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未来国家大日本帝国興亡史  作者: PATRION


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第五十一話 ミッドウェーを巡る戦い(7)

攻撃隊の帰還予定時刻である。

丁度ここ慶鳳の電探にも大規模な集団を感知した。


「電探に感!9時に大規模集団!」


「・・・もしもし、こちら源田。攻撃隊を探知。被弾、故障機から優先して着艦させよ。」


電探士からの報告を受け、源田は通信機を取り源田に連絡をする。


「こちら淵田了解、故障機を優先させる。」


源田が通信機を置くと南雲は大きく息を吐いた。


「帰ってきたか・・・。」


「ええ、見た感じ損傷機は殆どいなさそうです。真珠湾攻撃以来の完勝かと。」


草鹿が双眼鏡を覗きながらそういうと、南雲は安心したような表情を浮かべる。

艦橋にいる皆が勝利ムードに浸り、甲板では既に着艦準備が始まっていた。


故障機が着艦を始め、前方エレベーターでは機体が急いで降ろされていく。

そして続々と着艦が続く中、突如として上空で発砲音、爆発音が響く。

即座に源田は上に向かって叫んだ。


「何事だ!?」


「ええっと・・・せ、制空隊が何かと戦っています!アメリカ軍の攻撃隊かと!」



天楼からの報告に草鹿が電探士の方をにらむ。

電探士も聞いていたのか顔面を蒼白とさせながらこちらを見返していた。


「貴様・・・電探に反応はなかったのか!?」


「感はありましたがこれが友軍の物か敵のものか見分けはつきません・・・!それに、余りにも近いので反応が纏まっていたんです、別の部隊が紛れていたとは・・・。」


その報告を受け源田は大急ぎで通信機を手に取る。

電探が使い物にならないとなれば最後に頼れるのは上空にいる味方であった。


「淵田!何が起きた?!」


源田の問いかけにすぐに返事が返ってくる。


「烈風隊が敵攻撃隊を発見した、こいつらは一体どこから来たんだ!?とりあえず着艦は中止させる、あと制空隊には迎撃戦闘を命じた。艦隊も回避行動を!」


「了解・・・司令!」


淵田との通信を終え、源田は南雲の方を向く。

南雲も頷き、艦隊に命令を下した。


「全艦対空射撃、迎撃戦闘!五航戦、六航戦は急いでスコールへ退避!」


南雲の号令と共に一斉に士官らも持ち場に移り、ブザーと同時にすぐに高角砲が動き始める。

不幸中の幸いか、帰投していた戦闘機隊と直掩によりかなりの数の敵航空機が既に撃墜され始めている。

だが烈風が相手していたのはF6Fであり、優位にたち圧倒的な戦闘を広げていても肝心の攻撃隊は着々と進んできていた。

それでも翔鶴型は対空強化改装が施され、慶鳳と寧鳳は空母とは思えない防空能力を持っていた。

最新の防空火器により突入寸前のところで撃墜、更に急降下を始めたタイミングで進路上に対空噴進砲がばらまかれ、炸裂により一瞬で分解される機体もいる。

だがそれでも突入というのは防げないものであった。


「敵機直上!面舵一杯!」


敵の急降下爆撃隊が最初に目を付けたのはやはり巨艦である慶鳳、寧鳳であった。

天楼からの号令に合わせて艦は勢いよく左に傾いていく、新機構の舵はこれほどの巨艦を強引に曲げ始めた。

着艦作業中でほぼ全速で航海していただけに回避運動には入りやすい、甲板では振り落とされないように必死にしがみつく作業員が目に入った。

投下された爆弾はギリギリのところで左舷に落ち、無事回避に成功するが続々と接近する急降下爆撃に限界を見せ始める。


「制空隊は雷撃隊を最優先で迎撃!爆撃隊は良い!」


源田は通信機を取り部隊全体に命令を送る、対爆弾能力に富む慶鳳、寧鳳にとって一番恐ろしいのはやはり魚雷による攻撃であった。

命令を受けた戦闘機隊は交戦している機体を除いて一斉に高度を下げ始める。既に雷撃隊も発見されており、零戦が一斉にTBFへと群がった。


鈍重な魚雷を抱えたTBFは新鋭機と言えど戦闘機にとっては餌でしかなく、次々と撃墜されていく。

遠距離から魚雷を投下し、急いで離脱を図るが恐らく射程距離外での投下だろう、次々と撃墜されるTBF、接近しようとする機体は最早おらず、一瞬にして雷撃の脅威は消し去られた。


