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24 エレナと魔法少女

 王立学園(アカデミー)での講義が終わり、わたしを講堂まで迎えに来てくれたお兄様と馬車に乗り込む。


「ごめんね、エレナ」


 お兄様が隣に座ってわたしの手を握る。わたしのことを見つめる緑色の瞳は潤んでいて、今にも泣き出しそう。

 悲壮感漂うイケメン……いい。


「お兄様、どうなさったの?」


 お兄様が泣くのを堪えていることに萌えている。なんてことを悟られない様に、優しく声をかける。


「僕がエレナの事守るだなんて言ってたくせに、コーデリア様とお話する時に何も助けてあげられなかった。怖かったでしょ」

「……?」

「ほら、コーデリア様って綺麗だけど何考えてるかわかんないし。エレナの話ずーっと値踏みするような顔して聞いて、結局、エレナの話は無視した挙句、いじめられるの我慢しろとか言い出すしさ。助けてあげたかったんだけど、何もできなくてごめんね」

「えっと、あの……ご挨拶だけのつもりだったのに、わたしが思いつきであんなに長々と話してしまって……せっかくお兄様や殿下にご用意いただいた場をめちゃくちゃにしてしまって。わたしの方が謝らなくちゃ」


 どう考えても、あの場の不穏な空気は、わたしの暴走が原因なのに、自分が助ける事が出来なかったと心を痛めている優しいお兄様のために、反省した素振りをみせる。


「コーデリア様の雰囲気に飲まれて、エレナが暴走してめちゃくちゃにすることなんて想像つくのに、本当にごめん。最近コーデリア様とお話する機会もなかったから、ついうっかり殿下と僕がいれば挨拶くらい大丈夫かな。なんて思っちゃったんだ。殿下なんかに任せないで、僕がちゃんと準備すればよかったんだ」


 あ、流石にお兄様でもわたしが暴走して場の空気を悪くしたって思っているのか。


 ……待って。

 お兄様はエレナ贔屓だから、自分が不甲斐ないと責めてるけど……

 殿下は、せっかく作った挨拶の場で、ズカズカと他人の領地の実情に踏み込んで勝手に同情して、その挙句なんの解決策もなく、殿下に頼れと放り投げられてどう思ったかしら……


「どっどうしようお兄様! わたし、殿下のこと怒らせてしまったかしら!」

「大丈夫だよ。殿下は怒るとかそう言う人間らしい感情はないもん。きっとコーデリア様に奪われた優位な立場を取り返すことしか考えてないから、エレナは心配しないで平気だよ」


 さっきからお兄様ったら、殿下がいないのをいいことにすごい事を言う。

 友達だからの軽口なのかしら……


「とにかく、シーワード公爵領については殿下にお任せして、周りのご令嬢達にいじめられたら僕にいうんだよ。それは絶対に助けるから。大丈夫? お友達はできそう?」


 相変わらず潤んだ瞳で、わたしの顔を心配そうに覗き込む。


 お兄様に心配かけない様に、今日スピカさんと仲良くなった事を伝えた。


「スピカ嬢? 聞いた事ないなぁ。どこの家のご令嬢?」


 あれ? もしかして同じくらいの身分のご令嬢としかお友達になっちゃいけなかったのかな。

 確かに午後の授業でスピカさんの隣の席に座ったら驚いた様子だったし……


「えっと、あの……魔法が使えて、今年王立学園(アカデミー)に特待生で入った同じクラスの女性です……」


 とりあえず平民って言わない方がいいのかな? 言葉を選んでスピカさんの説明をする。 


 泣きそうで潤んでいた、お兄様の目が見開いた。


「特待生? ってあの特待生?」

「あの? ってどのですか?」

「そっか。今年は特待生がいるって噂を聞いてはいたけど、本当にいたんだ」

「お兄様。なんだかよくわからないけど特待生がどうかしたの?」


 お兄様がいうには貴族の子女が通う王立学園(アカデミー)はかなり費用がかかるらしい。


 だから貴族以外だと手広く商売をして儲かってる商家の子女くらいじゃないと、おいそれと通えないんだって。


 もちろん優秀な人材を集めているから、勉強ができたり、剣技が得意だったり、魔法が使えたり突出した能力があれば平民でも王立学園(アカデミー)に入る事はできるけど、それでも普通は多額の費用がかかるからちょっと普通より能力があるくらいだと結局入るのを諦めちゃうみたい。

 でも、その費用を免除して特待生として迎え入れるっていうのは国が囲っておきたいレベルの才能があるって事らしい。


 特待生制度ができてまだ十年弱らしいけど、特待生は片手で数えるほどしかいないんだって。


 まぁ、高位貴族の方たちは、特待生になって国に縛り付けられるのを嫌がって特待生試験は受けないらしいけどね。

 お兄様は「僕も受けたら特待生だったと思うんだよね」とか言ってるけれど、お兄様がなれるなら勉強熱心なエレナもなれる気がするから、話半分に聞いておく。


 それにしてもスピカさんってそんなに才能溢れる人だったのね。

 明るくて可愛い、話しやすい子くらいにしか思ってなかった。


「よかったね! すごい人とお友達になれて」


 お兄様に笑顔でそう言ってもらえて、ちょっと行きたくない気持ちになっていた王立学園(アカデミー)に通うのが楽しみになった。

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