02話 城壁の外へ。
城の廊下。
ストラス=ノーツの姫『エメナ=ノーツ』が廊下を歩いていた。
その少し先の突き当りを左に曲がった所で、会話をしているメイドが3人居た。
メイド1『メア=ソーナ』「ねぇねぇ!今日召喚がされるらしいわよ!」
メイド2『ウイ=サーハ』「それって本当なの?」
メイド3『メイ=ナーノ』「さっき私見たわ!アーク様が知らない男の人と歩いていたのを!きっと彼が召喚された人なのよ!」
3人のメイドの名前は仮名です。(後で変更する可能性があります。)
この会話を姫は陰から聞いていた。
姫「召喚をしたの?本当に!?まさか、お父様に聞きに行かないと!」
彼女は召喚を行う事について詳しく知らなかった、メイド達の会話を聞き事実確認の為に王のいる書斎へと走って向かう。
姫がメイド達の会話を聞く少し前、
王の書斎にて。(前回の続き)
そこでは、王様とその騎士、そして召喚された男が会話をしていた。
アスト王「そうか、ソウセイ=リュウキと言うのだな。回答はじっくり考えてからで良いからな!リュウキ君自身のことなのだから。」
竜輝「分かりました。それでは、また後でよろしくお願いします。失礼します。」
カチャ、と扉を開けた。
そして、彼と騎士『ディアン=アーク』の2人は王の書斎を出た。
この2人は歩き、城の出入り口へと向かいながら少し会話をする。
騎士のアークが、彼の名前の事が気になり尋ねる。
アーク「君の名前について聞きたいんだが、性がリュウキで名前がソウセイであっているか?」
竜輝「違います。蒼星が性で名前が竜輝です。」
アーク「そうなのか!それはしつれいした。」
竜輝「いえ!大丈夫ですから!それより、なぜそれを確認するんですか?」
アークが言うには、この国では基本的に名が先で性が後なのがほとんどらしい。だが他国でそれが逆であるところがあり、念のため確認したとのこと。
「そうなんですね!ところで、その他国ってどこですか?」と、竜輝は気になり聞いた。
その国とはこの国から北東にありる人間の国で、名は『サネッジ=ノール』であり、人間の国は『ストラス=ノーツ』と、その『サネッジ=ノール』の2つのみであるとのこと。
そこでは、彼と同じ様な名前の付け方が多く、さらに名前は基本的に漢字であるらしい。
彼は漢字という単語を聞き、気になり尋ねた。
「すみません、漢字ってこんな字ですか?」と、竜輝は着ていた服のタグを見せて聞いた。
「これは、服の情報が書かれているんですね。なるほど、この世界とソウセイ君の世界は文字や言語が同様の様ですね。」少し関心しながらアークはそう言った。
アークが言うには、この世界の言語体系は元々『イグラン』(英語の事)が使われていたが、それはいつしか使われなり、出来たのが『共通語』と呼ばれるこの会話にも使っているこの言語らしい。
※会話文は解りやすい様にひらがなも使っています。
この言語は、漢字と仮名字で構成されているとのこと。
どうやら『ひらがな』は無いようだが、それ以外は日本語と同じ様であった。
異世界なのにも関わらず彼が言葉を理解できていたのはその為である。
イグランは現在、言語としてはほとんど使われていないが、一部の単語やアルファベットだけは使われているとのこと。
「そうだったんですね!通りで異世界なのに話している言葉や意味が分かる訳だ。」彼はうなずきながらそう納得していた。
そして、「ところで、お腹は減っているか?」とアークはそう聞いた。
竜輝「はい!実は、夕食を食べる前にここに来たのでお腹ペコペコだったんです。」
アーク「街を観に行くついでに食事をするか!おすすめの店があるんだ。良かったら一緒に行かないか?」
竜輝「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます!」
こうして食事をすることが決まった。
だが、彼は少しモジモジしていた。
竜輝「すみません、あの、その前にお手洗いに行きたいのですが、」彼は催していた。
「あぁ、トイレか。トイレなら少し戻った所の右に行ったらあるよ!私はここで待っているから行って来ていいよ!」と、アークは指差しで教えてくれた。
「ありがとうございます!」と伝えて彼は、「(心の声)トイレって言葉あるのか、本当に日本語と同じなんだな。」と思いながらトイレへ向かい走った。
