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比較的最近更新した短編のまとめ場所

HP10の貴族令嬢はひ弱すぎるので、幼馴染に守ってもらわなければならない

作者: リィズ・ブランディシュカ



 その貴族令嬢ピーネはひ弱だった。


 なぜなら、ライフポイントが10しかないからだ。


 そのため、誰かに守ってもらわないと生きられなかった。


「きっとこんな弱い私はいつか死んでしまうんだわ。だってライフが10しかないんだもの。ねえ、あなたもそう思うでしょ?」

「そんな事ない。仮にそうだとしても、精いっぱい生きた証はどこかに残るんだ。誰かの記憶に残るんだから。それに、いつか死ぬなんて言葉で、楽しめるはずの今日を楽しまないのは損だよ」


 同じ年ごろの男の子はそういうが、ピーネは納得できない。


 ピーネは雑魚魔物のスライムよりも弱かった。


 攻撃力5のスライムに2回攻撃されたら死んでしまうほどに。


 けれどその代わりに、怪我を治す特殊能力があったため、回復をかけ続ける限り死ぬ事はなかったのが幸いな事だったが。







 そんなピーネを気遣うのは、同じ年頃の男の子バース。


 彼は平民だったが、ピーネの大切な友人だった。


 バースはピーネを守るために、体を鍛え、剣士の学校へ行き、剣士になった。







 なぜなら、その世界は魔物が多くて、人の生活圏内にも頻繁に出没していたからだ。


 普通に道を歩いていても、雑魚魔物とは頻繁に出くわしてしまうため、成長して剣士になったバースはピーネがいる町をしっかりと守ろうと思い、剣の腕をみがいて頑張った。


 しかし、状況は悪化する。


 世界の再果てに封印されていた魔王が復活して、魔物の動きが活性化したからだ。


「ああ、これから一体世界はどうなってしまうんだ」

「この間、うちの畑にも魔物が出たんだ」

「子供を外に出せないわね」


 どこもかしこも、魔物の脅威におびえる日々が続いた。








 そんな中、大規模な魔物のスタンピートが発生。


 ピーネのいる町は、逃げ出す事もできずに、あっというまに魔物の群れに包囲されてしまった。


「これまでにない規模のスタンピートだ」

「俺たちの町なんてきっと、あっという間に蹂躙されてしまう」

「応援の要請は出したが、間に合うだろうか」


 籠城戦が続いたのは、最初の一週間だけ、魔物の侵入を許すようになった後は、あっという間に町の人々が息絶えていった。


 一か八か、避難しようとする者達もいたが、それはかなわなかった。


 街中を堂々と徘徊する魔物たちは我が物顔。


 シェルターを用意できた者達だけは、まだ生存していた。





 そんな中、ピーネがいる貴族屋敷にもその脅威がせまる。


 ピーネはシェルターには入らず、貴族として平民たちを非難させたり、守ったりしていた。


 だから、魔物たちに狙われるのは自然な事だった。


 多くの市民たちをかくまっている屋敷に、魔物の群れがとうとう入り込む。使用人や護衛たちはピーネたちを守ろうとしたが、まるで歯が立たなかった。


 群れを成し、魔王の影響を受けた魔物達には、ちょっとやそっとの抵抗は意味をもたなかったのだ。






 多数の犠牲者を作り出した魔物の群れは、屋敷の奥へ。


 資料庫で、大昔の記録をーー地下の避難経路を調べていたピーネたちの元へとたどり着く。


 ピーネの父が倒れ、母が倒れ、最後にピーネも魔物の牙にかかる。


 そのはずだったが。


「間に合った。遅くなってごめん」

「大丈夫、信じていたわ。あなたが来てくれる事を」


 その寸前で、バースがやってきてピーネを背にかばった。


 状況は絶望的で、街から脱出する事もままならない。


 それでもこれから生き残るとしても、死ぬとしても、この過酷な状況で共に在れる事が二人にとっての幸いだった。


 バースがピーネをかばい。


 ピーネがバースの怪我を治す。


 二人は、互いを守りながら、脅威に立ち向かい続ける。


 そして、永遠とも言える長い時間を耐え切った二人は、生き残った。


 隣町からの援軍がやってきて、魔物を掃討したからだ。








 生き延びた二人はその後、数年後に結婚し、新しい家庭を築いた。


 苛酷なその世界では、今日生きていた者が明日死んでいる事は珍しくない。


 人より死にやすいピーネの前には、さらに険しい道が待っているだろう。


 それでも二人は、いつか訪れる死を恐れて、つないだ手をはなすような事はしなかった。


「バースの言った通りね。私は人より死ぬ可能性が高いけど、今とても幸せで、生きていて良かったと思っているわ」

「それならよかった。俺も、剣士だからいつか死ぬかもしれないけど、君と一緒にいられるなら、いつも幸せですごく満ち足りてるよ」



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