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婚約者の座を譲って破滅フラグを回避します! ─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─  作者: 江崎美彩
第三部

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10 エレナと騎士候補たちの訓練

「待って待って! ダスティン! 僕は無理だから!」


 お兄様は慌てて顔の前で手をブンブン振る。

 殿下の側付き騎士に抜擢された「三騎士」の一人であるダスティン様に、代々中央騎士団の将軍職を担っているフォスター公爵家の嫡男オーウェン様。

 日頃から騎士になるために常に鍛えているお二人と、鍛えてないわけじゃない程度のお兄様じゃレベルが違う。

 でも、そんなのお構いなしでダスティン様とオーウェン様が近づいてきた。


「エリオット様は王太子殿下の側近になられるのですから、不測の事態に備え、鍛える事は大切ですよ」


 ダスティン様はさも当たり前の事を告げるように真顔でお兄様の肩に手を置き、その横でオーウェン様はニヤニヤしている。


「不測の事態が起きないようにするのが武官の役目でしょ。そのための稽古なんだから、文官を目指す僕なんかがしゃしゃり出るなんて悪いよ。しかるべき人に譲るよ」

「諦めが悪いぞエリオット」


 お兄様がヘラヘラ笑って逃げ腰になっているのを、今度はオーウェン様が肩を抱き顔を寄せる。


 ひぃっ。


 柔和な癒し系イケメンのお兄様、色気たっぷり妖艶なイケメンのオーウェン様、凛々しい硬派なイケメンのダスティン様が顔を寄せ合っている姿は絵力が強い。

 キラキラエフェクトにやられてしまう。


 周りを見回せばわたしと同じようにご令嬢達がポーッとお兄様達を見つめていた。


「俺たちは騎士としてこの国を護るのを誓っているが、この国を護る事が殿下を護る事に繋がるとは限らないぜ。お前はいつも殿下の庇護下にいるんだ。不測の事態に備えておくに越したことはないだろ」


 そう言ってオーウェン様はチラリとルーセント少尉を一瞥する。

 ルーセント少尉は隣国(リズモンド)出身とベリンダさんが言っていた。


 エレナの知識を総動員してリズモンド王国について思い出す。


 リズモンド王国はヴァーデン王国と大河を隔てた西側に位置する小国で、ルーセント少尉が産まれて間も無い頃にクーデターが起きて、今は当時の将軍が王位についている。

 国を護る騎士達に国を奪われ、当時の王族達はみな処刑されたと聞く。

 そもそもリズモンド王国は大国に囲まれていてその時その時の大陸内のパワーバランスに左右されやすい。

 大陸で力があるのはヴァーデン王国の北に位置するファルファウラ帝国で、二十年余り前にリズモンド王国はヴァーデン王国につくかファルファウラ帝国につくか国内でも意見が二分していた。

 そんな中、リズモンドの姫君が幼い頃から婚約していたヴァーデン王国の王太子殿下──いまの国王陛下に嫁ぐ時期が近づいて、ヴァーデン王国派に傾くと、リズモンドの姫君が儚くなられた一報が届く。

 ファルファウラ帝国派の将軍達がその騒乱に乗じてクーデターを起こしたと言われている。

 リズモンドの姫君の遺体は一度も確認されていないことから、将軍達が暗殺したんじゃないかとか、実はいまだに生きていて王族派に匿われているんじゃないかとかいろんな噂が流れている。


「もし、そんな不測の事態になった時は僕はペンを取りあらゆる術を使って異国で匿ってもらえるように戦うよ。イスファーンにあてだってあるしね。それにさ。本当に僕が剣をとって戦わなくちゃいけないほど万策が尽きたら、それこそ盾となるしかないもの」

「ええ! お兄様ったら、殿下の盾になるご覚悟がおありなの⁈」


 わたしが驚くと、お兄様は心外そうな顔をする。


「だって僕と殿下は運命共同体なんだよ。万が一クーデターが起きて殿下が玉座を追われるような立場になったら僕の立場だってないよ」

「……お兄様なら殿下を売って、自分だけは助かると思いましたわ」

「最近のエレナは僕に厳しすぎやしない?」


 じっとりとした眼差しで見つめられて慌てる。

 やばい。ついお兄様がツッコミしやすいからとグイグイ言いすぎた。

 エレナはそこまでツッコミする子じゃなかったかもしれないのに。


「そうかしら」


 素知らぬ顔をして誤魔化そうとすると、フハッと吹き出す声が聞こえた。

 メアリさんが目尻に涙を溜めて笑うのを耐えていた。

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