トイレにて
トイレの出入り口には、ピクトグラムと同じマークがあり、中は学校のトイレのように個室がいくつかと小便器もあった。
トイレ自体は、洋式で一昔前のウォシュレットが無いものとほとんど同じであった。
「へぇ~、異世界なのにトイレの形状は変わらないんだな。」彼はそう思いながら使用した。
そして、トイレットペーパーもかなりしっかりしていおり、元の世界と遜色無く良い物であった。
「蛇口だけど、この手洗い場かなりしっかりしているな。かなり清潔だ、掃除が行き届いているなぁ。」彼はこの城の清潔さに驚いていた。
そして、トイレを見てこの世界は、かなりしっかりと水道が通っているのだと彼は思った。
タッタッタッタッ、誰かが廊下を走っていた。
ゴシゴシゴシ、
彼は手を洗い持っていたハンカチで手を拭きながらトイレを出る所であった。
その目の前を、彼から見て右から女の人が通り過ぎた。
彼女の外見は、髪は表面がピンクでインナーカラーが金色で長さが肩より少し長いくらいであり、服装は水色のワンピースの様なので、スカートの丈は膝下程。
その容姿は、顔立ちが整っており可愛い系でフローラルの様ないい匂いがした。
その彼女は走り去り、廊下の交差部分を右に曲がった。
彼はその彼女を追いかけ、彼女が王の書斎へ入ったのを確認した。
バッタン!!!書斎の扉は大きい音を出し閉められた。
竜輝は待っている騎士のアークの所に戻り、彼女の事を尋ねた。
竜輝「アークさん!さっき王の書斎に入って行った女の人は誰ですか?」
アーク「あぁ、あの方は、アスト王の娘さんの『エメナ=ノーツ』様です。」
竜輝「そうなんですね!とことで、なぜ彼女は走っていたんですか?今日は何かあるんですか?」彼は、首を傾げながら彼女が走っていた理由が少し気になりアークへ聞いた。
「多分だが、ソウセイ君。君についての確認だと思う。」アークは目をそらしながら、そう答えた。
「え?どういうことですか?」竜輝は少し困惑しながら聞いた。
アークが言うには、召喚のことは未発表であり、姫様にも知らせられていないらしいが、召喚の事がなぜか噂となっているらしい。
王に謁見をする前の廊下を歩いていた時に、彼は下を向き考え事をしながら歩いていたから気付いていなかったが、アークと彼が歩いていた時に1人のメイドとすれ違っていたらしい。
そのメイドが姫様に話してしまい、そのことをアスト王に確認をしようと走っていたのではないかと言う。
「えーと、召喚のことって発表されてないんですか?」竜輝は首を傾げ尋ねた。
アーク「実はそうなんだ。このことは、各国の王とその仕えている一部の者にしか基本的に知らされていない。」
竜輝「なぜ発表をしていないんですか?」そう尋ねたところ、
発表をしていない理由は、召喚された者が勇者になる事が確定していない為だと言う。
竜輝「確定していないって、どういうことですか?」
「勇者になるかどうかは、その召喚された人自身が決めることだ。召喚された人にも、どう生きるか決める権利はあるからだ。」アークはそう話した。
今回の召喚でもし勇者になるのを断る場合は、召喚した国がその召喚された者に対して生活の保証をする事になっているらしい。
「その場合って、また別で新たに召喚すんですか?」竜輝はそう聞いたが、どうやらそれは出来ないとのこと。
異世界からの召喚は、1人しか出来ないらしい。
最初の勇者が召喚された当時、更なる戦力として召喚を試みられていたが、最初の召喚以外全てが失敗しているらしく、召喚は出来てもすぐに灰になり消滅してしまったとのこと。
そのことから異世界召喚でこの世界に存在出来るのは、1人だけだと結論付けられており、新たに召喚する場合は、その召喚した者が死亡をした後に行うとしているとのこと。
「そうなのか、もし僕が勇者を断った場合って、」竜輝はそう聞くと、
「その場合は、先ほど伝えた通り、最大限生活などの援助をこちらで行います。」と、アークは答える。
「そうなんですね!まぁ、勇者の件は受けようと思っているんで。」と、真剣な顔で竜輝は言葉を返した。
「本当ですか!」アークは少し驚きながらそう反応した。そして、「ですが、お伝えしていないことがあります。気付いていると思うんですが、実は。」と、アークはとある事について話す。
王の書斎
少し時は戻る。
王の娘のエメナ=ノーツがアスト王の元へ駆けつけた。