だが急降下爆撃は依然として続いていた、SB2Cは弾幕を突破し、慶鳳、寧鳳へと群がっていく。

投下された爆弾は風切り音を出しながら近づいてくる、爆弾は目に見えており皆が目で追いながら、甲板を貫通する瞬間に注目していた。

甲板中央部に命中した爆弾は吸い込まれるように貫通していき、一瞬軽い衝撃があったかと思うと艦底の方から鈍い爆発音のようなものが振動と共に響いてきた。

その衝撃と共に左右舷からは壁を突き破った爆風が飛び出す、これは下層格納庫甲板が爆弾を防ぎ、爆風解放の為の隔壁がうまく作用していることを証明していた。

続いて突入してきたSB2Cにも被弾を続出させ、続いた回避で速度を落とした慶鳳は4、寧鳳も3発の爆弾を受ける。


「状況報告!」


艦長の青木泰次郎大佐がマイクに向かって叫ぶとすぐに返事が帰ってくる。


「こちら応急班、第三甲板にて複数の爆発!恐らく下部格納庫は壊滅しています!」


スピーカーから流れるその報告に南雲を始めとした要員の皆が頷く、甲板で防げているのであれば復旧は容易であったからである。

飛行甲板では爆弾が貫通したとはいえ貫通痕は小さく、衝撃であたり一面に甲板の表面に張られた木片が散らばっていた。

下部格納庫も爆風で破壊されたとはいえ、艦載機もまた下部格納庫のものから優先して使われるため機体の損害は少なく、慶鳳、寧鳳ともに航行に支障は出ていなかった。


空母自身が対空射撃の中心となり、上空では制空隊が戦闘を繰り広げる、TBFはほぼ全滅し、SB2Cも攻撃未了の機体は数少なくなっていた。


「五航戦と六航戦は?」


慶鳳と寧鳳は小規模な火災を発生させながら航行を続ける、五航戦と六航戦は退避し被害は見当たらなかった。

問いかけには源田が返事をする。


「他の空母は退避中というのもあり、敵の攻撃が我々に集中しました。恐らく翔鶴型に比べても大幅に巨大だからでしょうが、結果的には良かったかもしれません。慶鳳型はトラックに戻れば復帰できますから・・・。」


「無いに越したことはなかったが、早速・・・効果が出たな。航空隊収容後、本艦隊はトラックへ撤退!」


南雲の号令により艦隊は集結後、そのまま進路を南方へと取る。

慶鳳、寧鳳の甲板では消火作業と並行して大急ぎで甲板の修復作業に追われ、ひとまず穴を修復材で埋めるだけの処置を施して燃料切れ寸前の航空隊を収容し始めた。

航続距離的に活動限界が迫る九九艦爆は先に五航戦、六航戦へ分散して着艦し、甲板に係留されながらトラックを目指した。


「─わかった、それではミッドウェー攻略は我々と塩沢艦隊だけで行う。問題はないよ、急いでトラックへともどってくれ。」


「はっ、失礼します。」


通信相手は総司令の山本であった、通信機越しに報告を行い、山本はトラックへと撤退を認める。

トラックへと向かい始めた南雲機動部隊、その後南雲の自室では航空隊隊長の淵田と制空隊の主戦力であった岩本が呼ばれ、司令部へ報告を行っていた。


「敵の機体が新型機であっただと?本当か、それは?」


淵田の問いかけに二人は頷く。


「確かに爆撃を行っていた機体はSBDではなかったような・・・。」


「情報総局からも新型機の存在は報告を受けていたが、それは空母によって輸送中ではなかったか?まだ戦域に到達しないはずでは。到底ここまでは来れないはずだし、艦載機がここまで来れるということは彩雲に発見されていてもおかしくないはずだろう。」


草鹿の発言は最もであり、もたらされた情報ではアメリカ軍の新型機はおろか、日本軍の新型艦載機組でも彩雲以外では到達できない箇所が想定されており、だが実際に任務部隊はそこに居た。


