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短編集

悲劇のヒロイン症候群

作者: 枇榔

 一見不幸せなことも、自分にとっては不幸中の幸いで、自分が一番不幸だとどん底に堕ちるようなことも、他人からしたら鼻で笑えるくらいのもので、そんなことが今の今まで続いて「生きている」ことは、奇跡だと思う。だから、何の変哲もなくただただ過ぎていく日常に嫌気が差すだなんて、バチが当たってもおかしくはないんだろう。


 何の不自由もなく、自分のしたいように生きている人間なんて、この世にはいないのだから、それが定めなのだから、どうにかこうにかやっていくしかないのは分かりきっていて、それでも、自分に不利なことがあったり起こったりすると、口から出る言葉は反吐のように汚い。だからいつも悲しくて、悔しくて、少しだけ愉しくて。そういうことでしか繋がれない人間関係を俯瞰的に見ては、馬鹿馬鹿しくなって。疑心暗鬼になるほど、距離の取り方に臆病になっていく。


 自分にとって大切なものや譲れないものがブレなければ、判断に迷うこともないんだろう。「嫌われたくない人間」でありたいから、簡単にブレる。そんな完璧な人間、いないのにね。


 ―――そう分かっている、はずなのに。


 今この瞬間の自分の状況が、最上級に「つらい」と思ってしまう。


 誰一人、自分の味方じゃない、誰も彼もが、自分の敵だと思ってしまう。


 スポットライトを当てられた、「悲劇のヒロイン」。それは私。嗚呼!どうして私ばかりこんなに酷い目に遭わなきゃいけないの!


 その時に一番欲しい慰めの言葉がもらえないと、また更に堕ちていく。誰からでもいいかと言えばそうではない。なんて我儘。被害妄想を膨らませるのが大得意。周りの目が気になって仕方ない。自分が本当は何がしたいのかわからないだけの、中身が空っぽ人間。なんて幼稚。それで何が悪いの?と開き直れるほど強くもない。とどのつまり、「どうしようもなく面倒くさい」人間、それが私。


 「出来る女」でいることは、頼られる悦を味わえるからよかった。でも、自分より上がいることを知ったり、頼られることが面倒くさくなってきたりすると、「出来ない女」を演じるようになった。本当は出来るけど、任されるのは嫌。ただ、「使えない」分類にされるのも嫌で、ちょいちょい出しゃばるけど空回り。気を遣いすぎて気疲れ。負のスパイラル。


 一人にさせて!放っといて!でも本当は、寄り添って欲しい。そんな思いを、汲んで欲しい。


 悲劇のヒロイン症候群。それは、急に現れて、急に身を隠す、完治の知らない私だけの病。

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