた。
「オール作るの忘れた。」
と、いうわけで。『アウラ』を使って鎖を括り付けていたマングローブの足を切断しオールの形に整える。いまさらだけど『アウラ』、攻撃呪文だったのにな・・・
そんな『アウラ』からすると悲しいことを考えながらいよいよ船出。さよーならー。よくある紙テープはないけれど。筏だし。川の流れは広さの割には速くて私やリンが漕がなくてもすいすいと進んでいく。
暇だったので寝っころがって上を見上げる。木洩れ日が大変きれいで気持ちいいです。ああ、眠りたい。と、思っていたら一緒に寝っころがっていたリンが
「すーすー・・・」
と寝息を立てて寝ていた。初めての野宿で疲れが抜け切れていなかったらしい。
「かわいいなー。」
あどけない寝顔を見ながら呟く。リンに先に寝られてしまっては私も一緒に寝るわけにもいくまい。特にすることも無かったので、リンが目を覚ますまでひたすら眠気との戦闘だった。ぶっちゃけワイバーンとかスターベアより強敵だった。
「う、ん、あれ?寝ちゃってた?」
「おはよ、リン。うん、大体一時間ぐらいだったかな。」
本当は三時間以上経過していたのだが、リンはおそらく気に病むタイプだからサバをよんで伝えておいた。かわいい寝顔も堪能させていただいたのでね。しかし、太陽も十分に上がってしまっていたのでばれているだろうが。
「ごめん、ありがとう。それで今ってどれぐらい進んだか分かる?」
「いーや、さっきから木ばっかで全く分かんない。」
「そっかー。」
そう言いながら周りを見渡すリン。そしてあることに気が付いたのか考え込んだ。どうしたんだろうか。
「どしたの?リン。」
「えっと、あの花が咲いているってことと、昨日見た月が確か少し欠け始めた月だったから・・・」
「?」
一つ頷くとリンはこっちを見て笑うと
「多分そろそろ海につながると思うよ。」
「え、なんで分かるの?海なんて全く見えないんだけど。」
「あの花って見える?」
そう言って森の中を指さす。目を凝らして見てみるとリンの指さす先に青い花が見えた。沖縄の鮮やかな海に似た色をしていてとてもきれいだった。
「あのきれいな青い花?」
「うん。あの花って普段は白い花なんだけど海水に触れると青くなる性質があるの。だからあの花が青くなっているってことは・・・」
「海が近いってことか。しかもさっきの月の欠け始めがどうとかっていうのは、満月の夜は川が逆流するから海水に触れやすくなるってことだね。」
「さすがお姉ちゃん、知ってたんだね。満月の時に逆流するってこと。」
「一応ね。」
というより余程の読書家なんだね、リン。その脳内キャパを私の受験勉強の時に一部分でいいから欲しいなー。
それから色々話しているうちに二人のお腹が、くう、と鳴った。
「もうお昼かー。また何か狩ってこようか。それとも釣ろうかな、この川で。何か釣れるのかな。」
そう言って覗き込んだ。うっすらと底が見える川だけど一見してみたところいないなー。やっぱり狩りに行くか―。と思ったところでリンが
「ちょっと待って。あの木のところに着けられる?」
と訊いてきた。指さす先には一本の大きな木が立っていた。その木には梨みたいな果物がなっていた。あれってもう食べれるんだ。確かにおいしそーだけど、熟す前って感じがするなー。梨を知ってると。
「オーケー、ちょっと乱暴にしようかな。『チェインランス』」
リンの指差した木の横の木に狙いを定めて放つ。
グシャ!ズズズ、ズゥーン・・・
「あ・・・やっちゃった・・・ん?」
威力が強すぎて木の根元が砕け散ってしまった、そしてそのまま倒れてしまった。しかし、私という人間は運にも恵まれていたらしい。その倒れた木が果物のなっている木に激突していくつかの実がコロコロンと倒れた木の葉の上に落ちたのだ。あんまり下に落ちてほしくないからね~。
「ラッキー。」
そう言いながら『チェインランス』を今度はちゃんと威力を加減して別な木に打ち込み、固定すると陸に筏を着けた。それにしても魔力コントロール考えないと大規模戦闘の時に味方巻き込みかねないなー。それこそ『コーサスルクス』なんて人に当たったら良くて体に穴が空いて、悪くて蒸発だからね。
