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未来国家大日本帝国興亡史  作者: PATRION


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第四十五話 ミッドウェーを巡る戦い(1)

時間が経ち、南雲機動部隊はミッドウェー島西方2,500kmの地点まで到達、ミッドウェー島を彩雲による偵察圏内とした。

天候は穏やか、偵察隊長浦田和信少尉の操る彩雲はミッドウェー上空へと到達した。


「嶋崎ぃ、城山ぁ、これがミッドウェーだ!」


浦田は機体を左側に傾け、旋回に入る。

ミッドウェー島は二つの小島から成っており、飛行場を擁するイースタン島と飛行艇基地を擁するサンド島に分かれていた。

彩雲単機ではレーダーにかからなかったのか、飛行場滑走路では大慌てでパイロットが乗り込む姿も双眼鏡からは確認できていた。


「奴ら、大慌てでF4Fに乗り込み始めた。お前らがここに来る頃にはもういないっていうのに。」


そういいながら嶋崎は双眼鏡から見える情報を無線で艦隊に報告し始める。


「浦田機から慶鳳へ。浦田機ミッドウェー上空に到達。」


「―こちら慶鳳。嶋崎か、聞こえている。報告を頼む。」


「了解、イースタン島飛行場には単発機が多数、双発機が少数確認。B-17と思われる機影は確認できません。」


「―B-17が居ない?了解した、単発機の配備数はわかるか?」


「わかりません、想定より多いのは確実です。40や50の数ではありません、単発機にはF4Fと思われる機影が50ほど、SBDや未確認の複座機も数十機見えます。100機は居るのではと思いますが。サンド島には飛行艇が数機確認できます。」


「―了解、そのまま状況許すまで詳細を偵察するように。」


「了解。・・・浦田さん、一旦イースタン島の上でぐるぐるできますか、写真を撮りたいので。」


「わかった、まあ迎撃機もここにつくまでに5分か10分はかかるだろうし、逃げれば追いつかれはせんだろう。」


イースタン島から飛び立ったF4Fは必死に上昇を始めるが、その間にも悠々と浦田らは偵察を続行する。

写真をいくつも撮り、5分ほど滞空してからようやく対空砲が上がり始めた。

だが配備されている高射砲も片手で数えられるほどなのか、炸裂した場所はまったく遠く、彩雲には一切の影響がない。

F4Fがおおよそ1,000m下まで登って来てようやく浦田はスロットルを上げた。


「よし、もう十分だろう。ずらかるぞ。」


スロットルを上げると彩雲は一気に加速し、瞬時に500km/hを超える。

F4Fでは全力でも追従が難しい速度に一瞬で到達し、先まで迫ってきていた迎撃機は既にはるか後方であった。

浦田は機体をあえて南西に向け、艦隊から南方向へと進路を取る。

艦隊からミッドウェーまで2,500km、到達直前にてようやく増槽を投棄したため機内にはまだ燃料が満載されている。

ここから更にこの機体は3,500km程飛行可能、偽装進路を取ることも容易かった。

高度を落としながらミッドウェーを水平線に隠すと浦田は進路を北に戻し、帰路へとついた。



「射撃中止、射撃中止。」


すぐ横で鳴り響いていた高射砲の発砲音が止まる。

滑走路の脇から双眼鏡越しに上空を眺めていたハルゼーは、失笑していた。


「ついに来やがったな。」


その隣にはミッドウェー基地の総指揮官であるシリル・T・シマード大佐も同じく双眼鏡を覗きながら立っている、。


「さっきまでえっちらおっちらと登って行ったかと思えば一瞬にして置いていかれてやがる。F4Fはもう使いものにならないな。」


「恐らく日本の新型機でしょうか。ついにここまで敵が迫ってきたとは。」


日本の新型機、F4Fを一瞬で置き去りにしたそれは双眼鏡からもすぐに姿を消す。

双眼鏡をおろし、飛行場を見渡すと、以外にも全周に塹壕が掘られ、砲台も四方を見守るここは強固な要塞にも見えた。

塹壕のように掘られた穴に車体を隠したシャーマンも見える、戦車を破壊できる兵器が上陸してくるとは考えにくいし、3,000人いる兵力で意外と守れるのでは、という希望を抱いている指揮官もいる。

