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4 エレナと殿下の三騎士の関係者たち

 コーデリア様に連れてこられた食堂の席には、はじめましてのご令嬢達が待ち構えていた。


 まず目立つ赤毛のおさげに丸眼鏡をかけたご令嬢に、ハニーブロンドを腰まで伸ばしたご令嬢。それに、焦茶の髪の毛をポニーテールに結んだご令嬢。

 三人とも雰囲気がてんでんばらばら。


 なんだろう。


 今はコーデリア様派閥のご令嬢の多くは、派閥の長であるコーデリア様が睨みを利かせてくれたから、わたしに対して嫌がらせをしたりしない。

 なんならすれ違う時にあちらから普通にご挨拶してくださるレベルだ。

 むしろコーデリア様派閥じゃなさそうな、目の前の三人みたいにはじめてお会いするご令嬢の方が緊張する。


 わたしはおずおずと着座する。


「ご紹介するわ。こちらはケイリー伯爵家のベリンダさんに、ハーミング伯爵家のミンディさん、それにストーン子爵家のメアリさんよ」


 聞き慣れた家名にわたしは目を見張る。


「もしかして……」

「あら。お気づきかしら」


 コーデリア様は満足げだ。


「みなさま、はじめまして。エレナ・トワインと申します。みなさまのご兄弟君にはいつもお世話になっています」


 殿下は騎士を目指す生徒の中からご自身の未来の近衛騎士を選抜している。

 その中でもケイリー伯爵家のブライアン様と、ストーン子爵家のジェレミー様、それにコーデリア様のご婚約者のダスティン様の三人は「殿下をお護りする三騎士」だと自称されていて、殿下の信頼も厚い。

 殿下がわたしと中庭で過ごしてくださるときは三人のうち誰かをお連れになる事が多いので、私もそれぞれお話をしたことがある。


「エレナ様。わたしはジェレミーの双子の姉でベリンダさんはブライアン様の妹ですけど、こちらのミンディさんはブライアン様の愛しの婚約者ですわ」


 赤毛のメアリさんはそう言ってニヤリと笑うと、真っ赤になったミンディさんを肘で突く。

 メアリさんは物おじしない性格なのか、家格の違いがあっても遠慮がなさそうだ。


「ミンディさんのことはブライアン様からお話伺って存じてるわ。お二人は幼馴染なんでしょう?」


 わたしと殿下は幼馴染みたいなものだと話した時に、ブライアン様も幼馴染と結婚すると教えてくれた。


「……恥ずかしい」

「ご結婚はいつ頃なんですか?」

「秋にはわたしも十八歳になるので、その時に結婚することになっています」

「まあ、もうすぐなんですね」


 王立学園(アカデミー)に通うご令嬢の多くは、十八歳になると通うのをやめて結婚し、家に入る。

 卒業するまで通うのは縁談が見つからなかった行き遅れと馬鹿にされたりすることもあるらしい。

 もちろん元々スピカさんみたいに騎士や女官になりたくて職業訓練的に通っている人もいるし、気にしない人もいるけれど、十八歳で結婚しないと行き遅れなんて現代日本の感覚だと信じられない。


「ええ、もうすぐご結婚だと言うのに、あの男がミンディさんの婚約者様を連れ回すものですから困っておりますのよ」


 コーデリア様は眉を顰める。

 美女がすると凄味がある。なんてわたしが感心しているとミンディさんは慌てる。


「王太子殿下はお忙しくされていらっしゃいますものね。ブライアンは頼りにされて喜んでます」


 殿下は王立学園(アカデミー)にいらしても公務を担われていて、執務室にこもってばかりなのに、イスファーンとの交易についての取り決めだなんだでいつも以上に忙しい。

 王宮にずっと行っていて王立学園(アカデミー)にはあまり来ていない。

 殿下は王宮内で過ごす時も「三騎士」の誰かを連れ歩いているんだろう。


 つまり、殿下のせいで婚約者達に会えなくて困るってことね。

 合点がいったわたしは、ようやく緊張が解けた。


「あら。殿下ったら自分の騎士だって抱え込んでしまわれてるのね。婚約者との逢瀬にも気を遣っていただかないと。コーデリア様だってダスティン様に会えないとお寂しいですもんね」

「べっ別に、わたくしはダスティンなんかに会えなくても寂しくなんてございませんわ! ただ、将来公爵になるのが決まっているのですから、本来であれば王立学園(アカデミー)で学ぶべき事がたくさんありますのに! あの朴念仁には困ったものですわ!」


 今日もコーデリア様のツンデレは尊い。


 寂しいのをわたしに指摘されたのを怒ったそぶりでごまかすコーデリア様をわたしは心の中でニヤニヤしながら見守った。

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