13 エレナの周りでの評価
優しいエメラルドの瞳が返事のないわたしをじっと見つめる。
「王立学園だってエレナの味方は沢山いるのはわかってる?」
「そうね。スピカさんが仲良くしてくれているわ。それにコーデリア様やメアリさんにベリンダさんにミンディさんもよくしてくださいます」
「それだけ? 騎士を目指す生徒たちは近衛騎士になるための難関試験を受けてエレナが王太子妃になったあかつきにはお近くで護衛をするんだって息巻いているよ」
そう言ってお兄様は肩をすくめる。お兄様お得意の大袈裟な話は流石に肯定したりしない。
「息巻いているのはスピカさんの話でしょ? スピカさんは特待生として女性王族に使える女騎士になるのを目指してらっしゃるんだもの。わたしが王太子妃になるって信じてそう言ってくださってるのよ」
「もちろんスピカ嬢が筆頭かもしれないけれど、あそこにいた生徒たちの総意だよ。みんなエレナが差し入れしてくれるのは、自分たちのことを大切に思ってくれているからだなんて言って、陶酔してるよ?」
「それは、せっかく殿下が騎士を目指す生徒たちのために実践力を磨くためにルーセント少尉を王立学園に派遣されたのに、そのルーセント少尉ばかりにご令嬢の注目が集まってしまってヘイトが溜まってしまっていたからだもの。そうだわ。お兄様に殿下に報告しに行って欲しかったのに、なんだかんだ言ってはぐらかすからお菓子を配ってガス抜きをしてただけなのよ」
それだけでわたしの護衛をしたがってるなんて言うのなら、よっぽど相手にされなかった生徒たちが多いって事だ。
お兄様がきちんと殿下に報告してくださっていればそんなこと言うほど不満が溜まることにならなかったのに。
冷ややかな視線を送っても、お兄様は肩をすくめるだけだ。
「あと、イスファーンの歓迎式典でエレナは領主たちとイスファーンの大使たちの通訳をしてあげたでしょ? エレナのおかげで取引がうまくまとまったもんだからみんなこぞってエレナが王太子妃になるのに賛同してる」
そうだ。イスファーン語が話せるからとアイラン様の通訳兼案内係としてお兄様が抜擢された際にわたしも一緒にお呼ばれをした。
「あの時はあくまでお兄様のお手伝いとして歓迎式典に参加したはずだったのに、わたしばかり領主や大使の通訳を押し付て」
そりゃ取引がうまく行ったことでみんな評価してくれてるのは嬉しいけれど、本来ならわたしの仕事じゃないのにお兄様はアイラン様をチヤホヤするのに忙しそうなふりしてわたしを助けてくれなかった。
「ほら、王宮の官吏たちだってエレナが王宮で女官見習いの真似事をしていたときに真面目に仕事してる官吏たちを褒めてあげてたでしょ? 誰からも仕事を認めてもらえないと思ってた官吏たちは王太子殿下の婚約者様は俺たちの味方だ、俺たちの女神だって騒いでるよ」
「女官見習いの真似事を始めたのだって、殿下が疲弊されてるからお兄様に殿下のお手伝いするために王宮に出仕してってお願いしたのに、のらりくらりとかわしてらしたからよ。とうとうわたしの膝枕で寝落ちするくらい疲れていらしたから、わたしが何か出来ることしないとと思って出仕することにしたのよ」
「そうだっけ?」
「考えてみたら、わたし随分とお兄様に振り回され続けている気がするわ」
「えぇ? 僕がエレナに振り回され続けてるんじゃなくて?」
キョトンとした顔で見つめられても騙されない。
わたしはお兄様をにらむ。
「まぁいいやエレナ。そんな瑣末なこと気にしないの。木ばっかり見て森を見ないのは問題だよ? ものごとは広い視野で見ないと。ほら行こう」
んもうっ!
さっきと真逆のことを言ってのけるお兄様はヘラヘラと笑って歩き出した。




