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第86話 旅行5

お待たせしました。

「バーベキューバーベキュー♪」


 謎の鼻歌を披露しながら上機嫌な表情を浮かべているのは俺の妹、絵菜である。

 俺達4人はようやくバーベキューを行うというテラス(当然の如くかなり広い)へとやって来ていたけど、正直言って先程のゲームで俺はかなり疲れてしまっていた。


「まったく、もう少し早く終わってくれ」

「アタシだけに言わないでよ。あの2人だって散々長引かせたんだから」


「あら、絵菜が1番長引かせていたはずでは?」


 そう言って不満そうな表情を浮かべているのは彩音さんである。この旅行に来てからは彩音さんの新たな一面を多く発見している気がする。特に絵菜との絡みでよく見られていて、一体どうやったらこんな短期間で親密になれているのか不思議で仕方なかった。


「ふん、最初に言い出したのは彩音じゃん!あれが無ければとっくにゲームは終わってたでしょ」

「何ですって!?自分の事を棚に上げるのは良くないわ」

「へぇ、アタシにケンカを売るつもり?」


 再び不穏な空気になりそうだったので、さすがの俺も少しイラッとしてしまった。


「2人とも、やるんなら後にしてくれ。どれだけ志波さんを待たせたと思っているんだ?」


 俺の言葉を聞いて2人が肩をビクリとさせた。どうやらイラつく気持ちが言葉にも乗ってしまったらしい。


「うっ、ごめん・・・」

「も、申し訳ありません、ヒロさん」

「謝るなら俺よりも志波さんに対してじゃないか?」

「まあまあ神白様、わたくしめは怒っておりませんから気になさらないでください」


 と志波さんは笑顔で答えてくる。


「何というか、すみません」

「いえいえ、わたくしめはむしろ嬉しいのですよ。こうして彩音お嬢様が無邪気な笑顔で楽しそうにされているのを久しぶりに拝見出来たのですから」

「も、もう、恥ずかしい事言わないで!それとお嬢様呼びも禁止!」

「ほほ。食材とお飲み物はこちらに取り揃えております。もし何かご入用でしたら遠慮なくお申付ください。では皆様、存分にバーベキューをお楽しみください」

「もう、無視しないで!」


 彩音さんの言葉を聞き流して志波さんは深々とお辞儀をする。彩音さんのあしらい方はお手のものといった様子である。


「わ、すごっ!牛肉が霜降ってる!」

「本当ですね!それに海鮮物もお野菜もすごく質が良いです!」


 絵菜と莉緒ちゃんが歓声を上げている中、俺も食材が置いてあるテーブルを見る。なるほど絵菜の言う通り牛肉は程良い霜降りで相当が良いし、海鮮物も伊勢海老やホタテを初めとして数種類並んでいて鮮度が高そうである。しかもどれも下処理がされていてすぐに焼ける状態にしてある。


「お飲み物もソフトドリンクとお酒を数種類用意してもらいました」


 復活した(?)彩音さんがそう声を掛けてくる。確かに飲み物はオレンジジュースや烏龍茶といったのソフトドリンクに缶ビールや日本酒、ワインも置かれている。しかも缶ビールはよく見る銘柄ではなくて地ビールみたいだし、日本酒も明らかに値が張りそうな純米大吟醸、ワインもテレビで聞いた事がある高級ワインの銘柄である。


「こんなに奮発して大丈夫なのか?」

「ふふ、お気になさらず。いつもこのくらいは取り揃えていますから」

「そ、そうか」


 もうこれ以上突っ込むのはやめておこう・・・一々気にしていたら精神的に疲れそうだし。


「ん~と、アタシはビール飲もうっと。お兄ちゃんもビールにする?」

「・・・そうだな、久しぶりに飲むか」


 普段は製造現場からのトラブル対応に呼ばれる可能性を考慮して飲酒は避けているけど、せっかくの旅行なのでたまには飲もうと思った。


「オッケ〜!あっ、莉緒ちゃんは未成年だからダメだかんね!」

「分かっています!私は烏龍茶にします」

「ヒロさんも絵菜もビールにするなら私もビールにしようかしら」

「おっ、付き合い良いじゃん!はい、缶ビール」

「ええ、ありがとう」


 彩音さんが缶ビールを受け取った後、絵菜が缶ビールを高く掲げる。


「お~っし、皆に飲み物渡ったね!さぁて、乾杯といきましょ〜」

「何で絵菜が仕切るんだよ」

「良いじゃん、こういうのはその場のノリなんだから!」


 ノリで仕切るのもどうかと思うけど、せっかくの旅行だし少しくらい羽目を外しても大目に見るか。あまり水を差すのも良くないだろうし。


「それなら任せたぞ」

「オッケ〜任されました!じゃ、日頃のお勤めご苦労さまで〜す!かんぱ~い!」


「「「乾杯!」」」


 こうして、ようやくバーベキューが開始したのであった。

お読みいただきありがとうございます。

寒い日が続いていますね。週末も寒波が来るらしいので体調には充分お気を付けください。

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