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1 恵玲奈とエレナ(第五部プロローグ)

 ガタガタと揺れる馬車で見つめた真剣な眼差し。凛とした声が紡ぐ甘い言葉。あの日を思い出して、心の中のエレナに尋ねる。


 ──ねえ。エレナ。エレナは殿下に愛されていたことを知っていたの?


 朧げなエレナの記憶を辿りながら、馬車の窓から外を眺める。

 あの日見た景色と同じように、王都は今日も賑やかだ。


 殿下に告白されたあの日から、わたしはずっと考えている。


 エレナの手元に届くはずだった手紙に書かれていのは、たくさんの愛の言葉と子どもの頃の思い出だ。


 殿下のお母様である王妃様が身罷られたあと塞ぎがちだった殿下は、半年くらいトワイン領にある王室の別荘で過ごされていた。

 遊び相手に呼ばれたお兄様の付き添いでエレナも別荘に滞在することになり、殿下の事情なんて何も知らずに、殿下を兄のように慕いたくさん遊んでもらっていた。

 それは、殿下と()()()にとって大切な記憶。




 ──わたしが転生者である。

 という事に気がついたのは春に屋敷の階段から落ちて気を失ったのがきっかけだった。


 わたしは転生前は神代恵玲奈という名の平凡な……

 いや。オタクな女子高校生だった。


 聖地巡礼(オタ活)の最中に神社の石段から落ちて死んだあと、この世界に転生してエレナ・トワインという侯爵家のご令嬢として生活していた。


 異世界転生といえば、前世でハマったゲームや漫画、小説の世界に転生して、ストーリーを知っていることをうまく活用しながら生き抜いていくものだと思うのに、いまわたしがいるこの世界についてのストーリーが思い出せない。


 そしてエレナがこの物語でどんな役割を持っているかもわからないまま。


 だからわたしはずっと……


 エレナは王太子殿下がやむを得ず婚約する事になったご令嬢で、エレナが一方的に昔から恋焦がれていたから「悪役令嬢」なんだと思い込んでいた。


 せめて破滅フラグは回避してエレナには生きてもらいたい。

 でも、エレナの純粋な殿下への恋心も大切にしてあげたい。

 エレナのためにうまく立ち回ってあげたいなんて、そんなふうに考えていたのに。

 エレナとして振る舞っているうちに、わたしはもう自分が恵玲奈なのかエレナなのかわからなくなってしまった。


 ──ねえ、エレナ。わたしはエレナとして殿下と生きていきたいよ。許してくれる?


 王立学園(アカデミー)に向かう馬車に揺られながら心の中のエレナに問いかけても、エレナは何も答えてくれない。


 わたしは窓の外を眺めながらため息をついた。

随分と期間があいてしまいましたが、第五部再開します。

お待ちいただいていた方ありがとうございました。

初めましての方よろしくお願いします。


完結まで毎日複数回更新予定です。


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