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夢の中の君と僕

作者:
掲載日:2026/09/15

夢の中には毎回女の子が出てくる。そんな夢だ。女の子はいつも僕と話してくれる。昔から僕は自信が無くて、いつも泣いていた。そんな時、夢の中で君と出会って、僕は少し、自信を持てるようになった。いつも黙って、僕の言うことを待って、聞いてくれた彼女。優しい目をしている彼女。なのに、僕は目を覚ますと、彼女の顔、名前…何も思い出せない。いつも、思い出せないと悔しんでいた。会話も思い出せない。だけど「話した」ということだけは、思い出せている。あの目が僕は好きだった。あの、優しい目が僕の自信につながっていた…はずなのに何で、思い出せないのだろう。

彼女はいったい誰なのだろう?そう考えて、今日も朝を迎えるのだった。


ある夢を見ていた。

夢の中には毎回男の子が出てくる。

男の子は自信がないようで、毎回話を聞いてあげていた。そして、私の話も聞いてもらった。自分の辛いことを話したのは彼が初めてだった。

いつも、自分の中に溜めていた、不満を出すと少しスッキリした。彼も私の話を自分のように聞いてくれて、いつも慰めてくれた。彼の手が彼の目が私は好きだった。だけど、何故か彼の顔を思い出すことが毎回できなかった。

彼と「話した」ことは覚えているのに、内容も顔も名前さえ思い出すことができない。

彼はいったい誰なのだろう。

だけど、それでも私は

それでも、僕は

『彼に会ってみたい』

『彼女に会ってみたい』

その気持ちだけは変わる事はなかった

「今日も思い出せないな」

そんなことを考えながら僕の嫌いな朝を迎えた。僕は朝が嫌いだ。何故なら夢の中に一生いたいからだ。夢の中の彼女に会うのが僕の唯一の楽しみなのに、何故朝は毎日来るのだろう。朝なんか来なきゃいいのに…

今日も外はバスやらトラックやら車やらの音が聞こえてくる。毎日みなさんお疲れ様です。今日もよろしくお願いします。と、心の中で唱えたことで僕も朝の準備をしなきゃいけない。

朝は起きたらまず顔を洗う。これは昔からやっている日課だ。最初の頃はやるのが嫌で拒んでいたが、母に無理やりさせられたおかげで、なんとか毎日続けている。

今日もニュースでは政治やら天気予報やら、なんか美味しそうなスイーツについてやっていた。

毎日毎日「今の流行りは…」なんて言っているので、何が流行りなのか今年で16歳になる僕には全くと言っていいほどわからなかった。

「毎日テレビ局で働いている人は大変だなあ」

そんなことを呟きながら、僕は朝ごはんの支度をする。今日は、卵焼きと昨日の余った肉じゃがを食べることにした。ご飯とインスタント味噌汁を作れば、まぁいい感じの朝ごはんなのではないだろうか。

食べ物に感謝して

「いただきます……我ながらうまいな」

やはり、肉じゃがはしみしみがうまいんだよなぁ。

そんなことを考えていると、ふと昔を思い出した。昔はこうやってお母さんがご飯を作ってくれたな。

母は小さい頃、交通事故に遭って…なんて展開はなく、だだ僕が上京して家を出ただけである。

改めて、親の偉大さというのを知ることができた。こっちに来て最初の時は掃除やら料理やら、色々することがたくさんあって、バタバタしていた。

今は、だいぶなれてきて、自分で夜ご飯を作れるようにはなった。

うまいかどうかで言うと、なかなかいい感じのを作れるようにはなった。

まだまだ、親の料理には負けるなと自分では思っているが、僕的には満足である。

さて、朝食も食べたし顔も洗い、着替えたのであとは行くだけなのだが、時間はまだ7時であった。いつも、20分ぐらいに出ているので、まだある。と、思っていたら

「にゃー」

お?早いな。あいつがこんな時間に起きるとは、こいつの名前はふーちゃん僕の飼っている猫である。

この頃食い過ぎたのか、少し太ってきてる気がするが、当人は全く気にしてないみたいだ。お腹を触ろうとすると、めっちゃ怒るので注意が必要だ。

猫を撫でていたら、5分になっていて、今日は早く行こうかなと思い、出ることにした。

「もう行く時間だから行ってくるな」

「にゃー」

ドアを開けて、空を見ていた。

今日の天気は快晴で、青い空と合わさるようにして、高層ビルなどがたくさん見えていた。たくさんと言うにはふさわしくないぐらい、東京にはいろいろなビルがある。そう思いながら僕はまた、憂鬱な今日の第一歩を踏み出した。今日も人の数は星ほどあった。会社に行く人、慌ててるどこかに行く人、恋人と歩いている人、イヤホンをしながら歩いている人。本当にこの街にはたくさんの人がいる。そう思いながら僕は人の波をかき分けていく。地下鉄に降りて、また歩く、やっとの思いで地下鉄に乗り、あとは待つだけである。膝の上にカバンを置いて、今日はどんな一日なのかと考えていたら、ふと、地下鉄に乗ってくる人の中に彼女がいた気が…した。だけど彼女は人の波に飲まれて、どこかへ消えてしまった。気のせい?気のせいか…と自分に言い聞かせながらも、どこか納得のしてない自分がいた。何となくだった、何となく見ていた、人の波に彼女らしき目をしている人がいた。ほんの、ほんの一瞬だっだが、それでも、彼女だと思った…いや、いやいや。よく考えたら…夢の中に出てくる女の子が、この世界にいるわけがないじゃないか…そもそも彼女の顔を僕は思い出せない。だから、きっと彼女に会いたいという気持ちのせいで見間違えたのだろう。そう言い聞かせながら、僕は頭を縦に振り、窓を見ていた。

彼女に会ったわけではないと分かりながらも、どこか僕の心は喜んでいた。

そんなことが会って、やっと僕は自分の学校に着くことができた。

学校につくと、学生たちがワイワイ楽しんでいた。僕はそんな人たちの間を通って行こうとするのだが…なかなか通れない。今日は早めに来た方なので少ないが、それでも田舎者にしたら多い。みなさんもこういう経験はないだろうか、話したことのない人たちがたむろっていて、なかなか進めないということ…僕は現在進行形で遭っている…これだから、コミュ症というのは困るのである…悲しいことだ。と、考えていても埒が明かないので回り道をすることにした。普段は通らない道から行こうとすると、やはり迷うものである…この学校無駄に広いんだよな…ここどこだよ。そこは普段使われない物置教室の前だった。どうやったらここにくるんだろうか…我ながら方向音痴すぎる。周りを見ると階段があったので急いで3階を目指す。何故3階なのかというと、3階が僕の教室だからだ。ほんと3階まで登るのきついんだが…

