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第79話 親友の帰省

お待たせしました。

 絵菜と一悶着(?)があった数日後、いよいよ誠也の帰省する日になった。

 俺と莉緒ちゃんは誠也の頼みで空港まで迎えに来ていた。誠也曰く『一刻も早く莉緒に会いたいから頼むぜ!』とオンライン通話の時に拝み倒されてしまったのだ。

 こうなってしまうのであれば有給休暇が取れたと話さない方が良かったかもしれない。


「誠也が乗ってる便はいつ到着するかな」

「予定ではあと10分くらいですね」


 途中で高速道路の渋滞に巻き込まれてどうなる事かと思ったけど間に合って良かった。もし遅刻すれば誠也が『莉緒と会うのが遅れたじゃねえか!』とか言って叫んできそうだしな。


「到着口まで移動するか」

「そうですね」


 俺と莉緒ちゃんは国内線の到着口まで移動し、しばらく待っているとキャリケースを引いて歩いている誠也を発見する。

 ほぼ同時に誠也もこちらに気付いた・・・かと思うと猛ダッシュで駆け寄ってくる。


「莉緒ぉ〜〜!!」


 満面の笑みで片腕を広げながら(キャリケースを持ってなかったら両腕だった)莉緒ちゃんの名前を叫ぶ誠也。端から見ると非常に怪しい中年のオッサンで、実際に周りの人々から不審そうな目を向けられている。

 しかし、そんな視線はもろともせず(というか視界にはきっと莉緒ちゃんしか映っていない)一直線で莉緒ちゃんへ抱き着こうとするが・・・


 スカッ


「おわっ、ぐぇっ!?」


 莉緒ちゃんはギリギリのところで横に逸れ、勢い余った誠也は盛大に転倒してしまう。


「・・・弘人さん、帰りませんか?」

「奇遇だな、俺も同じ事を思ってたところだ・・・」


 2人して背を向けてその場を離れると、背後から『待ってくれぇ〜』と情けない声が聞こえてくるのだった。




「もう、恥ずかしくて他人のフリをしたくなったよ!」


 もはや半泣き状態の誠也を渋々乗せて車を走らせてから少しして、莉緒ちゃんは怒ったように口を開く。


「同感だ。思わず友人を辞めたくなるくらいにはな」

「す、すまん・・・」


 俺も追撃すると後部座席に居る誠也はしゅんと縮こまっている。

 ちなみに莉緒ちゃんは車に乗る時に迷わず助手席へと行った。誠也が『後部座席で一緒に乗らないか?』と言っても『嫌です』と冷たく返されて肩を落としていたのは言うまでもない。


「弘人さん、こんな父親ですみません・・・」


 態々誠也に聞こえるように言う辺り、余程恥ずかしかったのだろう。


「莉緒ちゃんが悪い訳じゃないさ。時々暴走したりお調子者のような性格は昔からだしな」

「弘人さんも相当苦労されたのですね」

「ああ、苦労したぞ」

「なあ、そんなにはっきり言わなくても」

「お前の言動で何度頭を悩ませたか分かるか?」

「い、いやぁ~あはははは・・・」

「笑い事じゃありません!少しは反省して!」


 俺が言う前になぜか莉緒ちゃんが突っ込む。まあ俺が言いたかった事とほぼ同じだな。


「うっ、は、反省してます・・・」


 誠也はさらに肩を落とす。やはり莉緒ちゃんから言う方が効果覿面のようだ。


 大人しくなった誠也を尻目に車を走らせて2時間弱、目的地である祭川家へ到着する。


「うお~!久しぶりの我が家だぜ!」


 家の中に入ると開口一番に誠也が声を上げる。先程まで車内で落ち込んでいたとは思えない程テンションが高い。まあ4ヶ月近く帰っていなかったのだから無理もないか。


「ん?長期間空けていたのに家の中が綺麗じゃねえか?」

「莉緒ちゃんが定期的に掃除しているからな」

「そいつはありがてえ!帰って来たら掃除しようかと思ってたんでな!さすがは莉緒だぜ!」

「もう、お父さんったら・・・私はご飯の準備をしますね」

「おお、久しぶりの莉緒の手料理だ!!楽しみだぜ!」


 今にも鼻歌を歌いそうな勢いで舞い上がっている誠也。実は前日に食材を買って下準備をしていたなんて言ったらまた調子に乗りそうだから言わないでおこうと思う。


 莉緒ちゃんが台所に行ったのを確認した誠也は突然頭を下げてくる。


「莉緒を預かってくれて助かった!恩に着るぜ!」

「そういう大事な話はもう少し事前にしておいてほしかったぞ」

「悪かったって。俺だってどうしようか迷ったんだぜ。だが、ここに1人で居させるのはどうしても心配でよ。頼れるのは弘人しか居なかったんだ」


 誠也の言う事もあながち間違いではない。当時の誠也はまだ十代だったし、ほぼ駆け落ちみたいな状態でしかも子供も出来たとなれば世間的に印象は良くないだろう。実際に両家の親族からは勘当同然になってしまっている。

 だからこそ誠也達は最も頼りになってくれるであろう人達の力を借りられなかったのだ。それは莉緒ちゃんが生まれて間もなく奥さんが亡くなってしまった時でも同じであった。正確に言うとその事を両家に伝えていなかったのだけど。


 しかし誠也が悲しみに暮れている時間は無かった。なぜなら生まれて間もない赤ん坊の莉緒ちゃんが居たからだ。

 とはいえ、ある意味で誠也にとっては救いでもあったかもしれない。最愛の人との間に生まれた莉緒ちゃんを育てる事で頭が一杯にならざるを得なかったのだから。


 ・・・まあ、そのせいであれだけ莉緒ちゃんを溺愛してしまったのだが。

 それからは俺も巻き込まれてドタバタな日々を送る事になるのだけど、それはまた別の話である。


「はぁ、マジで突然だけは止めてくれよ?」

「わりぃ、気を付けるわ」


 と言いつつも直らないんだろうなと半ば諦めてはいる。

 しばらく雑談をしていると莉緒ちゃんからご飯が出来たと呼ばれたので3人で食べる。


「美味い・・・美味いぞぉ~!!」


 感涙を流している誠也を見て俺と莉緒ちゃんは互いに苦笑するしかなかった。

 その後は3人で雑談したりゲームをしているとあっという間に夕方になっていた。


「さてと、そろそろ帰るかな」


 俺が腰を上げると誠也が声を掛けてくる。


「泊まっていかねえのか?」

「たまには親子2人で過ごした方が良いんじゃないか?」


 そう答えると誠也はニッと笑みを浮かべる。


「はっ、気を遣わせちまったな。ま、今回は弘人の言う通りにさせてもらうとするか。莉緒も良いか?」

「うん、分かった。弘人さん、お父さんがご迷惑をお掛けしました」

「まあいつもの事だしね。じゃあまた明日かな」

「おう!またな!」

「ありがとうございます、弘人さん」


 2人に見送られて俺は帰路へ着くのだった。

お読みいただきありがとうございます。

誠也の物語を書こうとすると中編くらいにはなりそうです。ひょっとするとどこかで書くかも?


それとヒロインの一人である空町彩音のイメージもAIイラストで作成してみましたので、興味があれば活動報告のURLからご覧ください。

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