恋路の果てに
東京に辿り着いた弓原少尉は既に軍服を脱ぎ、気象省の一職員『弓原徹』に戻っていた。もう軍人になるのは懲り懲りだ。怖い思いも。
朝のニュースに『自分の顔写真』が写し出されていても、それには気が付かない。かなりの寝不足で、緊張から解き放たれていた。
しかし、そんな安心も長くは続かない。現実へと引き戻される。
婚約者の『山崎朱美』と会う『ラストチャンス』が迫っていた。
朱美に何の不満もない徹は、彼女の言いなりだ。
だから『次に逢う約束は三回まで』とか、『自宅に送って良いのは年賀状と暑中見舞いだけ』とか言われても、理由も聞かずに黙って従う。むしろ『ミステリアス』だと思っていた。やり取りに『暗号を使う』のだって朱美を夢中にさせる『理由の一つ』に過ぎない。
731部隊が用意した官舎に、今日も出向先のNJSから帰宅した朱美は、茶封筒を見て驚く。徹からだった。
しかも消印はどう見ても『軍の施設内』からではないか。
嫌な予感がして、そっと開封して出て来たものに、朱美は驚愕する。それは、自分が軍に協力して調合した『極秘の錠剤』だった。
レシピごと消されそうになったのに、まだ生きていられるのには理由がある。朱美は急いで『ラストチャンス』へと向かう。
徹と朱美は『ラストチャンス』で池袋から品川へと向かう。
それは『山手線』と『山の手貨物線』を忠実に再現したものだった。誰に邪魔されるでもなく、ナニに邪魔されるでもなく。
もちろん、知らぬ間に『裏切りに合っている』とは考えずに。
キーワードは二つ。『紙大好き』と『小豆バー大好き』だ。