「なんで、3階が一年なんだよ…」

そう愚痴を言いながら、僕は階段を登っていく。登っているうちに、ある歌が聞こえてきた。最初は自分の気のせいだと思ったが、登っていくうちに大きくなっていくのを感じ、誰かが歌っていることに気づいた…

3階についたが、まだ歌っている人がどこにいるかわからない…僕は時間を忘れて、探していた。時間は朝の集会に近づいていると言うにも関わらず僕は探していた。そして、それは屋上から聞こえていることに気づいた…だが屋上は立ち入り禁止なはず…そう理性が止めようとしても僕は足を止める事はなく、非常口の扉を開けて屋上に上がった。

太陽が眩しくて目を瞑りかけたが何とか屋上にたどり着いた。

そこにいた彼女を見た時、どことなく夢に見る彼女に似ている…そんな気がしていた。というより、声を聞いた時からずっとそんな感じはしていた。だが確証がなかったので、探していた。彼女は僕に気づかずにまるでステージに立っているかのように歌っていた。

彼女は美しいと表現するのは無礼なんじゃないかって思くらいには素晴らしい歌声だった。歌に引きずりこまれるような、何とも言えない…その歌声はどこかで聞いたことがあった。だが思い出すことができない…どこで聞いたのだろう…

そして、時が止まったような時間は唐突に終わった。彼女は歌いきりとてもスッキリとした顔をしていた。僕は咄嗟に拍手を彼女に送り、彼女はその時に僕に気づいた。

「…聞いてたの?」

あれ、聞いちゃまずかったのか…ってだんだん近づいてきてない?

彼女がだんだん近づいてきて、僕は後ずさる。そしたら壁にまで追いやられて逆壁ドン状態になっていた。

は?何この状況?

「私の歌ってるところ見てたの?」

「…ごめん、その歌が聞こえてきて気になって…」

「……はぁ、まぁ今日は確かに歌いすぎちゃったし、私の責任かも。全く、人が来るなんて思ってなかったのに…」

「ご、ごめん」

「いいよ、もうしょうがないから許してあげる」

「だけど、一つだけ約束して、私がここにいる事は誰にも言わないで」

「わかった」

「物分かりが良くて助かるわ」

「勝手に見たのも聞いたのも僕だからな、悪いのはこっちなので」

「その通りね」

キーンコーンカーンコーン

あ、気づいた時にはもう遅かった。

「朝の集会遅れた…」

「私も遅れたわね」

『……』

やってしまった。はぁ、どうしよう

「2人して不良になっちゃったね」

「…その通りだな」

「今から戻ってもなんかみんなから言われて嫌だし…

どーしてくれるの?」

「いや、戻ったら?」

「えぇ?やだーー」

というか、言われるのは確定なのかよ

「じゃあどうするんだ?保健室でも行くのか?」

「…今日は学校休もうかな」

「え?いや、朝の集会遅れただけで休むの?」

「うん、なんかいく気なくなったし」

すげぇ自由人だなこの人。

「今からでも間に合うし行こうよ」

「えー?いやよ。そもそも今日は行くつもりなかったからここで歌ってたのに、あなたがきたせいで台無しよ」

そんなこと言われても仕方ないだろ。そもそもこんなとこで歌うなよ

ていうか、学校に来てるだろ。行く気ないって歌い終わったらどうするつもりだったのだろうか…

えぇ、僕のせいなのだろうか…まぁ、ここにきた僕も僕で悪い…か?

「悪かったよ、それは」

「だから、あなたこの後空いてるでしよ?」

「え?いや、普通に教室に戻ろうと…」

「空いてるよね??」

「…戻ろうかと」

「よし、空いてるわね」

「空いてるなんて一言も言ってない」

「私に付き合ってね」

「僕の意見は聞いてもらえないのだろうか」

「聞かないわ」

なんて人だ。これだから陽キャは。

「はぁ、まぁ確かにこのまま教室戻るのは気まずいな…」

「じゃ、いきましょうか」

そう言って僕の腕を掴んで階段を降りようとしている。

「どこにいくんだよ?」

「それは、行ってからのお楽しみよ」

「えぇ?」

「さぁ、行くわよー」

「ちょっとー」

はぁ、今日はどうやらいつも通りの一日にはならないみたいだ…

学校を出て彼女に「制服じゃ目立つから着替えてきて」と言われたので一旦解散し、家に帰った…いや、何やってんねん。はぁ、ズル休みするなんて…まぁ、教室に行っても話す友達なんていないし…いや、ダメだろ…でもしょうがないじゃん?誘われたらほんと弱いだもん、僕。

そんなことを考えながら家のドアを開けると、不思議そうにしながらこっちを見てくる、猫の姿があった。

「にゃー?」

「あぁ、僕も何でここにいるのかわかんないよ…ほんと」

まあ、休んだんだ。頑張って楽しむか

…服って何着たらいいんだ?と、こういう経験がない、今年16歳の僕には全く、わからなかった。

そして、まぁちょっとオシャレそうな服をきて、外に出た。流石にパーカーとかはまずいかなと思って、それでもあまり私服と変わらないコーデだが、パーカーよりはいいだろう。自分に言い聞かせながら待ち合わせの場所に向かった。待ち合わせ場所は僕の学校に行く道とは真逆の場所にある、とあるカフェである。カフェに入ると、なんかよくわからないが、雰囲気のあるカフェだった。きたことない僕にしたら、こんなとこもあるんだなぁ、と感心していたら、彼女がこっちこっちと手を振っているので、そこに行く。