「敵の戦闘機はこのような見た目ではなかったか?」


源田は自身の鞄から機密と書かれた封筒を抜き、そこから1枚の写真を取り出した。

それは戦後発行されたムック本の複写から切り抜かれたF6Fの写真であった。


「あぁ、まさにこれです。性能の方は零戦に匹敵するか、それ以上かと。格闘戦では零戦のほうが良いでしょうが・・・少なくとも烈風の敵ではありません。」


源田の取り出した写真を見て岩本はそう報告する。

それを見て淵田が驚きを隠せずに居る、南雲はただ黙っていたが、草鹿も驚いたような表情を見せる。


「げ、源田!そ、それは・・・。」


「どうした?これは情報総局から手に入れた写真だ。恐らく敵の試験中の写真でも手に入れたのだろう。岩本、これは機密情報だからな?」


図書館の情報を岩本に見せたことに驚愕したのだろうが、源田はそれを情報総局からの写真であると岩本に説明する。


「F6Fの航続距離は2,200kmほど、SB2Cは2,400km、彩雲の偵察範囲外からはどう考えても攻撃不可能・・・ただ一つの策を除いてですが。・・・岩本、下がってくれ、ご苦労であった。此度の戦いも貴官の制空隊の活躍がなければこんな軽度の被害では済まなかっただろう。」


「お褒めの言葉、ありがたく頂戴いたします。では!」


源田の言葉に敬礼すると岩本は部屋を後にする。

岩本が去ったのを確認すると残った者は再び話し始める。


「・・・源田、どういうことだ?」


南雲の問いかけに源田は応える。


「はい、岩本の報告は間違いない、そしてTBFはミッドウェーに配備されていましたが、F6F、SB2Cは例の輸送任務で初めて戦域に配備されていたに違いありません。敵の機動部部隊がここ、SB2Cが武装した際の行動半径が1,200kmだとした場合・・・。」


源田はそう言いながら海図を広げ、駒を置き、それを中心に1,200kmの円を描く。

南雲機動部隊の現在地に駒を置くが、円より大幅に外れた位置であった。


「ふん、情報総局の情報が正しいとすればありえんな。となれば情報総局の情報に誤りがあったということだな。」


草鹿の言葉にその場にいるもの皆が頷くが、源田は「いや、」というと他の選択肢を提示する。


「仮に片道1,800kmだとしましょう、その際SB2CとTBFは武装搭載時の飛行が長くなりますから、合計の航続距離は下がるでしょうが、そこを考慮しなければ・・・。」


源田は1,800kmの円を描き、次に600kmの円をミッドウェーから中心に描く。

それは両方ともに南雲機動部隊を寸前の所で内側に収めていた。

それを見て全員が驚きの表情を浮かべる。


「だがミッドウェーは空襲を受けることが確定していることは敵も知っていたはずだが・・・。」


「その上これはSB2C、TBFの航続距離の低下を考慮していない円です。爆弾、魚雷を長く持てば持つほど航続距離は下がります。航続距離が風などの影響で奇跡的に足りて、ミッドウェーに戻れたとしても着陸は絶望的。つまり敵は捨て身の攻撃を仕掛けてきたというわけです。まぁこれも結局は可能性に過ぎませんが・・・。」


源田の説明に相槌をつきながら皆が聞きっている、実際源田の言う通りであり、説得力もあるため反論は出てこなかった。


「では司令、五航戦と六航戦を分離し、目標を敵機動部隊へ変更しては?」


草鹿がそう提案するが南雲は首を横に振る。


「いや、捨て身の攻撃であればこれは搭載した機体による総攻撃となっているだろう。発艦の為に甲板に係留していた機体を投棄してまで攻撃を行ってきた、であれば先の攻撃が全ての機体だったはずだ。艦載機を使い果たしたのであれば既に敵は真珠湾へと向かっているだろう・・・。敵の機動部隊との決戦は一旦はお預けだ。艦隊はこのままトラックへと撤退。それぞれ持ち場にもどれ。源田はパイロットに敵新型機の情報を聞くんだ。」


「はっ!」


南雲の言葉にその場にいる者が返事をすると、部屋から続々と退出し始める。

その頃には消火作業も終わり、艦隊は問題なく航行を続けていた。


アメリカの攻撃隊は結局ミッドウェーにたどり着いたのはF6Fが10機ほど、他は撃墜されたか途中で海面に不時着していた。

潜水艦やミッドウェーに残ったPBYによる救出作業が始まっていたが、全員の救出は不可能であった。

アメリカの司令部では敵空母2隻撃破の知らせが届いていた、当然多数の爆弾を命中させ艦両舷からも大規模な爆発が起きればパイロットも致命傷を与えたと誤認する。

アメリカ海軍では敵新型の大型空母2隻の状況は大破、復帰までは4ヶ月以上は必要だろうと判断された。

併せて無謀な攻撃を行った責任者であるフレッチャーは合理的判断を下し日本軍主力へ致命傷を与えたとし、処分どころか英断としてアメリカ国内でもニュースが流されていた。


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