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チートってのも悪くないね。  作者: 葉月 コウ
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ごめんね・・・

 今日は建国記念日ですね。というわけで国に関する補足ですが、聖大陸には四大国の他に多数の国、町、村が存在しています。もしかしたらマナ達が国家間の抗争に巻き込まれるかも・・・

 という回収のする気もない伏線を張ったところで今回も続読お願いします。

 夕日が沈む一時間ほど前に、ここまでかなーと区切りをつけ、キョロキョロと辺りを見回して開けた場所を探すと、前方二百メートルほどにキャンプするのに手ごろな開けた場所があったので降下していく。


着地成功。ここで再び『クアリー』に意識を向ける。近くに魔物の反応はなかった。


「何もいないね。よし、今日はここでキャンプにしよう。」


そう決めると近くにあった巨大な木にリンを預け、ギルドカードを出した。


「テント。って言えばいいのかな?」


言った途端、目の前に二、三人が一緒に寝られる様なサイズのテントが張られた状態で出てきた。


「すごーい、やっぱり異世界って便利だな・・・。」


逆に張る前のテントが出てこられても困ったけれども。取りあえず、木に預けていたリンをテントの中に運び込むと、鍋やらフライパンやらのギルドカード内に入っていた料理道具を片っ端から引っ張り出した。


「さて、これだけ料理器具があればいろんな料理が出来そうだけど何作ろう。っていうかワイバーンの肉ってどの料理が一番美味しいんだろう?」


うんうん悩んでいると後ろからガサゴソという音が聞こえたので振り返ってみると、テントの中からリンが顔を出した。やっぱり寝起きもかわいいですね。我が妹は。


「おはよう、リン。よく眠れた?」


目をこすりながらあくびをすると


「おはよう、お姉ちゃん。ありがとう、ごめんね、運んでもらっちゃって。」


「いえいえ。」


「そういえば、魔力の底の話はどうだった?」


結局あの後『ハルシオン』と『クアリー』と無意味に『インテシオ』を使い続けたのだがほとんど、というよりは全く疲れやら精神ダメージやらが皆無だった。結論から言わせてもらうと。


「底無しっぽいかな・・・?」


異世界チートってやっぱり限界ないんだなー。


「あ、やっぱり?」


予想がついていたらしい。理由を聞くと、教会にいた時の自由時間に魔法についての本を読み漁っていて、それぞれの魔法に必要とされる魔力量などを調べたことがあって、私の使ったり、質問された魔法のほとんどが中から超、悪い時にはさっきみたいな禁忌級魔法で、下手をすれば魔法使い一人の命を使って、やっと発動できる魔力量が必要となるものばかりだったらしい。


そんな魔法が放てる私の魔力量に底があるわけないだろうと考えていたからだそうだ。


 ・・・本当に使う魔法かんがえなきゃなー。この世界の魔法使いが簡単に使える魔法は私の唱えた魔法の中で『アウラ』と『インテシオ』ぐらいなものらしいし、『クアリー』に至っては魔力がもったいないっていう理由でよほどのことでなければ使われなくなった魔法だそうで。


 他の『コーサスルクス』やら『フレイムブラスト』などは複数人が協力して発動する魔法、『ハルシオン』のような飛行魔法は魔力が冗談じゃないほどに削られていくので王宮魔法使いでもなければ使えないそうだ。そりゃイーヴァさんも怪しむわな。それらを聞いて一言。


「私ってもはや勇者じゃなくて魔王になるべきなんじゃないの?」


そう伝えたら、想像もしたくないからやめて、とリンから全否定を喰らってしまった。まあ、なる気もないし、別に世界なんてもらってもめんどいだけだろーしね。かといって世界を救うってのもかなりめんどいと思うけど・・・スルーしよう。


 「とりあえず夕食にしようか。何が食べたい?って言ってもメインは何にしようとワイバーンの肉だけど。」


「いや、確かメイン以前に食材ってそれしか無かった様な・・・」


正解。私は元の世界の時から栄養補助食品やら炭水化物のみ(うどんのみとか塩むすびのみ)でも構わなかったから気にしないんだよね。メインだけでも。でもリンは許せなかったらしく、


「野菜もバランスよく取らないと栄養偏るよ。」


ごもっともです。つか君は私の母親か。どっちかというと私にとっては、ばあちゃんの立場だったが。

リンが言うなら仕方がない。野草でも取りに行こう、と思ったがよく考えてみると私は全く食べられる食材と食べられない食材が分からない。


「リン?私さ・・・」


そこまで言ったところで溜息を吐かれた。妹に何回溜息吐かれているんだろう、私。


「そうじゃないかとは・・・。大丈夫だよ、ちゃんと覚えてるから。」


そう言ってニコッと微笑むリン。博学で嬉しいんですが、どこまで博学なんですか君は・・・そのうち毒薬とか作れて、君単騎でそこら辺の魔物と渡り合えるようになるんじゃないの?