「やぁ、待ってたよ」

「すまない、少し遅れた。

「女の子を待たせるなんて、悪い男だね」

「悪かったって」

「なら、カフェは奢ってもらおうかな、それで、許してやろう」

「何でだよ…しょうがないからいいけど」

「ありがとー♪」

「へいへい」

他愛もない話をしていたところで、僕はコーヒーを頼み、彼女はめっちゃでかいパフェを頼んでいた。

気遣いとかは全くしないらしい、まぁ屋上で思いっきり歌っている彼女なので、そういう性格なのだろう。はぁ、僕の財布が…

「おやおや、何やら悲しそうな顔をしているね、誰にやられたんだ。話を聞いてやろうてはないか」

「お前のせいだ」

「なるほど、お前さんという方のせいなのだな、かわいそうに」

「違うわ、僕の目の前にいる君の事だ」

「あ、そういえば自己紹介してなかったね。私の名前は美百合、神野美百合かんの みゆりだ。一年生だよ。よろしくね」

「僕の名前は、守、佐々木守ささき まもるだ。俺も一年生だ。こちらこそよろしく」

今更ながら自分たちの名前を知らなかったので、自己紹介をした。本当に今更だけど。

「守君かー!いい名前だね」

「それはどうも」

「なんか、守ってくれそうだね。漢字的に」

「あいにくと、守るような人僕にはいなくてね」

「あら、そうなんだ。確かに見る感じザ、隠キャだもんね」

「何が言いたいんだよ?」

「いや、彼女とかいなさそうだなって」

「…1人はいたぞ」

「えぇ?!いたの?!」

「あぁ、だが相手が冷めて、僕が振ったがな…それ以降はいないな」

「ふーん…ん?それ逆じゃない?普通?」

「僕もそう思う。だけどあっちから振ってくれなかったんだ。仕方ないだろ」

「なるほどね、冷められた理由は?」

「……言いたくない」

ニヤリ

「言ってよー笑聞きたい!」

「嫌だ。思い出したくないから断る」

「えぇー言ったら奢んなくていいよ?」

こいつ…

「…お前、うまいな」

「でしょー?私もそう思う」

「はぁ…愛が重くてメンヘラなんだとよ」

目をパチクリさせた後彼女は笑い出した。ひどいやつだ。僕は結構悲しんだというのに

「そっかそっかー笑愛が、重くて、メンヘラ…わはははは!!」

「そんな笑うなんて、お前は最低なやつなんだなって、認識を改めることにした」

「ごめんね笑許してよー、奢んなくていいしさー!許して〜」

「はぁ、ほんとそっちは、ザ、陽キャって感じだな」

意外そうに彼女は言った

「そう?」

「あぁ、僕から見れば陽キャだな」

「そこまでじゃないと思うけどなー」

いや、絶対に隠キャではないだろ、こんな初対面のやつとここまで、話すんだからな。どちらかといえば陽キャだろう。

「じゃあ、隠キャと陽キャが一緒にカフェでお茶してるのね。そんなラブコメみたいな展開が本当にあるのね」

「本当にな、まさか僕がカフェにくるなんてな、珍しいこともあるもんだ」

「よかったね、カフェに来れて」

「まぁな、学校はズル休みすることになったが」

「それは、あなたのせいだわ。あなたが屋上に来なければ、こうはならなかった。私のせいではないわ」

いや、お前のせいだろ

「いや、僕まで巻き込む必要はないだろ」

「だって、あなたがどうしても行きたいっていうから」

「言ってないね。幻聴できこえたんじゃないか?」

「ふふ、まぁいいじゃない、コーヒー飲めたし、カフェにも来れたし」

「僕の黒歴史を言ったけどな」

「それは、まじでありがとう笑面白かったわ」

「へいへい、まぁカフェ来る機会もないだろうし、よかったと受け取っておくよ」

「そうしてもらえると助かるわ、カフェに来る友達も彼女もいないなんて可哀想ね笑笑」

一瞬ぶん殴ってやろうかと思ったが美味しそうなパフェを食べてるのでなんとも言えない気持ちになってやめた。

「…それで、この後どうするんだ?」

「んー、このあとは…どうしよう?」

「考えてないのかよ、さっき行ってからのお楽しみ、みたいに言ってたやん」

「だから、言ったでしょ?楽しみにって♪」

「はぁ、…それじゃどこに行くか考えようか」

「賛成!ねーどこ行くー?」

「僕はどこでも…強いていうなら博物館かな」

「博物館ね、ザ、隠キャね」

「悪かったな、隠キャで…」

「でも、いいと思うわ、博物館私も好きだし」

意外だな、博物館なんて陽キャは行かないだろう。

「博物館だけじゃ足りないだろ?他にどこ行く?」

「んーー」

悩みながら、彼女はスマホを取り出し、検索しているようだ。僕はコーヒーでも飲もうかなと思う。昔は苦くて嫌だったが、これが大人の味かと思って飲んでいたら、美味しいと感じてきている。全く味覚とは恐ろしいものだ。

そんなこんなで彼女が

「ねーね、ここなんでどう?」

それは、最近流行りの水族館であった。最近できたばっからしいが結構評判らしい。水族館か…修学旅行以来行ってないな。

「まぁ、僕はいいけど」

「なら、いきましょうか。最初水族館行って、その後博物館でいいかしら」

「あぁ、僕は問題ない」

「それでは行きましょう」

会計を済ませた後僕たちは、水族館に向かった。

全く、何でやつだ。今日初めて遭ったやつと、何やかんやで水族館に行くなんて…

「なぁ、一つ聞きたいんだが」

「なーに?」

「なんで、僕と水族館なんて行きたいと思ったんだ?そもそも初対面のやつと、遊びに行くなんてなかなかないだろ?」

「んー、まぁそうね。何でかしら?強いていうなら、懐かしさを感じたからかしら」

それは、僕も感じていた。何というか、彼女とは初対面の感じが全くといっていいほどしない…何でだ?

「まぁ、いいじゃない。この人なら行ってみようかなーって思っただけだし」

「そんなもんか」

「そんなもんよ」

本当に、思い出せないぐらいの他愛もない話をたくさんしていた。

好きな人はいないのかとか、どこに住んでいるのかとか、趣味は何だとか色々話していた。

普通の人なら初対面にそんなことを話さないんだが、彼女と同じく、僕は彼女にいろんなことを話していた。彼女とは今日初めて会った気はしなかったからだ。

そんな話をしながら地下鉄に乗り目的地に着いたのはそれから30分後だった

「やっと、着いたー」

「ちょっと、遠かったな」

「うん、だって学校から近かったら、知人がいるかもしれないでしょ?」

「いて何がわるいんだ?そもそもみんな学校に行ってるからいないと思うんだが?」

「そうだけど、知り合いのいる可能性もあるじゃない…それに、この状況をはたから見ればデートしてる風にしか見えないじゃない」

…は?デート?あ、ん?

