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再婚
君がため 惜しからざりし命さへ 長くもがなと思ひけるかな
【あなたのためだったら、命は惜しくないと思っていた。けど、今となってはあなたと一日でも長く、いつまでも一緒にいたいと思うようになったのです。】
雅美への想いは溢れていた。それが俺だった。
俺は雅美と結婚して子どもも授かった。
女の子二人の父になったのだ。
幸せだ。
愛する女性と暮らせる幸せを感じている。
別の街に二人で暮らし、俺は小さな店の板前になった。
裕福ではなかったけれども幸せだった。
ただ、両親とは縁を切られたままだった。
子ども達に祖父母が居ないのは可哀想だと思った。
そう思ったが連絡は出来なかった。
その勇気が無かった。
雅美も姉である和子とは疎遠になってしまった。
たった二人っきりの家族だったのに……申し訳ないと思う反面、選んだ道だから仕方ないと思って欲しいと思っていた。
雅美も分かってくれている。
俺は和子を不幸にして今の幸せを得た。
そのことだけは忘れないでおこうと雅美と誓い合った。