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烟霞《えんか》にまぎれて

 都から少し離れた港町・臨水には、いつも片目を隠し、煙草の香をまとって歩く若き絵師がいる。

 名を黎傑《リー・ジエ》。

 腕前はまずまず、口は悪いがどこか憎めない。借金はないが懐はいつも寒く、長屋暮らしで隣の娘に飯を恵まれている。

 ある時は町でも名の知れた商家の令嬢が、またある時はワケありの男が、彼の元を訪ねてくる。

 絵を描いて欲しいのかといえば、そういうワケでもない。
 話をしているうちに出てくる謎。
 依頼ではない、ただの相談だと言う。だがその“相談”の中に、男は何かを嗅ぎ取った。

 煙のように掴みどころのない話の中から、彼は少しずつ糸を手繰っていく。
 少しずつ、少しずつ。
 絵筆を握る手で、誰にも気づかれぬよう、静かに。

 誰かが忘れた何かを、ただ見つけるために。

 やがて町の片隅に積もった霞の中から、真実の輪郭がゆっくりと浮かび上がる。

 二流絵師の裏に隠れたもう一つの顔、"探し屋"。

 ——人も物も、忘れた心さえも、煙のように現れては消えてゆく。
絵にならない依頼
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