「もしかして、気づいてなかったの?」

「…確かにそうかも…」

「でしょ?あなた嫌でしょ?私とそういう関係なのー?って噂されるの」

「…嫌だな」

「だから、ここに来たのよ。わかった?」

心からの感謝である

「ありがとうございます」

「うむ、わかればよろしい。それでは行きましょうか」

「そうだな、行こうか」

いつもなら、こんな時イヤホンをつけるのだろう。イヤホンをつけ周りの声を歌で紛らわしていたのだろう。だけど今は何故かイヤホンをつけようとは思わなかった。

「ねーねー、見てよすごくない?サメだよサメ。大きいね!」

そんな子供みたいに、はしゃぐ君を見て、ついつい笑ってしまう僕がいた。

「そうだな、でかいな」

「…子供扱いしてない?」

「してないしてない」

「してるよね?絶対」

「してるわけないだろ〜」

「もー絶対してる〜」

そんな、話をしながら僕らは水族館の中を進んでいく。やはり水族館は綺麗だ。いつもそう思う。なんで水族館はいつも楽しめるのか。

こんな話を聞いたことはあるだろうか。

何故クラゲが美しいと感じるのか、なぜ月が美しいと感じるのか。

では、クラゲに毒がなかったら、クラゲは美しいと言われたのか。月に簡単にいけて、簡単にさわれたら月は美しいと感じただろうか。

人は自分がさわれないものを美しいと感じる。そんな話だ。

水族館も同じだろう。水族館のいる魚たちは、自分じゃ鏡越しにしか触ることができない。だがら人は水族館の魚たちを特別に思い、綺麗だと思うんだと僕は思う。

「なに、考え事してるの〜?」

「ん?いや、何でもないよ」

「えー気になるなー」

「んー?いや、綺麗だなぁって思ってさ」

「…え?」

「いや、水族館ってやっぱ綺麗じゃん?だから、来てよかったなーって思ってさ」

「確かにねー、水族館綺麗だよねー」

「ズル休みしただけはあったかな」

「なるほど、そういうことね。綺麗なんていうから私のことかと思っちゃったじゃん」

…え?

「なな、なにいってるんだよ、急にさ」

「期待したのになー」

「茶化すなよ」

「茶化してないよーだ」

はぁ、いったい何なんだ…さっきから。女子ってむずいな。改めて女子の難しさに気づきました。女子経験あの人だけだからなぁ…まぁ、いないよりマシだけどさ…

「あっちいこーなんか、お土産とかあるんだって」

「おぉ、いいね。なんか買うの?」

「んー、私はいいかな。…佐々木くんはどうするの?」

佐々木って、呼びづらくないか?

「守でいいよ」

「まじで?!ありがとー」

「別に名前くらいなんて呼んだっていいよ」

「ふーん、なら守ちゃんって呼ぼうかなー」

「何だっていいさ」

「気にしないんだ」

「昔から呼ばれてるからな」

「えぇ?そうなの?」

「あぁ、小学校の時から守、守ちゃん、守るん、モル マル、なんか色々言われてたわ」

「最後らへん本当に名前なの?」

「それは僕も思う」

ちゃんと、守って言えよって何回思ったか

「なんか、大変だね」

「そうだな、昔からいじられキャラとして生きてるからな」

「わかる!いじりたいもん」

「なんでや、いじるな」

「それは、約束できないかも」

「はぁ、何で僕はいじりやすいんだろうな」

「いいじゃーん♪いじられないより、いじられた方がさー」

「そうかなー?」

「そうだよ」

そんな話ををしていると、彼女が急に止まった。どうしたんだろうか。腹でも壊したのだろうか

「どうした?」

「…私のいとこいる」

「え?」

「まじかー、ここにくるのー?」

「えぇ?!いるの?」

「うん、いる。あっちはまだ気づいてないみたいだけど」

「ならさ、あの人達と逆方向行こうよ。そしたら、会わないんじゃない?」

「そうだね、お土産は後で買おう」

そういって僕らはクラゲコーナーに向かった。

クラゲ達がたくさんいる場所で、いろんな種類がいるが、名前が長くて覚えられなかった。

「うわー、これ可愛い」

「おぉ、すごいな」

「なんか、もうちょっといい反応ないの?」

「悪かったな、こんな時どう言えばいいのかわからないもんで」

「何でよー、分かれよー」

こんな会話をしながら、僕たちはさっき行けなかった。お土産屋に行き、ちょっとしたお菓子を買って水族館を背にして、博物館に向かうことにした。

「楽しかったー!意外といいじゃん、あの水族館」

「だな、来てよかったよ」

「でしょー?私に感謝しな」

「ははーありがとうございました」

「うむ、わかればよろしい」

なんかもう、めっちゃ仲のいい友達になっているな、なんて考えていたら、まさかのハプニングに出くわす

「…美百合?」

あ、これやばいやつじゃね?

即座に僕は状況がとても良くない方向に行く気がした。めっちゃゆっくり、美百合が体を動かす。ギガガガガなんて音が聞こえてきそうだ。

「ヒ、ヒサシブリ。環奈」

「美百合…」

ああ、やべぇなこれ。クソ話していたから後ろにいるのに気づかなかった…ていうか、存在すら忘れていた。いとこがいるということに…

「美百合ちゃんじゃん、久しぶりだねー」

そう言っているのは、環奈の隣にいる。背の高い男性だった。茶髪で結構いい体をしていて僕とは真反対だった。

「こ、こんにちは。木村さん」

「はい、こんにちは」

あぁ、どうしよう。と、僕は考えていた。この展開をどうやって、やり過ごそうか…なんか環奈、さんって人めっちゃこっち見てるし…めんどくさいことになったなー

あぁ、ほんと今日は日常とはかけ離れているな…

「えーっと…」

僕は、改めて振り返っていた…何でこんなことになったのだろうかと。

「美百合からでしょ?まずは」

「まずは、その、ごめんね」

「はぁ…学校に行ってると思ったら、知らない男と遊んでるなんて…」

「ごめんなさい。それは」

「…で、あなたは誰?」

来たか

「僕の名前は佐々木守と言います。高校一年生です」

「そう、で?何であなたがこの子と一緒にいるわけ?それも平日に。学生なら学校で授業を受けている時間よね?」

もっともな意見である、そして、僕にはそっちから聞いてきたわりに、興味ないようだ。

「えーっと、色々あって美百合さんに連れまわされています」

「ちょっと、連れ回してるって言い方は良くないと思うけど?」

「あってるだろ、そもそも初対面の僕を"君"が連れてきたんだろ?」

「ぐ、まぁあってるけどさ、何というかさ…」

「なるほど、美百合から連れ出していたのね」

「そうですね…」

「まぁまぁ、環奈もそんな怒らないでよ、相手がこわがるだろう?」

現在進行形で怖いです

「信司そう言ってもね。この子、どれだけ連絡しても、大丈夫ってずっと言って、何も教えてくれないの。返信もこの頃してくれないし」

「もう、そういう年なんだよ。そんな返信だって僕たちにはしないだろ。高校生なんて、そんなものさ」

「だけどさ、こっちは心配してるってのに、あの子は変な男と一緒に歩いてるところみたら、ビックリだってするでしょ?」

変な男って言われた…

「まぁまぁ、守くん、美百合ちゃん、すまないね、邪魔をしてしまって」

「いえいえ、そんな、大丈夫です」

「あ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は木村信司きむら しんじで、こっちが桜野環奈さくらの かんなよろしくね。それと環奈はこういう人だから許してやってほしい」