 そんなことを考えながら、出したテントや調理道具を再度ギルドカード内に収納して付け合わせ探しに出発する。苦くない野菜がいいなー、と思ってしばらく歩いていたら傍の草むらがガサガサと音を立てた。


「さーて、最初の命知らずは誰だ?」


「本当に書いて字のごとくの命知らずだよね、お姉ちゃんの場合は・・・」


若干酷い事言われてる気がする、その通りだから言い返せないけど。


 出てきたのは約二、三メートルあるクマだった。全体が黒い毛で覆われていて、胸のところに白い毛で星マークがあった。


「・・・ツキノワグマならぬホシノワグマ?」


「スターベアっていうんだよ。それにしてもまたお肉か・・・栄養のバランス、本当にどうしよっかな。」


あ、食えるんだこのクマ。でもなー大味っぽいんだよね。ワイバーン食おうとして言うのもなんだけど。取りあえず討伐の方向でいきます。


 『アウラ』でやるとグロ映像になりそうだし、使い勝手のそこそこいいのを使いましょう。腕を上げて狙いをクマの星に定める。


「『チェインランス』」


手のひらから光る槍が発射され、丁度星の中心に突き刺さった。ダーツの真ん中にあるブルって言う場所って何点だったっけ。百点だった気がするんだけど。


 そんなどうでもいいことを考えながらクマに近づき死亡を確認。さて、こいつは他の森の仲間たちにあげるとしよう。そして次に私の食べる時までに肥えてもらいますよ。ふふふ・・・


「なんか笑顔が黒いよお姉ちゃん?」


おっと、魔女の笑みになっていた。


「それじゃ、真面目に野菜探そっか。いや、野草というべきかな。」


「うん。」


 それからしばらくキャンプ地周辺を歩き回り、野菜を探した。といっても私は全くの役立たず、リンがほとんど見つけてくれて、帰るころにはギルドカードの食材欄からワイバーンの肉を探す方が難しい状態になっていた。ホント感謝感謝です。


 途中で何体か魔物が出てきたけど、『チェインランス』によって寝て頂きました。しかし後半に出会ったイノシシの牙にべっとりと血がついていたのはかなりのホラー映像だった。どうやら放置してきた魔物の肉を食ったらしい。リンが怖がったのでそれ以降に出会った魔物は全て『ファイアーケージ』の中でまるコゲになって頂きました。天まで魂、届くといーねー。魔物に魂があるのか知らんけど。


 なんだかんだで二人とも無傷でキャンプ地に戻って来て料理開始。


「そう言えばメニュー何にする?」


ふと思ってリンに聞く。すると


「確か今ある食材がワイバーンの肉に野菜が数種類で、基本的な根菜が多かったし・・・香草もあったからスープにする?」


「オッケー。じゃあ使う食材教えて、出すから。」


リンに言われるままにギルドカードから食材を出していく。そして続いて鍋やらナイフやらを出していった。ナイフを出した時点で、よかった、ワイバーンの解体にナイフ使わなくて、とリンと二人して思った。


 数十分後・・・


「完成!」


「おいしそー。さっすがリン。」


私の目の前には鍋の中で湯気を立てている灰汁ひとつないきれいなスープが出来上がっていた。私はこっそり、リンが机の上に置いたお玉を手に取ると味見した。


「お姉ちゃん、スープ皿ってある・・・って、あ!」


「うん、すっごく美味しいよ。じゃ、盛ろうか。」


そう言いながらカードの中から深めの皿を出す。駆け出しの冒険者は料理になれていない人が多いので手に入れた食材を煮込むらしく、スープに丁度いい深皿があった。


「もー、お姉ちゃんったら。」


呆れながらもよそってくれた。肉、野菜両方が大盛の状態で。そういえば今気が付いたけど昼飯抜かしてたからこの量でもいけそうだな。朝は本当に入らないけどその分、昼と夜は一般的な女子より食べるんだよね、私って。それでよく怒られたっけ。


