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異世界魔眼魔術師の軌跡 旧名:6seconds  作者: 結城紅
第一章 現実世界での事象
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08.魔術、発動

前回からそのまま続きます。

 何故行方不明者の痕跡が途切れているのか。一体どうやってこの狭い田舎町に数人もの人間を隠せるのか。何故目撃情報すらないのか。

 その答えは、全て魔術で説明できる。



「第八の使徒に告ぐ――」


 俺は魔術の起動句を諳んじる。

 魔術とは、女神が生み出した、五代元素を司る五つの聖霊乃至は精霊を崇めその加護を受けて行使する術だ。五大元素とは言ったものの、仏教や道教と違い、火、土、水、風、雷を表す。光と雷は別に区分される。

 そして、その聖霊の配下に存在する三つの精霊が闇、光、無と言った具合だ。俺が唱えているのは八番目の属性[無]の魔術。 



「我、汝の力の片鱗をここに顕現す――」


 聖霊と精霊の違いは、規模の大きさ、そして格だ。

 聖霊は女神より創造され、人より高尚とされるが、精霊はその限りではない。そもそも、精霊とは人が知らないうちに垂れ流す微量な魔力が空気中の物質と混ざり合い魔素となり、それが自我をもったもの。ほぼ全ての人類が魔力を有するため、その数は枚挙に遑がないほど存在し、いたるところにいる。しかし、聖霊から直接加護を受けた魔術と対すると、その効力は圧倒的に弱い。両方共に魔力を消費し、発動するが、聖霊から加護を受けた魔術が、聖霊の加護7、対象者の魔力の大きさ3で威力が決定するのに対し、精霊は加護1、魔力の大きさ9といったところだ。殆ど魔術師頼みというわけである。それに、どちらかというと、人間側が精霊を使用している印象が濃い。

 故に、精霊を使った魔術は攻撃魔術でないものが殆どだ。



<探知>(レペルタン)


 広域探知の魔術を発動する。

 俺の頭中に津名市のマップが浮かび、無数の精霊が街中に散っていくのが手に取るように分かった。その精霊たちに下した指示は、魔力跡を探し出し、どこで途絶えているか知らせること。

 魔力跡というのは、魔術を行使した際に暫く残る痕跡のこと。この[暫く]の期間が1週間ほどであるため、事件に絡む魔術の殆どを探知することができるはずだ。

 ――案の定、すぐに見つかった。

 反応は、意外と近い場所からきている。



<終了>(フィニス)


 そう一言呟き、俺はワイシャツの上にコートを羽織った。

 扉を開け、階下に降りる。

 ふと、居間の方を見ると姉さんが食卓に突っ伏しているのが見えた。その手には空になった酒瓶が握られている。

 ……明日は確実に二日酔いだな。

 踵を返して三和土に出る。

 靴を履き、家の扉を開けた。もちろん、鍵をかけて閉じるのを忘れない。

 視界が完全に切り替わる。

 腕時計の示す時刻は9時。街は夜の顔を覗かせていた。

 遠くに見えるのは24時間営業のコンビニ、ネオンカラーの派手なゲームセンター。この時間帯でも街は活気づいている。

 夜天に浮かぶ三日月、昼間とは打って変わった静けさ。情緒溢れる花梨ならなんというだろうか……。

 そんなことを考えてしまう。



<探知>(レペルタン)


 再度、瞑目し魔術を起動する。

 涼風が髪を後方に攫っていく。サラサラと、髪が首筋をくすぐる心地よい感覚が訪れる。

 頭中のマップに点滅する光はやはり変わらない。

 俺は、ゆっくりと目を開いた。



<終了>(フィニス)


 信じたくはなかった。だが、己の意志に反して自然と足が前に出る。

 一歩、北に。

 反応のする場所は、俺と花梨の縁のある場所……。 

 昔、俺がよく花梨と遊んでいた……。



 近所の公園からだった。

次回、優と花梨の思い出と、チート対チートの勝負です。

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