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36 エレナとツンデレ公爵令嬢と誓いのイヤリング

 午後の講義が終わり、わたしはコーデリア様からお預かりしたイヤリングを持ち、王立学園(アカデミー)内の殿下の執務室に向かう。

 最近は夕方遅くまで殿下やお兄様達は話し合いをされている事が多いので、きっといらっしゃるはず。


「ご機嫌ようウェード。殿下とお兄様はいらして?」


 愛想よく執務室の前にいる殿下の侍従のウェードに声をかける。


「申し訳ございませんが、この部屋に誰がいらっしゃるかは機密事項でございます。お答えをする事はできません」


 ウェードはわたしを一瞥してピシャリと言い放った。


 堅物のウェードは、残念ながらあまりエレナの事をよく思っていないように思う。

 エレナの事自体というより、エレナが婚約者である事をよく思っていないというのが多分正しい。


 エレナは社交界デビュー前で、かつ、お妃教育を受けていないという事を差し引いたとしても、まだまだ子供っぽい。

 今日だって、約束もないのに殿下達の話し合いの邪魔をしに来ている、我儘なお嬢様にしか思えない振る舞いをしている。


 まぁわたしがそんな行動をしているんだけど。


 そりゃ、殿下の婚約者にはちっともふさわしくないと思われてても仕方ない。

 

 それにね、王立学園(アカデミー)に通い出して周りのご令嬢達が大人っぽくて驚いた。

 エレナの見た目は可愛いけど幼い。

 スタイルだっていいんだけど、いかんせん背が低いため子供にしか見えない。

 なんならケープのついた制服は、エレナの胸の大きさが災いして小太りに見える。

 なんだかそんな中身も見た目も幼いエレナと婚約する事になった殿下が、可哀想に思えてくる。

 エレナに肩入れしているわたしがそう思うくらいだから、殿下が幼少のみぎりから仕えているウェードにしたら、殿下が不憫で仕方ないんだろうな。


「じゃあ、殿下にお会いできるように取り計らって! ウェードならできるでしょ?」

「申し訳ございません。できかねます」

「なぜ? 未来の王妃の命令よ!」

「未来の王妃になるおつもりがあるのであれば、今からそのような振る舞いは、お控えなさった方が賢明ですよ」


 わざと大きめの声でウェードに注意を受けるような言い回しを選ぶ。


 ますますウェードによく思われない事は分かっている。

 悪役令嬢の道まっしぐらな気もするけれど、ツンデレ美女に頼られてしまったら助けてあげないわけにはいかない。

 こうやって騒いでいれば、きっとお兄様か殿下が気がついてくださる。


 ガチャリとノブを回す音が聞こえ、そっとドアが開く。

 呆れた顔のお兄様と目が合う。


「やっぱり……」

「よかった! やっぱりお兄様いらっしゃったのね! 殿下はいらっしゃるかしら? わたし、皆様にお話ししたい事があってね、」

「おしゃべりが過ぎるよレディ」


 お兄様は人差し指をわたしの唇に押し付け、わたしが話を続けようとするのを黙らせる。


 お兄様の指で口を塞がれたわたしは、仕方なく上目遣いでじっと見つめる。

 お兄様は観念したような顔でわたしの代わりにウェードに頭を下げ、部屋に招き入れてくれた。


「可愛いらしい小鳥のさえずりが聞こえたと思ったら、やっぱりエレナ嬢だったのだね。何か御用かな?」


 部屋に入ると、殿下から甘いけれど心にも思ってもないような言葉をかけられ、気まずくて赤面する。


「お話し合いで忙しいのに申し訳ございません!」


 とにかくお詫びをして周りを見渡すと、いつもの面々がいらっしゃる。


 微笑んでいるのは殿下だけで、呆れ顔のお兄様に、蔑むようなオーウェン様の顔。それに相変わらず無表情なランス様、そして今日の目的であるダスティン様は訝しげな顔をしている。


「あの。ダスティン様に伺いたい事があるのですが」

「え。ダスティンに? 僕か殿下に用があるんじゃないの?」


 お兄様が驚きの声をあげたけれど、多分他の皆も内心驚いているに違いない。

 殿下の微笑みが少しだけ引き攣ったのが見えた。

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