「ねぇ?信司、今私のことディスったでしょ?」

「うんうん、ディスってないよ」

「絶対ディスった」

というより、この人たちは美百合さんの…

「この人が私のいとこの環奈で、そして木村さんが環奈の彼氏よ」

ボソって美百合が教えてくれた。

「なるほどね…というより何でお前そんなに縮こまってるんだ?」

「いや、だって、気まずいでしょ?こんなところ見られたなんて…」

「しょうがないだろ?そもそも初めからこんなことになるのは予想がつくでしょうに。」

「そうだけど…」

「まぁ、楽しいし次は反省して同じことを繰り返さなければいいんじゃないか?」

「楽しい?」

「あぁ、いつもと違う一日になりそうで僕は楽しいよ」

「そう、よかった」

ふってようやく力が抜けたように笑っていた。緊張が少しは解けたんじゃないだろうか

「やっぱり、連れてきてよかったでしょ?」

「楽しかったが、初対面にこんなことするのは僕はどうかと思うけどね」

「それは、ごめんねーーって言ってるやん。初対面だけど初対面じゃない感じがしてさー」

彼女もそう感じていたのか

「そーそー、君たちこれからどこか行くのかい?」

急に僕たちに振られて2人とも体をピクリと震わす

「えーっと、まぁ博物館に行こうかなーって」

「へぇー、博物館ね、いいじゃん。この近くだと、あー水族館からちょっと遠いねー」

「ま、まぁ大丈夫、それくらいなら…」

「やっぱり、近くだと友達に会うのが怖いかい?」

「…まぁ、そうですね…まさかいとこと会うとは思いませんでしたけど…」

それは、確かにそう思う。どんな確率だよ、いとこと会うなんて…それに、聞いた話によると、環奈さんはこの街にはいないらしく、今日たまたまこの水族館にデートをしにきたのだとか…今日は2人とも休みだったらひく新しくできた水族館に行ってみようという話になったらしい…だから、どんな確率だよ

「環奈、そろそろ時間だし僕らはお暇しようか」

「そうね、もうこんな時間なんて、時間が経つのってはやいね」

「確かに、大人になってからより一層早くなった気がするよ」

「それでは、じゃあね。守くん。美百合ちゃん」

「美百合じゃあね、また今度しっかり話を聞くから覚悟してね」

「う、うん…わかった」

「それと、守くん」

「はい」

「変なことしたら殺すから」

怖いな、この人。

「変なことをするつもりは全くありません」

「そう?まぁあなたがいくら言おうが信用はできないわ」

「それは、そうですね。今日会ったばかりなので」

「その通りよ。まぁ今は一応信用しとくけど、変なことは考えないことね」

「肝に銘じておきます」

「こらこら、環奈。言い過ぎだよ」

「そうだけど…」

「環奈の気持ちもわからなくはないけど、今は彼女達に任せよう」

「はぁ、そうね。わかったわ」

「それじゃ、僕らはこの辺で」

そう言って、彼らはカフェから出て行った。環奈さんは僕に出て行く時も殺意のこもった目を向けてきて、とても怖かった…なんで今日はこんな初対面の人に色々言われるのだろうか…

「ごめんね、私のせいで」

さっきから元気がないと思っていた彼女が僕に話してきた。

「そんなことはないよ、まぁ平日だからだれもいないだろうと、甘く考えた結果だからしょうがない」

「う、そうね…」

「別に君を責めたわけじゃないからそんな、落ち込むなよ」

「落ち込んでないけど、まさか環奈と会うなんて思わなかった」

「なんか…ごめんね。私のせいで面倒なことになっちゃって」

「…そんなこと気にしてたのかよ」

「そりゃ、気にするでしょ!せっかくズル休みして、ちょっと遠いところ行ったら、いとこと会って、環奈、守くんに結構キツく当たってたし…」

それは、確かに。あの人初対面で僕に結構キツかったよな。初対面だけど、まぁ一応?信用してくれたけど。何というか、美百合さんと環奈さんは同じ感じがするなぁ、初対面の人にヅカヅカ行く感じ。

「やっぱ、怒ってる?」

そう、美百合が聞いてきた。僕が考え事をしていて、黙っていたので不安に思ったのだろうか。

「いや、別に怒ってないさ。ただ、やっぱ美百合さんのいとこなんだなぁと思っただけだよ」

「それ、どういう意味?」

「…まぁ、そういうことだよ。きにしなくていいよ?」

そう笑顔で答えるが、彼女は僕のことを疑惑の目で見てくる。

「なんか、納得しないなぁー?」

「いやー、そう?気にしなくていいよ?」

「ふーん?隠すんだ?」

めっちゃ怖い目で見てくる。

「い、いや。そんな怒んないでよー」

「じゃあ、どういう意味か教えてよ?」

「そ、それはさ…あのー、ねー?何というか…」

あ、やばいな。これ答えないと、僕死んじゃうんじゃない?殺されるの?僕。

「え、えっと。初対面の感じが美百合と似てたから、やっぱいとこなんだなぁって」

「え?そう?似てる?」

「うん、まぁ。環奈さんほどキツくないけど、最初壁ドンされたしね。なんか似てるなぁと」

「あー、確かにしたかも」

「まぁ、そういう事だよ。だから怒らないで?」

「うーーーん」

よし、これで許してくれるだろう。大丈夫なはずである。別にディスってはいないし、許してくれるよな。だから怖い目をやめて欲しいんだけど…

「どうしようかなぁー?まぁ、許してもいいんだけど。じゃあ私の質問に答えてくれたら許します」

えー、何で?まぁ質問に答えるだけならいいか。

「わかったよ、で?質問って?」

「ずばり、元カノはどんな人だったんですか?」

「絶対に言いたくない」

唐突にそんなこと言われたが、これは絶対に言いたくない。

「え〜?教えてよー?」

「いーやーだ。言いたくない」

「え〜?何でさー?」

「いや、元カノの話って面白いか?」

「うん、すごく面白い。君がどんなふうにしていたのか、何で冷められたのかはさっき聞いてわかったけど、他のことは聞いてないしー?聞いたら絶対面白いでしょ。だから教えて」

