第81話 旅行前
お待たせしました。今回は少し短めです。
『じゃ、もうしばらく莉緒の事を頼むぜ』
という言葉を電話で伝えた後、誠也は北海道へ戻っていった。気を遣って昼休みの時間帯に電話してきたのだろうけど、休み時間の8割が莉緒ちゃんの話で消費されたので昼休みを奪われてしまった気分だ。
(疲れた・・・)
休憩時間のはずなのに思わぬ疲労をしてしまった。まあ溺愛している娘に久しぶりに会えたのだから嬉しいという気持ちは分からなくはないけど、俺まで巻き込んでほしくはなかった。
その影響(?)もあってかアパートに戻ってきた時にはいつもより疲れが増している気がした。
玄関のドアはすでに開いているので、すでに莉緒ちゃんが戻って来ているようだ。
と、ここで俺は思わず苦笑する。戻って来ると表現している辺り、ここが莉緒ちゃんの帰る場所である事を自然に受け入れているかのようであった。
(これは少しまずいか・・・?)
そう思いつつリビングまで行くと、いつものように笑顔を浮かべた莉緒ちゃんが迎えてくれる。
「お帰りなさい弘人さん」
「ああ、ただいま。久しぶりに誠也と過ごした感想はどうだった?」
一旦浮かんだ考えは頭の奥に追いやって俺が訊いてみると、莉緒ちゃんは苦笑を浮かべる。
「何と言いますか、相変わらずでした」
「いつも以上にテンションが高くなかったか?」
「弘人さんが一緒に居る時はそうでしたね。でも弘人さんがお帰りになってからはそう変わらなかったですよ」
「そうか?昼休みに電話を掛けてきた時はテンションが高かったからてっきり・・・」
「えっ、お父さん電話を掛けてきたのですか?」
俺の言葉を遮って莉緒ちゃんは驚いた表情を浮かべている。
「ああ、ずっと莉緒ちゃんの話ばかりしてたぞ。おかげで昼休みがほとんど消えてしまったな」
「もう、お父さんったら・・・」
少し頬を赤く染める莉緒ちゃん。恥ずかしがっているのか怒っているのか判断が難しいところである。
「もう少しで晩御飯が出来ますので待っててくださいね」
「いつも助かる。ありがとう」
「いえ、私も好きでやっていますのでお礼は要りませんよ」
と、答えながらもどこか機嫌が良くなったように見える莉緒ちゃんは再び台所へと準備に戻るのだった。
「弘人さん、旅行の準備はされました?」
風呂から上がってきてリビングで寛いでいる時に莉緒ちゃんからそう訊かれてハッとなる。そういえば12日から彩音さんの別荘へ行く予定だった。今日は確か10日のはずだからもう明後日に迫っている。
「いや、まだしてないな」
時間が経つのは早いな、と思いつつ莉緒ちゃんにそう答える。
すると莉緒ちゃんが小声で何かを呟いた後、
「もし宜しければ私が準備しておきましょうか?」
と提案してくる。
「えっ?さすがにそこまでしてもらう訳にはいかないよ」
「ですが、弘人さんはお仕事で疲れているはずです。対して私は夏休みで時間もあります。それならば私が準備をした方が弘人さんの負担も減りますし良いと思いますそうしましょう」
あっ、お得意の頑固が発動してしまった。こうなってしまうと受け入れるしかないけど、俺の準備を全てやってもらうはどうかと思う。
とはいえ全てを断るのはもはや至難の業となると、もはや妥協案を立てるしかないか。
「じゃあ2人でやろう。その方が早く終わる」
その提案に莉緒ちゃんは少し考えた後、ゆっくりと首を縦に振る。
「・・・分かりました、そうしましょう」
俺はクローゼットから長く眠っていたキャリケースを取り出して持ってくる。4日間となるとそれなりに大荷物になるからな。
それからは2人で旅行の準備をした。といっても衣服がメインなるので大して時間は掛からなかったけど。ちなみに衣服は全て莉緒ちゃんセレクトで準備の大半がこれで消費された事を追記しておく。
「楽しみですね!」
と莉緒ちゃんの上機嫌な様子を見て軽く頷いておく。勿論楽しみであるけどメンバーは俺以外が女性である。しかも親友の娘、実の妹、隣人(行きつけのカフェの店員さん)って異色のメンバーすぎるだろう。
ちなみに次の日(旅行前日)には再び絵菜が泊まりに来て賑やかになるのだけど内容は省略する。とにかく疲れたとだけ言っておこう。
・・・そして、いよいよ旅行当日を迎える。
お読みいただきありがとうございます。
次回からいよいよ本章のメインストーリーに入っていきます。物語も少し動きます。
え?ヒロインが1人足りない?序盤でピックアップしたので勘弁してください。さすがに展開上盛り込めませんでした・・・