 リンが自分の分まで盛ったところで二人して手を合わせる。


「いただきます。」


「世界の恵みに感謝して。」


それぞれ自分の世界での感謝の言葉を言って食べ始める。ワイバーンの肉はまるで鳥のささみと胸肉の間みたいな食感と味だった。


「はい、あーん。」


そう言ってリンの口元にスープを運ぶ。リンは一瞬ためらう素振りを見せたが、口を開けてあーんさせてくれた。私は、リンがもぐもぐと咀嚼しているのを見ながら、


「ああ、いいわぁ、これ。」


と呟きながら静かに恍惚としていた。


 そんなこんなで二人とも夕食を食べ終わった。因みに食事中にリンの後ろの方にスターベアの影が見えたのでリンに気づかれない音量で『グラビディ』を唱え、木々にかからない様にスターベアのみを、圧殺。誰であろうと食事中を邪魔する者には容赦はしません。このセリフをリンやイーヴァさんが聞いたら、


「え、いつものことだよね(でしょう)?」


って言われるんだろーけどねー。


 とりあえず食べ終わった時に問題に気が付いた。


「どこで食器洗おうか?」


というリンの呟きで発覚。うん、どーしよーねー。私の水魔法のほとんどが攻撃魔法なんだよね・・・川探すのめんどいしねー。どうしよっかと思った時に名案が思い付いた。


「リン、洗い物そこに置いといて。」


と言ってリンを遠ざけて呪文を唱える。唱える魔法は二つ。


「『アイスジャベリン』、かーらーのー。『フャイアーケージ』」


氷の槍が炎の檻の中で溶けていきます。それをすること三、四回。洗い物に必要な量の水を生み出せました。いやー、やっぱ応用力って大事だね。なんか横で


「驚いちゃダメだ、驚いちゃダメだ、驚いちゃダメだ。」


って某人型汎用兵器乗りの主人公みたいに呟いている声が聞こえなくもないけど気のせいだよねー。


 生み出した水を使っての洗い物が終わり、明日も使うかなーと思って切り株の上に料理道具を放置した。魔物が入ってこない様に結界魔法を使い、外界と遮断する。余程の魔法使いでなければ破れないだろう。


よってすることもなくなったのでしばしの休憩。場所が場所、時間が時間なのでなんとなく静かになる。そんな中で口を開いたのはリンだった。あまり突っ込んでほしくない話題だったけど。


「お姉ちゃん。」


「ん?何?」


「改めて聞くのもなんだけど。お姉ちゃんって、本当に何者なの?」


・・・・・・


「ん?なんて言った?ごめん、聞こえなかったからもう一回言って?」


もちろん聞こえていた。リンも分かっているだろう。私は騙し合いの嘘なら得意だが、こういう嘘は苦手だ。


「いや、何でもない。それより明日も早いんだよね?もう寝ようよ。」


リン、やっぱり君は優しいね。追及してこない。追及されたら多分、全部話してしまう。


「うん。」


頷いてギルドカードから寝袋を二つ出してそれぞれにもぐりこんで寝た。


「おやすみー。」


「おやすみなさい。」


目を閉じて寝たふりをした。十数分後、寝息が聞こえてきたので目を開け、リンの寝顔を見る。その安らかな顔を見ながら思う。


まあ、いつかはされる質問だと思っていたけど、かなり早かったかな。でも、まだリンには話すわけにいかない。リンにはリンらしくいてもらいたいから。


きっと私が異世界から来たっていう本当の答えを聞いてしまったら、私の一つ一つの動作を大事にして、リンは自分の事を後回しにしてしまう。そんなリンは見たくはない。今はまだ、普通の仲の良い姉妹でいたいんだ。


「ごめんね、リン。まだ答えられないんだ。いつかリンが受け止められるようになったと思ったら話すから。待ってて。」


 そう言って軽くリンの頬にキスをした。・・・自分からしといてなんだけど結構恥ずかしくなるもんだね、これ。寝袋にくるまり赤くなった顔を元の色に戻してから私も眠りにおちた。


 まさかのシリアス回でした。あまりにもマナが好き勝手やってるので、偶にはこういうシリアス回も必要かな、と思って入れました。リンがマナの全てを知るのはいつの日か・・・まあ、近くはないです。とても遠いです。

 というわけで次話もよろしくお願いします。

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