「嫌だよ、言いたくない。でいうか言ったらイジるから嫌だ」

「えー?いじんないよー?」

「嘘だろ。お前の目はいじる顔してる」

「まぁまぁ、気にしない気にしない。それでは!ちょっと遠いし、歩きながら教えてよ」

「はぁ、うーん、どんな人かって難しいから、質問してよ。それに僕が答えるからさ」

「OKー、じゃあ可愛かった?」

「まぁ、あの時は可愛いと思ってたね」

「今は?」

「興味ない」

「おぉ、辛辣」

「そんなもんだ。別れてもう半年以上経ってるしな。もうすぐ一年なるんじゃないか?」

「へぇ、そんな経つんだ。じゃあその人は今彼氏さんいるの?」

「いないと思うよ。あの人特定の人としか遊ばないし。ていうか友達を大切にするタイプだったからね」

「そーなんだ?!へぇ、それで何で冷められたってわかったの?」

「僕の友達がそれを僕に伝えたから」

「え?どういうこと?」

「つまり、彼女が僕の友達に『10日で冷めたんだよね』って話してたらしい。それを僕にわざわざ教えたってわけさ」

「あ、10日で冷めたんだ。で、どれくらい付き合ったの?」

「1ヶ月」

「おぉ、短いね」

「うるさい。」

「怒んなって〜、えーっとそれじゃあ、今でも彼女のことは好き?」

「いや、さっきも言ったけど興味ないよ」

「なるほどねー。楽しかった?」

そんな質問をされるとは思っておらず、咄嗟に彼女の方を見た。彼女はただ、笑ってこちらを見ていた。それはいじるような顔でもなく、爆笑しているような顔でもない。どこか寂しげりのある顔だった。

「…楽しかったよ。別に僕が何日で冷められたとか正直どうでもいいんだ。何日で飽きても、僕は楽しかったし、それでいいと僕は思ってるしね。みんな僕のことをいじりたくて言ってきて、僕ははぁ?とか言ってるけどさ、別にもういいんだ。あの時はあの時。今は今、そう考えてるから」

「そっか…よかったね?なのかな」

「まぁ、そうだな。よかったよ」

「なかなか、そう考える人いないよ?やっぱ変わってるねー?守君」

「そうかなー?別に浮気されたわけでも金を取られたわけでもないから僕は別にって感じ。」

「ふーん?じゃあ今は彼女欲しいの?」

「…まぁ、欲しいっちゃ欲しいかなぁーとは思ってるけど、今は本の方が面白いしね」

「本かー。いいね。私も本好きだよ?」

「意外だな。お前本とか読むのか?」

「まぁねー。本は知識の宝だからね。読んで損はないよー」

本当に意外だ。そんなふうに考える人が僕の他にいるとは、それもこんな近くに。

「へえ、そんなこと考えてるのか」

「うん、まぁね。昔は読まなかったんだけど、なんか読もうかなーって思ったことがあってね。そらから読んだっけ意外と面白いってなったんだよ」

「いいね。本の話ができる人がいるなんていたんだな。それも女子に」

「意外でしょー?私結構真面目なんだよー?」

「そうらしいね」

「君は見た目のまんま真面目くんだね」

「何だそれ」

「眼鏡かけてて、隠キャってこと」

「おい!」

「冗談だよー」

「ねぇーねぇ、さっきの続きだけど、もし、その子に『復縁して』って言われたら付き合う?」

「絶対にしない」

何だその質問、するわけがないだろ

「えぇ?しないのぉ?でも、彼女欲しいんでしょ?」

「さっきも言った通りに、欲しいっちゃ欲しいが、なんか恋愛がめんどくさいと思い始めてきたから、今はいいし、元カノと復縁するとか絶対にしたくない。というか無理」

「ふーーん。じゃあ今は好きな人いないんだ?」

「いないね。好きなのは本だけだ」

「ほんと、本好きだねー?」

「本こそが僕の生きがいだからな。本の世界ほど、ワクワクドキドキする場所はない」

「…オタクだね」

「うるさい。現実が面白くないんだから仕方ない」

「ドキドキワクワクねー。彼女と付き合ってそういうのはなかったの?」

「ありはしたけど、小説の方が感動した」

「ほんと、君は恋愛向いてないね」

「さっきから、俺のことディスってるけど、そういうお前はないのかよ?」

「ドキドキワクワク?」

「それもそうだけど、恋愛だよ。恋愛」

「んーーーー」

そうやって、口に手を置いて考えている。まぁ確かにこいつはモテそうな顔をしている。恋人の一人や二人いてもおかしくないと思っていたが、予想と反して彼女はこう答えた。

「恋人はいないねー」

「え?いないの?」

「うん、なんか。告白をしてくる人はたくさんいたんだけど、全員振ったしー」

「へぇー、意外だなあ」

「え?意外?」

「いや、なんか。俺は勝手に恋愛経験者と思っていたから…」

「あー。私『好き』って何かわからないんだよね」

「え?」

「なんか、みんな好き好きーーつて彼氏彼女にやってるでしょ?そして、飽きて別れる。なんか好きって軽い感じがしない?」

確かに、それは思うかも…だけど

「好きってそんなもんじゃないのか?その一瞬だけ好きみたいな?」

「なんか、私はそれ嫌なんだよね。みんな軽いでしょ?私は好きなら最後まで好きでいて欲しいっていう女なわけよ」

「なるほど。重い女な訳だ」

「殺すよ?」

「すいませんでした」

「あのねー?君?女性に対して「重いと」とか言っちゃダメなんだよ?知らないの?」

「はい、ごめんなさい。もう2度と言いません」

「あ!あのクレープ屋、美味しそうだねぇ?美味しそうだよね?」

「え?いや、俺は大丈夫…」

カフェで食べたのでそこまで腹は空いていない。それに、僕は甘い物がそこまで好きなわけではないし。

「ね?買ってくれるよね?」

「…はい。買います…」

僕は彼女の圧に負け渋々、財布の紐を緩め、クレープ屋に足を向けたのだ。

クレープを買い、ウキウキの彼女と僕は博物館に来ていた。博物館に来るのは久しぶりなのでワクワクしていた。この博物館には前々から来ようと思っていたのだ、何と言ったってこの博物館も素晴らしいのだが、この博物館なんと、美術館と合わさった物なのである。つまり、博物館も楽しめて絵を見ることもできると言う、一石二鳥なのである。この美術館には僕の好きな画家の絵があるのだ。それを見るために来たかったのだが、こんなのを彼女が見て、面白いと思うのか、僕は不安だったが…

