名前はまだないです
「こんな名前はどうだ! 爆裂丸!!」
「まあ素敵!じゃあ私はラブリー丸なんてどうかしら?」
部屋に響くテンションの高い声。
とても真剣に、そしてとても自由に、両親は話し合っていた。
ーーそう、両親は今、産まれた子どもの名前を考えている。
そしてその子どもというのが、僕だ。
(……産んでくれた親に文句を言うのは間違っているのだろうが、どうも僕にはこの二人のネーミングセンスが理解できない)
今まで目を覚ましてから二週間。
ご両親の人柄はよくわかった。愛情深く、優しい。けれど。
(どうしてまだ名前が決まってないんだ……)
「戦神タローなんてどうだ!?」
「私はね、スウィートファイヤー・ベイビーちゃんっていうのが浮かんできたの!」
(頼むから、もう少し……まともな名前を……! 他人に名乗れるレベルでいいから……!)
もはや内心で土下座する勢いの主人公。
その願いが通じたのか、ついに母の口から一筋の光が差し込んだ。
「じゃあ、“ジブリール”はどうでしょう?」
(いい! それだ! 最高じゃないかジブリール! それでいいじゃないかジブリール!!)
赤ん坊の小さな身体で、全力のガッツポーズ。
この名前なら、胸を張って名乗れる。……そう思った矢先だった。
「うーん、ちょっと微妙だなあ。もうちょっとパンチを持たせて、“ジブリズマ・マグマ・スパーク”なんてどうだ!?」
(どうしてそうなる!? “ジブリール”だけで完成してただろ!? パンチなんて必要なかっただろーー!?)
思わず心の中で絶叫する主人公。……のはずだった。
「きゃあー! 喋った、うちの子が喋ったわー!!」
母が驚きと感動の声を上げる。
その腕の中で、主人公は自分の失態に気づく。
(……ん?)
「すごいなうちの子は!! もう喋れるのか!? いや、ちょっと流暢すぎる気もするけど……とにかく天才だぞ!!」
父も歓喜に震えていた。
(やってしまった……)
喋れるという自覚はあった。あったが、
「赤ん坊が喋るなんて明らかにおかしいだろ」と、今まで我慢していたのだ。
だが……あまりのツッコミどころに、言葉がつい、口を突いて出てしまったのだった。