「お父様!召喚をしたのは本当ですか!」ッバン!?エメナはアスト王の向かっている机を思いっ切り両手の手のひらで叩きそう言った。
「うわ!!びっくりしたじゃないか!」アスト王は驚き椅子の背もたれに寄りかかってそう言い、
そして「召喚の事がどうしたんだ?」と、座り直し腕を組んで言った。
「どうもこうも!噂では知っていましたが、メイド達がディアンと知らない男が歩いていたのを見たって話してたのを聞いたの!その人は召喚された人なの?!本当に召喚をしたの?!」エメナは少し声を荒げながら言った。
「あぁ、そうだ。召喚をした、彼が召喚された人だ。彼の事は後で私から伝えようと思っていたが、メイド達から聞いてしまったか。」と、王は少し俯きながらそう言った。
そしてアスト王はエメナの方に向き直し顔を見て、「だが、」と話しを始める。
召喚自体は召喚された者に対して『ストラス=ノーツ』側で(アスト王が)対応をする事を条件に各国の王に了承を得ており、その者が勇者となる事を承諾した場合、各国間で勇者の手助けをする事になっているという事を話した。
そのことを聞いたエメナは、とある事について反論した。
「それは分かりました。ですが、その彼にあの事は伝えたましたか?」彼女は手を広げて言った。
アスト王は首を傾げ聞く、「あのこと?」
ッバン!!!エメナ姫は再びアスト王の向かっている机を思いっ切り叩き言う。
「召喚は出来ても元の世界に帰せないってことをです!!!」と、声を上げ言った。
|廊下を歩く2人に戻る。
アークが書斎で王に姫が言っていた事を竜輝へ伝える。
「召喚は出来ても、元の世界に帰る事は出来ないんだ。だから、勇者になって魔王を倒したとしても帰る事は出来ないだ。勝手に召喚しておいてだが、本当にすまない。」アークは頭を下げながらそう言った。
それを聞いた彼は驚きはしなかった、アークが言っていた通り気付いていたからだ。
まず彼は冷静にアークの顔を見て「そのことは会話から予想できましたよ。」と低い声で言い、「新たに召喚する場合で、死亡の条件がある辺りそうなんだろうと。」少し顔を引きつらせ目をそらしながら言った。
「確かにそう言いましたね。」アークは顔を上げそう言い、「やっぱり、元の世界に帰りたいですよね。」と、申し訳なさそうにそう言葉を返す。
竜輝は、自身が思っている事を伝える。
自身は元の世界では、孤児である事。
そして、もうすぐ就職して自身の居た孤児院を出る事になっていた事。
正直、異世界に召喚されたことで面倒と思っていた就職活動をしなくてよくなったので感謝している事。
さらに、元の世界では考えられない事を経験出来ると少しワクワクしていると言う事を伝えた。
その回答にアークは、「なるほど。でも、元の世界に未練とかはないのか?」と、聞いた。
彼は、「無いと言えば嘘になります。だけど、この世界には僕を必要としてくれている人がいるんですよね?何者かに成れるかも知れないチャンスを貰ったんです、それを捨てるのは勿体ないです。それに、勇者って響きかっこいいじゃないですか!とにかく、一度やってみます!ダメだった時はその時です、その時はすみません。」そう笑顔で言った。
その発言を聞きながらアークは、この人はかなり前向きな人なのだと思った。
そして同時になぜだか分からないが、この人なら魔王を倒せるのかもと思えた。
「ありがとう。」アークはそう呟いた。
「そんなことより!お腹すきました!早くご飯食べに行きましょう!」竜輝はそう言った。
「確かにそうだな!城の出入り口はすぐそこだ。」アークはそう言い、アークと竜輝は城の扉を開けて城の中庭へと出た。
城の中庭
空は一面の星空で、美しい満月が出ている。
中庭は中央に道があり、その道幅は約10m程で城の外にでる門までは100m程ある。
その道の左右には、かなり大きめの美しい庭園がある。
そしてこの道には一定間隔で5m程の街灯が立っており、道はその外灯に照らされている。
その外灯は火で照らしている感じではなく、LEDの様な白い光で照らしていた。
二人はこの道を歩きながら、また会話をする。
竜輝は外灯の光を見ながら呟いた、「この外灯って、どうなっているんだろう?」と。
それを聞き「外灯?君の世界にはないのか?」と、アークは尋ねた。