「わー!!でかいね、この博物館。久しぶりに来たから楽しみなんだよねー!早く行こうよ!」

僕の考えなんか気にもせずに彼女は楽しそうにしている。どうやら僕の杞憂だったようだ。そう安心しているのも束の間、彼女はサッサと建物に入ろうとしていた。

「どうしたの?早く行こうよ」

「へーい。今行くよ」

やっぱり、彼女はどこか他の子とは違うところがあるようだ。

「すごいね!この博物館。恐竜の剥製なんてあるんだね。見てみてあれ、あれって、ティラノサウルス?だっけ。すごいよ!」

まるで子供みたいにはしゃぎ回っている彼女をみて、少し親の気持ちがわかった気がした。多分こういう温かい目で僕のことを見てくれたんだろうなと、改めて感謝した。

「…なんかさ、守くん私のこと子供を見るような目で見てない?」

「いや?そんなことないよ?」

「…嘘ついてるでしょ?」

「…ついてないよ?」

「今変な間あったよね?」

「ないよ?」

「絶対にあった!もー守くんはそうやって、私のこと子供扱いするんだから!」

「してないしてない笑」

「絶対にしてるでしょー!笑」

あー、何だろう。何だろうなこの感じ。なんで、こんなに僕は、嬉しがっているのだろう。

そう思うと、何故だかわからないが僕は…

「ねー?守くん!あっちにさーなんかお菓子…」

そう言いかけて、彼女は僕の顔を驚いた顔で見ていた。

「どうした?お菓子が何だって?」

「…いや、そんなことよりさ、何で守くん泣いてるの?」

「え?」

あれ、何で僕泣いてるんだろう。顔に触れて、いや美百合さんに言われてからようやく気づいた。

「あれ?何で泣いてるんだろう?」

「大丈夫守くん?」

「うん、大丈夫。何だか楽しくて…」

そうか、何で泣いたのか…わかった気がした。

「それで、今日で終わっちゃうのかな…なんて考えてたら、涙が…」

「……」

「なんか、ごめんな?よし、お菓子コーナー?だっけ?行こうぜ?」

「…終わらないよ?」

「え?」

「だから、終わらないよ?今日で終わるって何?終わるわけないじゃん!また、来ようよ。また、遊ぼう?だから、泣かなくていいよ?私たち友達でしょ?」

そう言って、笑った君を…美百合さんを見て、僕が夢で見る。あの女の子に似ていると…いや、あの女の子が目の前にいるんじゃないかと思うぐらいの笑顔を見て、僕はついつい見惚れてしまった。あの子もこんな笑顔をする…していた気がしたのだ。

「どうしたの?ぼーっとして?」

そう言われて、我に帰った僕は、そっぽを向き

「何でもないよ…ありがとう」

無愛想に行ったつもりだったが、彼女はそう言ったのが意外だったのか、一瞬びっくりしていたが、すぐに元のいじり顔に戻り

「どうしたしまして〜!まさかー、守くんがこんなに寂しがり屋だとは思わなかったなー?」

「…うるさい。さっさと行くぞ」

「ぷーくすくす笑守くんは可愛いでちゅねー?」

「黙れ、せっかくお菓子でも買ってやろうと思ったが、今ので気が変わった」

「えーー、ごめんてー!お菓子買ってよー?!お願いーー!」

「…気が向いたらな」

そう言って、僕は歩き出した。

「ちょっと待ってよー」

そう言いながら彼女と僕は、お菓子コーナに向かったのである。

お菓子コーナーで、彼女は環奈さん達用にお土産を買うことにしたらしい。もちろんお代は僕が払うのだが…金がなくなるなぁとしみじみ考えていた。

「よし、これにしようっと」

「決めたのか?」

「うん、これにする。多分行くことになるだろうし、お土産は買っておいて損は無いしね…」

はははと力無く笑っている彼女の目には光がなかった…まぁ、多分僕関係で何かあるのだろうと考えていた。

さて、お土産を買い。僕の財布の紐はゆるゆるなところで、僕たちは奥の美術館に入るのだった。

「なんか、絵とかはわからないけどよくこんなのを描けるよねー、画家ってさ」

「それは、僕もそう思う。画家の頭は何を考えているのか、全くわからないからな」

「本当にねー」

そうたわいもない話をしてたら、僕が見たかった。お目当ての絵を見つけることができた

「あった」

「これ?見たかった絵ってやつは」

「うん、この絵が見たかったんだ」

「これって空の絵なの?」

「そうらしいね。僕、綺麗な絵って好きだからさ、こういう絵を見てみたかったんだ」

「へぇー?」

「…何だか、夢に似ている気がしてさ」

「夢?」

「そう、たまに見るんだ。こんな空を夢でね」

「そーなんだ」

「…」

「…」

そこで、僕たちの会話は終わり、黙ってこの絵を見ていた。もちろん他の絵も見たのだが、これが1番綺麗だったと思う。僕たちは絵を見たら、博物館を後にし、帰路についた。

「楽しかったねー守くん」

「そうだなー、久しぶりに遊んだって感じがしたよ」

「そう?よかったね」

「あぁ、金は無くなったがよかった」

「あららー、それは残念ですね〜」

ニヤニヤしながら言っているがこれはお前のせいだと言ってやりたかった。

「誰のせいだと思ってるんだ?」

「私のせいか!笑」

「そうだよ笑」

そんなたわいもない話をしながら僕たちはバスに向かっていた。バス停まで着くとここで僕たちは別れることになった。

「それじゃ、また明日な」

「うん、それじゃまたね!」

そう言って去ろうとしたのだが、彼女が僕の服を掴みんだ

「どうした?」

「…LINE交換してなくない?」

「え?」

「だから、LINEだよ!LINE!交換してないじゃん。早くしないとバス来るからほら早く!」

急に言われて、びっくりしたが僕はさっとスマホを出して交換したのだった。比較的友達が少ない方なので、久しぶりにLINE交換をした。ほんと、今更ながら彼女とのLINEを交換し終えたところで、バスが来た。ナイスタイミング。

「それじゃあね、守くん」

「あぁ、またな美百合さん」

「…さん付けしなくていいよ?」

「え?」

「いや、なんかさんで呼ばれるのむず痒いし、さん付けなしで」

「えぇ〜?」

そんな、急に言われても

「ほら、早く!じゃあね!守くん、楽しかったよ」

「え、えっと、じゃあまた明日…み、美百合…」

そう言ったら、ニヤニヤしながら、彼女はバスに乗って行くのだった。僕は彼女に手を振り見えなくなったところで、帰ることにした。今日は色々あったなぁ、なんて考えながら家に向かっている。いつも一人でいる僕にとっては今日は何とも騒がしい一日だったが

