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20 エレナ王立学園に通う

 ──お昼は人目のつきやすい中庭で必ず僕と過ごす事。


 とお兄様と王立学園(アカデミー)に通う条件として昨日約束をしたので、中庭でお兄様を探す。


 パッと見は見つからない。


 お兄様は結構モテる。

 っていうか、かなりモテる。


 だってお兄様は婚約者どころか特定のお相手もいない、年頃のイケメン侯爵令息だもの。

 しかも、イケメンなだけじゃなく、お兄様は勉強が出来る。

 殿下と幼馴染だから、小さな頃からよく王城に話し相手として出向いていたけれど、遊ばせてもらえずに一緒に勉強させられていたらしい。

 それに知りたがりのエレナがいろんな専門家に家庭教師になってもらっていて、お兄様は一緒に授業を受けていた。

 断じて勉強が好きなわけじゃないのに、学ぶための素晴らしい環境が与えられいたお兄様は王立学園(アカデミー)内でもトップクラスに頭がよい。


 それに勉強だけじゃない。

 丘陵が多く、牧場に適したトワイン領では馬の生産に力を入れていて、小さい頃から馬に慣れ親しんでいたお兄様は王立学園(アカデミー)の馬術大会で、騎士を目指す生徒たちを差し置いて、優勝したことがあるらしい。


 ダンスのリードも上手だし、ヴァイオリンも弾けたりする。


 殿下の幼馴染な上、婚約破棄を狙っているわたしが言うのもおかしいけれど、今のところ未来の王妃の兄なんだから、王室に関わる時の地位も確約されたも同然。


 そんな釣書だけでモテるのが間違いないのに、紳士的で優しくていつもニコニコ笑ってる。


 なのでこういう自由時間は、お兄様を狙う……じゃなくて、慕うご令嬢達がお兄様を囲んでいるので、人だかりを探せばいい。


 と思ったら、中庭に人だかりが二箇所あった。


 あら。

 お兄様以外にもおモテになる方がいらっしゃるのね。


 まぁ、両方見てみればいいか。

 わたしはひとまず近くの人だかりに近づいた。


 ご令嬢たちの人垣の向こうはまったく見えない。


 そうだ。エレナは背が低い。

 ぴょこぴょこ跳ねてみたけれど無駄だった。


 木にでも登って上から見ようかと思ったけど、それは流石にやっちゃいけないことはわかる。


「お兄様? いらっしゃいます?」


 返事がないのでご令嬢達にもみくちゃにされながら真ん中に近づく。


「お兄様?」


 やっと中に近づいて声をかけたら……


 お兄様じゃないイケメンと目が合った。


 あ。やばい。そうだった。

 お兄様以上におモテになる方の存在を忘れていた。

 記憶が曖昧な事で油断していた。


 逃げたくても揉みくちゃにされて身動き取れない。


「久しぶりだね。エレナちゃん」


 イケメンが余裕たっぷりの笑顔で、わたしを「ちゃん付け」で呼ぶ。

 周りのご令嬢達がわたしのことを一斉に見た。


 うぅ。周りのご令嬢達の視線が痛い。


 この、ご令嬢達が織りなすハーレムの主人は、オーウェン・フォスター公爵令息。


 とにかくおモテになる。婚約者どころか特定のお相手もいない、勉強は知らないけど、武術に優れててお兄様よりも単純に地位が高い年頃の公爵令息。

 そりゃ何もしないでモテる。


 その上、かなりのイケメンだ。


 イケメンって言うか……


 少し目尻の下がった菫色の瞳に狙った様に右側の目元にほくろがあって色気がある。

 無造作にまとめたように見せかけて計算され尽くしたまとめ髪。服は大体着崩していて鎖骨とかなんなら鍛えた胸元が見えるような格好していて、なんというかとにかくエロい。


 多分、三十秒見つめられたら孕んでしまう。


 そして、おモテになることをいいことに刹那的で奔放に生きていらっしゃる。

 とにかく女遊びが激しい。


 お兄様や殿下と何故か親しくされているから、お会いすれば仕方なしに話すけど、すっごく苦手なタイプ。


「ごきげんよう。オーウェン様。それではごきげんようでございます」


 慌ててへんな喋り方になったけれど、構わない。

 わたしはこの場から逃げようとした。

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