クラブ会議
放課後。
会議をするから、と呼び出された創作愛好会の面々がそれぞれの場所で鬼頭が何かの準備する様子を見ている。
ソファーには鬼頭と金太、菊門と好男のいつものペアが座り、ひかるは自分の席で会議が始まるのを待つ。
鬼頭はカバンからフリップを何枚も取り出し、順番を入れ替えては確認する。
これから何をするつもりなのか?
誰ひとり答えに辿り着く事が出来ず、ただ鬼頭の準備が終わるのを待つしかなかった。
「――みんな、待たせたな。では、これからクラブ会議を始める」
意気揚々とフリップを出し会議を始める。
フリップには“ゴールデンウイークにゴールデンな合宿をしよう!”と書かれていた。
続けて次のフリップを出すとそこには“みんなで活動し、それぞれ意見交換して各々レベルアップをはかる”とあった。その次は“朝9時から夕方5時まで。お昼食事付き。おやつは食べ放題、お茶飲み放題”と書かれている。
つまり、飲食タダにするからゴールデンウイーク中も活動しよう、という事だった。
気合いの割には大したイベントでは無い。
「まだ学園生活も始まったばかりだろ? 連休に合宿をする事でお互いを知り、絆を深められたらいいなって思ったんだよ。どうだろう? 面白くなると思わないか?」
興奮気味に力説する鬼頭。身振り手振り合宿の大切さを伝えようとフリップを掲げる。
「せっかく同じ部に入ったんだ。一緒に盛り上がらないか?」
顔を見合わせる菊門と好男。うん、と頷く金太。そして、少し引き気味のひかる。
それぞれ無言で考える。
学園生活初めての大型連休。みんな鬼頭の真剣な態度に真面目に応えようと考える。
「――拙者は、もちろん参加するでござるよ。別に、毎日じゃなくても良いでござるよね? だったら何の問題も無いでござるよ」
金太は鬼頭の企画に乗り気だった。みんなで青春したい、という鬼頭の思いは理解できる。金太も同じだから。
毎日じゃなくて良いという確認を取る事で参加しやすい状況を作りフォローする。
「ジムの日は無理だけど、それ以外の日は大丈夫だよ。せっかくのイベントだし、是非参加したいね。香もいいだろ? 一緒に参加しよう」
爽やかな笑顔で鬼頭に手を差し伸べる好男。熱い視線を投げかけ、鬼頭の手を優しく包み込むと力強く握手する。
あまりの熱っぽい視線に鬼頭の背筋に寒いモノが走るが、好男の心意気に笑顔で応えた。
「もちろん参加するよ。ボクは毎日出るから、このクラブをより良くしようね」
菊門は好男の言葉に頷くと鬼頭に微笑んだ。
「鬼頭くんはボクの初めてのお友達だし、好男さんも参加するんだから。出ないなんて考えられないよ」
「……あ、ありがとうな、菊ちゃん」
嬉しい言葉に照れる鬼頭。
企画を考えた甲斐があった、と心の中でガッツポーズする。
「――私も参加するわ。毎日じゃなくて構わないんでしょ? 環境変えた方が色々刺激があって創作に良さそうだし、タダでご飯が食べられるならお得よね」
しばらく考え込んでいたひかるも飲食無料に釣られ参加を決める。
「現金だな。これだから女は……」
「好男さん、ちょっと厳しいよ」
飲食無料に釣られたひかるに辛辣な一言を漏らす好男と彼をなだめる菊門。
女嫌いの好男の容赦ない言葉にひかるはバツの悪い表情になる。
「……うっ、ごめん……」
ひかるは気まずそうな表情で謝る。
「気にすんな。俺ん家、金持ちだから。みんな、ありがとうな。ちょっと感動したよ、俺」
想像以上の成果に鬼頭は部員同士の絆を感じ、胸に熱いモノがこみ上げてくる。
まさに青春。これが友情。思いつきで勢いで企画した今回の合宿だったが、思い切って発表して良かったとしみじみ思った。
「――鬼頭くん、ひとつ聞くけど、泊まらないなら合宿じゃないよね?」
ひかるは気になっていた事を鬼頭に言う。
「合宿って言うから、ちょっと気になってたんだけど、朝から夕方までだったら違うよね」
熱い友情で雰囲気の良いところに現実的なツッコミ。みんな気づいていたのに敢えて言わなかった疑問を遠慮なくぶつける。
「――これだから、女ってヤツは好きになれないんだ。空気読めよ、今のこの空気を」
ひかるのツッコミに好男は不快感を露わにする。
「ううっ……」
険のある好男の言葉に肩を落とすひかる。どうやら二人の相性はかなり悪い様だ。
さすがにこのツッコミとその返しの鋭さに周りは何も言えず重い空気が流れる。
「――ま、まぁまぁ。とにかくゴールデンウイークはみんなで楽しくやろうぜ。せっかくの合宿……いや、イベントなんだし。よろしく頼むぜ」
空気を変えようと鬼頭は強引にまとめる。
(ひかると好男の仲をどうにかしないといかんな)
この二人の相性の悪さはちょっとやそっとでは修正できそうも無い。好男の女嫌いは少し度が過ぎている。
(これはちょっと先が思いやられそうだなぁ……)
鬼頭は苦笑いしつつもイベントで何とかしようと問題を先送りする。
「――じゃあ、クラブ会議を終了する。後は各自、好きに活動してくれ。俺はイベントの準備があるから先に帰るよ。また明日な」
クラブ会議の終了を宣言し、フリップをカバンにしまうと鬼頭は軽い足取りで部室から出て行った。菊門と好男もそれに続き部室を出る。
残された金太とひかるは、顔を見合わせると苦笑いする。
「……ひかる殿、空気は読んだ方が良いでござるよ。好男殿は女嫌いでありますから、あまり刺激を与えない様に注意するでござる」
金太は出来るだけ言葉を選び、ひかるにそれとなく注意を促す。
ひかるは別に悪くないが、好男が一方的にひかるを毛嫌いしているので、金太もフォローに困っていた。
「……うん。今度から気をつけるわ。好男くんが真性の薔薇族だって分かったから、ちょっと考えて行動するわ」
ひかるは金太の気遣いに感謝しつつも、好男のガチさに好奇心が増していくのを感じる。
ネタになる。多少嫌われても貴重な資料になる好男の反応にひかるは興味津々だった。
ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる眼鏡少女に、反省する気がまったく見受けられない。
(ひかる殿も、かなり歪んでるでござるね)
この濃すぎるキャラクター同士が仲良くなる姿が想像できない。金太は呆れ顔で溜め息をつくと、これからの二人のやり取りが容易に想像できて、フォローに回る身になってほしいと思わずにはいられなかった。