「そういえばこの果物って何なの?」
木の葉の上に落ちたため傷の無い販売可能そうな梨っぽい果物を拾い集めながらリンに訊く。
「ピアルっていうんだよ。安くて美味しいから教会にいた時によくデザートとして出してもらってたの。シャクシャクしてて美味しいんだよ。」
と言いながら味を思い出したのか、ぽわーっと幸せそうな表情を浮かべる。私はその顔を見て、ギルドカード内にこの果物を切らさない様にしようと固く心に決めた。
落下したピアルの中から傷の無いもの、少ないものを選んで収穫すると合計で八個あった。それぞれ一個ずつ取って残りはギルドカードの中へ。本当に便利だわ、これ。
「じゃ、いっただっきまーす。」
「いただきます。」
気にしてなかったけど、いつからかリンも「いただきます」って言うようになってたんだね。そんな事を考えながらピアルに齧り付く。
「あ、おいし。」
「でしょ。」
ピアルは林檎のふじみたいなシャクシャクした食感で、味は梨の糖度の高いやつみたいな味がした。私はなんとなく馴染みのある味だったため、そしてリンは好きな果物だったため二人とも無言で食べすすめた。
シャクシャクシャク・・・
数分後、
「あー、美味しかった。いい食材見つけたなー。小腹空いた時にちょうどいいね、ピアルって。」
「うん、帰りにも探してみようよ。空から帰るか陸から帰るかは分からないけど。」
「あれって聖大陸全体分布なの?」
「うん。それも安価な理由の一つだよ。」
需要曲線をある程度、供給曲線が上回っているからだね。加工品って無いかな、ジャムとか。一本の木に結構生っているから加工できる程の収穫量があると思うんだけどなー。
今回は『リキッド』で水を作り出して手を洗うと、再出発した。それからしばらくはオールを漕ぎながら進んだ。因みに途中で疲れを感じたから『インテシオ』を使ったけど。ただでさえ川の流れが速かったのに加えて、強化した力でのオールだったので今までの倍以上のスピードで進むこととなった。そのため・・・
「あ、見えてきたよ!」
そのリンの声に反応して顔を上げると微かに先の方に川とは違うキラキラが見えてきた。
「じゃあ、飛ぼうか。海は上から見た方が絶対きれいだしね。」
「なるほど。」
漫画やアニメからの影響なんだけど、よくあるよね、そういう画。特に水着回って言われるやつだけど、リンの水着も見られるかな。あるなら見てみたいものだけどね。そんな事を考えながら『ハルシオン』を唱えて、リンを抱きしめる。
「行くよ、リン。」
「はーい。」
翼を羽ばたかせて一気に林冠を越えて高度二百メートル程へ。その視界から見えたものはというと。
「すごい、きれい。これが本物の海かー。」
「・・・元の世界よりきれいだわ、この世界の海。」
リンに聞こえないようにつぶやく。
どこまでも広がる広大な海。その海は先程の川以上に透き通っていてきれいな青色。その海と水平線を跨いであるのは、こっちも雲一つないきれいな青空。海の青は空の青とよく言ったものだけど、これを見ると本当にそうかもと思うような美しさ。
「地の青と 天の青とも 知らぬなか 我が身浮かぶは どちらの青か・・・なんつってね。」
思わず文芸部みたいな事をしてしまった。去年はコンクールに出して確か部長が特別賞貰ってたっけ。っていうかこの歌、季語入ってるっけ・・・?
それにしてもずっと見てたり旋回したりすれば本当にどっちが空でどっちが海か分からなくなりそうだ。
「リン、とりあえず降りようか。筏は・・・まあ、放置しておいてもいいでしょ。どうせ帰りには使えないしね。」
「うん、それより私、海に入ってみたい!」
おーおー、目、キラキラさせちゃって。ここにもう一つきれいな海があったよ。どっちの海も吸い込まれそうだ。
ピアルは梨のpearをなんとなく読みから取ったものですが、気付かれた方はどれぐらいいらっしゃったのでしょうか・・・え、興味ない?失礼しました。
では、次は一週間以内に投稿する予定ですが、遅れましたらすみません。そして続読お願いします!