だがそれでも日本軍はここを落とすだろうという残念な確信がハルゼーにはあった。

海兵隊にはわからず、海軍にはわかること、それは陸と海では規模感が全く違うということであった。

70ミリクラスの砲を戦車に備えたのならそれはもう高威力高貫通の優秀な戦車である。

ドイツでは88ミリの高射砲を流用した主砲を搭載した戦車の情報も出ているようだが、それが最強と呼ばれているらしい。

だが洋上に浮かぶ兵器はどうだろうか、日本軍には46cmという規格外の大砲を積んだものまで現れていて、陸上のそれとは一切比較にならない破壊力を誇る。

それを大量に叩き込まれ続ければ、小島のひとつやふたつ消し去ってしまうだろう。


「シマード、悪いがここは日本軍によって破壊されるか、占領されるか、どちらかだ。生き残る術は、ない。少なくとも俺には一切思いつかん。」


ハルゼーの言葉にシマードも笑いながら言葉を返す。


「はは、そんなこと、みんなわかっていますよ。だけどそれでも守るのが兵士の義務です。海兵隊は最後の一人になるまでここを守り切りますよ。ですがハルゼー、あなたは少しでも危うくなったら早急に脱出をしてください。ここが落ちた後もジョンストンで、ジョンストンが落ちたのならばハワイで迎撃しなければなりませんから。」


「わかっている。だが、潜水艦で逃げるのはどうにも嫌気がな。飛行機ですぐハワイにでも行きたいところだが、こう日本軍の艦載機が飛んできたとなるとそれは出来ないだろうな。」


ハルゼーはそういうと踵を返し、司令部へと歩みを進める。

その視線の先にはPBYが洋上から緊急発進するところが見えるが、それを見てハルゼーはため息をこぼす。

ハルゼーにはPBYが今から飛び立ち、あの偵察機を追従して敵艦隊を突き止めるなど不可能にしか思えなかったのである。


その後司令部では作戦会議が開かれていた。

偵察機の到来は既に日本軍機動部隊がここミッドウェーのすぐちかくまでたどり着いていることの証明であった。

海図を卓上に広げ、将校たちがそれを囲んでいる。


「敵はすぐそこまで来ています。偵察機が到来してから30分後、PBYがようやく敵艦隊を発見しました、その艦隊の現在位置はミッドウェー西方約2,000km、進路を北東にむけ、この方向へ向かっています。空母は確認できず、新型の大型戦艦2隻、中型戦艦2隻を中軸とした打撃艦隊が速度22ノットで接近中。その後対空砲火でPBYは撃墜されたと思われます。各機索敵線の先端に到達する頃で、今から敵艦隊へ向けられる機体は先程緊急発進した一機のみです。それを今向かわせていますが、PBYでは到達まで6時間以上かかります。」


報告された敵艦隊の予測進路はミッドウェーの北300kmほどの地点を目指して直進を続けているようであった。

右手にはミッドウェーに配属されている機体リストがある。


「空母は発見できず、が確実にその後ろにいるな・・・。おそらくその部隊は前衛部隊も兼ねているのだろう。航空隊全機対艦装備にて準備、一度にすべてをかける、良いな?」


「F4F、F2Aは常に発進できるよう準備、翌朝から常に直掩12機を上空に留まらせます。偵察隊は明日から当該艦隊に集中、後方に対しても偵察をかけます。敵艦隊の動向を徹底的に確認し、先手は取れずとも対処は万全にできるように。」


ハルゼーは頷く。


「わかった。・・・敵は強大、ここは完膚なきまで叩かれる可能性だって大いにある。だが空母と違って沈むこともない!最後の1機が飛び立てなくなるまで延々と繰り出し続け、敵艦隊に少しでも損害を出す、明日から航空隊は正直に言えば死ぬまで休めないだろう。酒も好きなだけ飲ませてやれ。そして今更多方向に索敵を撒く余裕はない、敵艦隊を常に監視できるよう、偵察隊は敵の予測進路へ集中投入!」


「はっ。」


地図を眺めるハルゼーら、発見したのは山本艦隊であるが主目標である南雲機動部隊も後続へ続いていると考えていた。それは過ちであったが、それにハルゼーらが気がつくのはまだ後の話である。

だがその勘違いなどこの後の結果に比べれば些細な問題でしかなかった。


ご閲覧いただき誠にありがとうございます。

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