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5 エレナはお茶会の招待客か否か

 シーワード公爵領に、イスファーン王国の使者として、王女様御一行がいらっしゃる。

 そのためレセプションパーティーがシーワード公爵領にあるお屋敷で開かれる。

 という事で、お茶会と夜会について説明があるからと、学園内に置かれている殿下の執務室に呼び出された。


 お兄様と一緒に執務室に通されると、すでに殿下とランス様の他に、コーデリア様とダスティン様がいらっしゃる。


「ごきげんよう、コーデリア様。イスファーン王国の王女様とのお茶会にお招きいただきありがとうございます」


 私がお茶会嫌いで、今回も渋っているのが耳に入っていらっしゃるのか、コーデリア様は人差し指を顎に当てて小首を傾げると、私の事をじっと見つめる。


 殿下がこの国一番のイケメンだとしたら、コーデリア様がこの国一番の美女だと思う。


 窓から差し込む光を浴びてキラキラと輝くシルバーブロンドに、瞬きすると風が起きるんじゃないかと思うくらいに長くてフサフサなまつ毛。

 ぱっちりとした目、すっと通った鼻筋、それに薄紅色の唇が綺麗に配置されている。

 殿下と結婚するのを多くの人たちが望んでいたのが、よーく分かるお似合いの美男美女だ。


「エレナ。お招き頂いたのではないよ。外交上私が公務の一環として出向かなくてはいけない。エレナはそれに付きそうのだよ。招待客として振る舞うのと、公務の付き添いとして振る舞うのでは求められる役割が異なる。いいかい。物事の本質を見極めなくてはいけない」

「あ。はい」


 殿下に窘められて、慌てて相槌を打つ。


「あら! 貴方は公務かもしれませんけど、茶会に参加しても、お一人じゃ周りの人間に不快感を与える振る舞いしかできない、我が国のお可哀想な王太子殿下のために、エリオット様とエレナ様をご招待しているのだわ。貴方がイスファーン王国の王女殿下と如才なくお話しして公務を全うできるのでいらしたら、エレナ様も参加したくもないお茶会に出なくてすみましてよ?」

「おや、私の公務での振る舞いに対する批判をしたいのかな? 公女としての立場での意見かい? それ相当の覚悟だろうか?」

「民意を代弁してるだけですわ」

「民意ね。まぁよい。イスファーンの王女がこちらの言葉があまり得意ではないからと、イスファーン語が話せるエリオットとエレナに王女の案内人を任せる意味もある。私のために招いたなどとでっち上げられては困るな」


 昼間は暑くなってきたというのに、室内に寒風が吹き荒ぶように錯覚する。

 お似合いの美男美女なんだけど多分似たもの同士すぎて、ギスギスしている。

 同族嫌悪ってやつなんだと思う……


 少女漫画だと王子様相手に一歩も引かないなんて「ふ。おもしれぇ女」みたいに恋が始まるかもしれない。

 けれど、この世界はコーデリア様がヒロインの少女漫画の世界ではなさそうなので恋が起きる気配は一切ない。


「あら。ご案内されるのなら、外交のお仕事を目指されているエリオット様お一人でよろしいんではないかしら? わざわざエレナ様まで公務に呼び立てる必要がございまして? エレナ様は私の招待客ですわ」

「公務で参加する私の婚約者として参加するのだ。来賓があった場合は配偶者や婚約者を伴うのが常なのだから、エレナは招待客ではない」


 殿下とコーデリア様はお互いに一歩も引かないけれど、私にしたら招待客だろうが公務だろうが大嫌いなお茶会に参加する羽目になったことは変わらない……

 

 執務室内で人の目を気にしなくていいからか、言いたいことをお互いに言い合っていて空気がピリピリする。


 私とお兄様はこの部屋から退出するチャンスを狙っているのに、私たちにお茶の給仕を終えたウェードが門番よろしく扉の前に佇んで出られない様にしている。


 そうよね。呼ばれたのになんの話も聞いていないから帰ったらマズイ。


 ……しょうがない。

 殿下とコーデリア様の足の引っ張り合いをもう少しの間見守らなくちゃ。


 私はため息をついた。

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