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未来国家大日本帝国興亡史  作者: PATRION


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第五十三話 山本、南雲両艦隊北上

潜水艦による邀撃を受け被害を出しながらも連合艦隊はジョンストンを目前とするまで進出してきていた。

だがそこで見えたのは島から無数に上がる黒煙の数々であった。


「・・・やられたか。」


山本は黒煙を確認するとそう呟く、艦橋では他の皆も渋い表情を浮かべていた。

そこで水偵を発進し偵察を実施したところ、想像通りの結果であった。


「ジョンストン島に人影は見えず!滑走路は盛大に破壊工作を施され、最早航空基地としての機能は喪失している模様です。」


「わかった。下がってくれ。」


「はっ!」


偵察員の報告を受けると山本はため息をつく。

ジョンストンに到達する前、司令部は軍令部と会議を行い、ジョンストンを艦砲射撃実施せずに占領するべきという方針を固めていたからであった。

先のミッドウェー攻略では、艦砲射撃が期待以上、それも過剰なまでの効果を生み出してしまっていた。

46cm砲だけではない、新型炸薬を使用した多くの射撃はミッドウェーの形状ごと変えてしまうほどの効果をもたらし、工兵や重工系会社の人員を投入しているものの航空基地としての運用開始には三ヶ月近い時間を要する見込みであった。

ジョンストンは小規模であっても陸軍機ですらハワイを行動半径に収める位置に存在する島であり、それゆえ今後行われるハワイでの決戦にて航空支援を実施するべくジョンストンは艦砲射撃を最低限に収め、無傷で占領するべきという方針となっていたわけであるが、アメリカは賢くジョンストンを放棄する選択肢を選択した。

滑走路を完膚なきまで破壊してしまえば、復旧は容易ではない、それはミッドウェーと違いジョンストンはハワイからの空爆の射程範囲内であることが大きな問題点であった。

機動部隊を用いれば制空できなくもないだろうが、南雲機動部隊を次の作戦まで常に貼り付けるわけにもいかず、もし少しでも突破されてしまえばアメリカの重爆撃機シリーズ数機であろうとも工事に遅延を強いることは容易であろう。

それ故に無傷に近い形で占領することが重要であったが、アメリカもそれを見越しており修復不可能なまでに破壊工作をしたのちにジョンストンを脱出していた。


「ううん・・・どうしたものか。」


山本は唸る、ジョンストン攻略という作戦目標を達成したからには、既に艦隊をトラックまで帰還させ、早急に次段階、ハワイ決戦の準備に取り掛からせるのが良いだろう。

だが、ジョンストンを容易く放棄し、ハワイに籠城する意思を見せたアメリカ軍に対して、ここでみすみすトラックに帰還するのは時間的喪失が大きいとも感じ取れていた。


「ジョンストンを放棄したということは、アメリカ軍もやはりハワイが決戦の地であると認識しているなによりの証拠だろうね。」


「でしょうな。ハワイを失えばアメリカだけでなく、連合国全体が太平洋に対する足掛かりを失い、オーストラリアが干上がることとなります。」


「まだ戦力集結させることは出来ていないはず、ハワイにはそこまで海軍戦力はないだろう。津田航海長、ハワイ周辺のこの先数日の天候はどうだ。」


「・・・まさか、長官。」


山本は海図に目を落とす、津田も意図を汲んだのだろう、神妙な表情で答える。


「この先数日は恐らく快晴が続きます。もちろんスコールは予測できませんが・・・。」


その答えを聞き山本は数秒黙りこくる。

「よしっ」と何かを決めたように手を叩くと、次に口にしたのはやはりハワイへの進軍であった。


「本艦隊、南雲機動部隊はこれより北上、ハワイへと進路を取る。真珠湾にアメリカ海軍の主力艦隊は居ないだろうが、フォード飛行場、他にも要塞などは動かずそこに存在する。来るハワイ決戦の前哨戦として、これらの支援設備を事前に破壊することは、来るハワイ決戦んにおいて我々を楽にしてくれると僕はそう思う。一度だけの空襲で撤退する、塩沢艦隊はトラックへ帰投。」


「・・・第二次真珠湾攻撃、ですか。」


「確かにあの地形を空襲するのは難儀だが、今回の目標は艦艇ではない。それに、真珠湾攻撃を経験した者も大勢いるし、なによりそこから格段に技量も上がっているじゃないか。技量の心配は僕はしていないよ。」


あくまで連合艦隊の司令長官は山本である、その本人がこういうのであれば参謀組と言えど文句が出るわけもなく、皆は言葉に出さずとも山本の意見に同意していた。

その後、意向を軍令部に、そしてハワイにおける現在の戦力の最終確認のために情報総局へと連絡をした山本であったが、両機関のトップも特に反論が出ることはなかった。


「堀、正直にどう思う?きっと今の僕に意見出来るのは君だけかもしれない。」


山本がそういうと、受話器越しに堀の笑い声が聞こえてきた。


「先ほど米国課からの情報を教えただろう。現在太平洋艦隊の主力は西海岸のトレジャーアイランド海軍基地に集結している。大艦隊を編成したら太平洋へと進出してくるのだろうが、代わりに今のハワイは重巡以下の艦艇しかいない。アメリカも直接ハワイを奪いに来るわけが無いと断定しているのだろう。空襲するなら好機ともいえる。更に西海岸での集結中の太平洋艦隊の尻を叩くことも見込める。完全な準備をさせぬまま出撃させることができるかもしれん。今の南雲機動部隊の練度であれば、動かぬ基地の空襲程度容易だろう。フォード島の航空戦力も増強されつつあるが、まだ完ぺきではないし、逆に今フォード島に到達した機体を破壊すれば次段階の作戦行動中の空襲を減らせるだろう。」


「わかった、なら自信をもって北上することにしよう。ありがとう。」


堀からの言葉を聞いて山本も己の選択に再度自信を持つ。


「ああ、南雲の方にも伝えるが、アメリカの新型戦闘機、P-51が資料より早くアメリカの手に渡りそうだ。アメリカ、イギリス間の委員会で不穏が動きがあると。まあ、現在はまだハワイに移送されるという話は出ていないから大丈夫だろうが、次段階の決戦の時には参戦してくるやもしれん。」


情報総局の米国課と英国課は委員会の動きを当然つかんでいた、それはP-51が史実より早くアメリカ軍に投入されることを意味していたが、現在数的な主力は未だに零戦であり、その零戦ではP-51を相手した時に不足があると判断されていた。


「了解した。ではまた。」


山本は感謝を伝え、通信を切断する。


艦隊は既にジョンストンを水平線に沈め、北上を続けていた。

南雲機動部隊の航空隊が攻撃範囲内に収めるまで一日もかからないだろう、機動部隊の空母では大慌てでブリーフィングが行われ、真珠湾攻撃経験者が新人や未経験者に必死になって島の形状や注意点などを叩きこむ作業が行われていた。


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