「ま、悪くはないな笑」

そんなことを呟きながら、僕は帰るのだった。

今日の空はあの時見た絵よりも朝見た時の空よりも鮮やかにそして、美しく輝いていた。

明日はどんな一日になるのだろうか。これから楽しみである


「楽しかったなぁ」

そんなことを呟いて私はバスに揺れながら座席に座りぼんやりと外を見ている。先ほど彼こと佐々木守くんとデートをし、さらにLINE交換もし、家に向かっている途中である。そんなことを考えながら今日の出来事を振り返る。朝、私は学校の屋上にいた。教室に向かう気など全くと言っていいほどなかった。来る前に親と喧嘩したこともあったし、朝は弱いので不機嫌だったのだ。そこで、屋上で歌うことにした。歌を歌うことでストレスを発散しようと考えたのだ。親との喧嘩はたわいもないものだった。いつもいつもうるさい母親に朝からあーでもないこーでもないと言われ、少し怒ったら、まさかの大喧嘩に発展。私もキレて学校に逃げるようにやってきたのだ。教室に行こうとしなかった理由は、話すような友達がいないという理由だ。私はモテる。これは別に自意識過剰とかではなく、周りからの視線でわかる。私は顔がいいから今まで数多の男から告白をされて、それを全て断った。理由は単純に「好き」がわからないというものだ。それに、皆私の顔や体で告白してきているというのは、どうしてもわかってしまう。昔から人の顔や仕草を見るのは好きな方で、自分が周りから好かれると知ってから、より一層人の目や仕草、行動を見るようになった。なので今まで男子達を断ってきのだ。そんな体をみすみすと知らない男にやるほど私は安い女ではないのだ。だがこれはもはや受け入れるしかないのか、ふることでもめんどくさいことに、繋がってしまうのだ。クラスの女子には嫉妬の的として嫌われる羽目になってしまった。別に、友達は少なくてもいいのだが、殺意や嫉妬のこもった目線でそれも毎日見られるのは気持ちのいいことではない。それに、嫌がらせなども起きてきて、私は学校というものが嫌いなのだ。そんなこともあって、学校というより教室に行く気が全く起きなかった。少し歌ったらそーっと抜け出して帰ろうと思っていたのだが、まさかの彼が来た。最初はまた、告白まがいのことをしてくる。キモ人間なのかと思っていたがそんなことはなく、ただ私の歌声につられてやってきた人だったようで、拍手までしてくれた。それに、私は興味を持った。何で興味を持ったのかと聞かれると難しいが、私はよく夢を見る。その夢はとある少年と話す、そんな夢を見るのだが、何となくその子に似ている気がするしたのだ。どこが似ているかまではわからないが、何となく、雰囲気が似ている。そんな気がするのだ。そう思い彼をデートに誘ったのだが、こらが面白いことにデートということを全くわかっていない。デート感覚で来ているわけではないと知り、私は嬉しく思った。彼はただ誘われてイヤイヤ来る。そんな感じて私のところにきたのだ。それがとても新鮮だったのだ。私からの誘いなら誰もが嬉がるところを彼は拒んだ。そこに私は興味を持ったのだ。それと、こうやって男の人とたわいもない幸せな時間を過ごせるのはこれが初めてだったからだというのも嬉しいと思った理由の一つだ。前に一度デートして欲しいと言われて、まだその頃は優しかった私はデートに行くことにしたのだが、それがとても面白くなく、つまらなかった。自分で考えたデートプランで私のことは何も考えていない。私との会話もただ、自分のことを意識して欲しいというようなつまらない会話だった。それに比べて守くんは面白い。何と言ってもいじりがいがあるところが1番私の好きなポイントだ。彼は全ての行動にいじりがいがあるし、彼の元カノの話もとても面白かった。なぜ、元カノさんはあんな面白い彼をふったのか、私には理解できない。いじりがいしかない彼をつまらなくなるのだろうか?と思うのだが、まぁそれは人それぞれの解釈があるのだろうと考えておく。まぁそんなこんなで水族館に行くことになったのだが、まさか環奈と会うなんて…いとこの環奈は私には激甘の甘々と言っても過言ではないくらいに甘いのだが、他の人間(男子)にはこれでもかというほど冷たい。なので、守くんにはとても申し訳ないという気持ちなのだが、彼は気にした様子はない。意外と合うのだろうか?わからないが彼も私と同じく変わっていることは理解できる。ここでもう一つ、彼のいいところを挙げると、彼は他の人とは違う感覚を持っている。これもポイントだ。やはりどこか変わっている。彼の考え方や彼の行動がそれをとても表している。私もどこけ他の人とは違う感覚を持っているらしいので、彼とは気が合ったのだ。そんな時に彼の元カノの話を聞いた。あの時私は少し後悔したのだ。彼に聞かなきゃよかったと、彼が話している時の顔はどこか諦めているようで、でも納得してないような、そんな悲しい表情をしていた。とても申し訳ないと思っていたのだが、やはり彼は、私に対して怒ることはしなかった。彼も甘い人間だと思った。だが、そこがまた彼の魅力なのかもしれない。そんなこんなでついに博物館に着いたのだが、いきなり彼が泣き出した時はびっくりしたものだ。その泣き方というか、彼の表情が夢の中に出てくる少年の姿にとても似ていた。それで、もう終わりかもしれないなんていう彼に少し怒ってしまったのだ。私は今日で終わりにしたくなんてないのだから、彼ほど面白い人間とこれっきりなんて絶対に嫌だ!そう思っているのだ。それで、ついつい怒ったような口調になったが、彼はありがとうと、お礼まで言ってきた。やはり、かれは面白い。私は彼が好きとか嫌いとかじゃなくて、私はあの人とこれからも遊びたいと、そう思っているのだ。だからこそ、そんなふうに言ってほしくなかったのだ。そんなこんなで彼の見たかった空の写真を見に行き、私たちは長い一日を終えることになったのだ。それからはさっき言った通りに、バスに乗り、LINE交換をしたのだ。

「…最後に名前呼んでくれて嬉しかったなぁ。あの時の顔明日絶対いじってやろ ボソ」

明日、学校に行こうと普通に思ってる自分に驚きながら

私は目を開けた。まだ目が光に慣れていないのか眩しくなり、窓の外に目をやると、そこには先ほど絵で見たような、いやそれ以上の空が私の目いっぱいに広がっていた。今頃彼は何をしているのだろうか。そんなことを考えるだけで、一日が楽しく終われるなんて…私は本当にいい人に出会ったと心の底から思っている。

「また、明日。か、明日はどんな一日になるんだろう」

そんなことを考えながら、私は空を見る。この美しい景色を彼も見ていることを私は願っている。

終わり

読者の皆様に感謝いたします。読んでいただきありがとうございました。

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