「いえ、僕の世界にもあります。ですが、」と、彼の見ていた外灯は光っている部分が電球や蛍光灯の様に見えず、金属が光を放っている様に見えて気になったのだと伝えた。
それについてアークは、「電球?蛍光灯?それは分からないが、あの外灯は、」と説明をしてくれた。
アークが言うには、この世界の外灯や照明は基本的に魔鉱石と呼ばれる魔力という力を持つ鉱石を加工して、それに光属性の魔法を付与することで作られており、これは辺りが暗くなると光を放つ様になっているとのこと。
それ以外にも、この世界のあらゆる事にその魔鉱石という物は使われているらしい。
「なるほど、そうなんですね。」と、竜輝は言葉を返し、「ところで、思っていましたがやっぱり魔法ってあるんですね。」と、右手で頭を触りながら言った。
「あぁ、魔法はある。そのことも後で教える。」そうアークは答えた。
そんなこんなで、城の出入り口の門に二人は着いた。
城の門の前
門の大きさは、高さが約5m程で両開きであった。
「アークさん、ここを開けて出るんですか?」と、竜輝は大きな門の扉を見ながら聞いた。
アーク「いや、この門は馬車や来客の出入りの時にしか基本的に使わないよ。」と言い、今回は使わないとのこと。
今回は門を内から見て左にある扉からするとのこと。
その事を聞きその扉に竜輝は向かう。
「ソウセイ君、少し待っていてくれ。」そう言いアークは竜輝を引き留めた。
そして、アークは身に着けていた鎧を外し始めた。
彼の装着していた鎧は、上半身が胸と背中と両肩を動く際の干渉が少ない様に覆われている物で、腕は前腕を覆うようになっていて、足は脛を覆うようになっている物だ。
それは簡単に取り外せそうに見えないが、アークはそれを簡単に外していた。
竜輝はそれを目が点となり、「う~ん、それってそんなに簡単に取り外せるの?良く分からん。まるでヒーローが付けている装備を外すかの様だ。」などを考えながら見ていた。
アークはまず、正面の胸の方に付いている装甲をガッバと外して、背中に手を回し背中の装甲も取り外した。
背中の装甲は、両肩の装甲と一体化している。
いずれの装甲も自動的に折り畳まれて、半分くらいに小さくなった。
「ディメンションストレージ」アークはそう唱え、装甲を持った状態でまるで何かにそれを入れるような動作で手を前に突き出すとアークの手は見えなくなり、手を元の位置に戻すと持っていた鎧が無くなっていた。
竜輝はその状況を見て「え?手品?なんだ?えーと。」と、少し混乱していた。
アークは残りの手足の装甲も同様に同じ動作を行い、最後の装甲でその動作を行った後には手に鍵を持っていた。
装備を取り外した彼の服装は、水色の長袖シャツに黒の長ズボンであった。
それを終えたアークに「あの、今何をしたんですか?」と、竜輝は尋ねた。
アークが言うには、先ほど行った事は街に出る為に邪魔だから着ていた鎧を外して、それを『ディメンションストレージ』と言う異次元に物を収納できる『スキル』と呼ばれる特殊能力でそれを収納したとのこと。
正直知らない言葉が色々出て来てまだ彼は理解が追い付いていなかった。
そんな彼に「急に言われても分からないよな、このことは追々詳しく説明する。もう夜も遅いから、店が閉まる前に早く行こうか!」と、アークは言った。
竜輝はそれに「あぁ、はい!分かりました。」と、答えた。
そしてアークは、扉の中へ入り彼に案内をする。
扉を開けると中は暗かったが、中にあった照明がすぐに点灯して中が明るくなった。
その中は左に城壁への上り下りに使われると思われる階段があり、開けた扉の正面にさらに扉があった。
アークはその扉の前に立ち、手に持っていた鍵で扉を開けた。
「さぁ、ここを出てたら街だ!」アークはそう言い、扉の外へと出た。
それに着いていくように竜輝も城壁の外へと出た。
その先には、城を囲う様にある水路に立派な石橋が掛けられていて、
そこを渡った先には、点々と立つ外灯に照らされる中世ヨーロッパ風の『ザ・異世界』の様な街々があった。
この後2人は、アークの行きつけの飲み屋へ行く。
続く...
不足情報
書き加えるの面倒なので後書きに書きます。
アークの目の色、右が赤で左が水色のオッドアイです。
王と姫の目の色は二人とも水色です、姫の髪はつやつやでサラサラです。
王の書斎は1階で、裏庭が見れる様になっています。
以上。