表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/274

1 恵玲奈とエレナ(第四部プロローグ)

第四部開始します。

引き続きよろしくお願いします。

 王宮内の一室で小さな腰掛け(スツール)に座ったわたしは、心の中のエレナに尋ねる。


 ──ねぇ。エレナ。初めての王宮はどう? 思った通りかしら? ううん。そんな事ないわよね。


 朧げなエレナの記憶を辿りながら、わたしは部屋の中を見回す。


 王太子殿下のかりそめの婚約者でしかないエレナは、王宮の中に入れてもらうのは初めてだ。

 一度庭園で行われたお茶会に参加したことはあるけれど……


 まだ社交界デビューをしていないエレナは、王宮で開かれる豪華な夜会にも出たことはないし、私的に殿下の部屋に呼ばれた事もない。王太子妃教育として王宮でお勉強する事もなかった。


 殿下の執務スペースの隣にあるこの部屋は補佐官の控室。

 王宮の絢爛豪華な装飾とは無関係と言わんばかりの、質素な部屋だ。


 エレナの初めての王宮は本当にこれで良かったのかしら。

 エレナはきっと殿下にエスコートされて王宮の広間に立つのを夢見ていたわよね?




 ──わたしが転生者である。

 という事に気がついたのは春に屋敷の階段から落ちて気を失ったのがきっかけだった。


 わたしは転生前は神代恵玲奈という名の平凡な……

 いや。オタクな女子高校生だった。


 聖地巡礼(オタ活)の最中に神社の石段から落ちて死んだあと、この世界に転生してエレナ・トワインという侯爵家のご令嬢として生活していた。


 異世界転生といえば、前世でハマったゲームや漫画、小説の世界に転生して、ストーリーを知っていることをうまく活用しながら生き抜いていくものだと思うのに、いまわたしがいるこの世界についてのストーリーが思い出せない。


 そしてエレナがこの物語でどんな役割を持っているかもわからない。


 ただ……


 エレナは王太子殿下がやむを得ず婚約する事になったご令嬢で、エレナが一方的に昔から恋焦がれている。


 なんてどう考えても「悪役令嬢」な設定だから、役割は察しがつく。


 せめて破滅フラグは回避してエレナには生きてもらいたい。

 でも、エレナの純粋な殿下への恋心も大切にしてあげたい。


 わたしは大きなため息をつく。


 ──大丈夫よ、エレナ。殿下のお役に立てれば近くにいる事も許されるはずよ。だから、わたしに任せて。


 わたしは女官見習いのリボンを結び直して、心の中のエレナを励ました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