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第74話 朝のアクシデントと帰宅と体調不良

お待たせしました。

「セ〜ンパイ、おはようございます!」


 仙堂が元気に挨拶してくる。


「ああ、おはよう」


 俺が挨拶を返すと仙堂は突然俺に顔を近付けてくる。


「お、おい、何しようしてるんだ!?」

「そんなの決まってるじゃないですか〜おはようの、キ・ス・ですよ♪」

「は、はぁ!?ちょっと待て!やめるんだ!」

「待ちませんしやめません♪」


 俺は顔を近付けてくる仙堂から離れようとするもなぜか身体が動かない。

 俺が焦っている間にも仙堂の顔が迫っており、ついに唇と唇が触れそうに・・・




「はっ!?」


 パチッと勢いよく瞼を開けると見慣れない天井が見える。そうだ、昨日は大雨で家に帰れずホテルに泊まる事になったんだ。


「夢か・・・」


 俺はホッと胸を撫で下ろす。それにしても何という夢を見てしまったのか。やはり仙堂が隣のベッドで眠っているせいか?


「ん?」


 ふと隣のベッドに視線を向けると仙堂が居ない。最初は浴室かトイレに行ってるのかと思ったけど、物音がしないなら違いそうだ。

 それにどこか違和感がある。何がおかしいのかと少し考えてみると、ベッドがシワも無く綺麗に整っている事に気付く。仙堂が整えたのだろうかと思いすぐに否定する。俺の知る限りここまで几帳面ではなかったはず。というか一度もベッドを使用していないと言われた方が自然なくらいだ。


 いや待て、それよりも明らかにおかしい事がある。


 何で俺のベッドの掛け布団がこんなに盛り上がっているんだ?しかもどこか暖かさがあるし、何か柔らかい感触を腕から感じる。

 まさか、と嫌な予感が駆け巡り、掛け布団を剥がすとそこには、


「スゥ・・・スゥ・・・」


 穏やかな寝息を立てて眠る仙堂の姿があった。


「はぁ!?なっ!?」


 驚きのあまり一瞬頭が真っ白になる。一体どうなっているんだ!?昨晩はベッドに入ってから今まで記憶が無いからずっと眠っていたはず。何も疚しい行為など一切していないと断言できる。


 ・・・という事は?


「・・・ん〜うん〜」


 その時ちょうど仙堂が身じろぎをしてゆっくりと瞼が開いていく。


「・・・ん~?ふぁ、おふぁようふぉふぁいまひゅ、しぇーんぷぁい〜」


 にへらと呑気な笑みを浮かべる仙堂を見て少しだけイラッとしてしまった。


「せぇ〜んどう〜!!」


 俺が少し大声を出すと仙堂の瞼がパチッとはっきり見開かれてキョロキョロと周りを見る。


「・・・あ、あはは〜せ、センパイおはようございます〜今日は良い天気で・・・」

「仙堂」

「な、何でしょう?」

「正座」

「え?」

「早く正座!」

「は、はい〜」


 仙堂は寝起きとは思えないスピードですぐさま正座した。


「さて、どういう事か説明してもらおうか」




「うぅ、すみませんでしたぁ・・・」


 10分後、そこにはしゅんとなって顔を俯ける仙堂の姿があった。

 俺は仙堂から事情を説明してもらい、その後で少々苦言を呈させてもらった。どうやら少しでも俺の身体を暖めたいと思っての事らしく(本当かどうかは分からない)、気付いたらそのまま眠ってしまったらしい。

 正直言ってさすがにやり方がぶっ飛び過ぎている。もし逆の立場だったら下手をすると警察沙汰になりかねない状況だろう。

 こういう行動をすると危ない状況に陥る可能性がある事は仙堂の方がよく分かっていそうなはずだが・・・


「気遣いはありがたいけど限度があるからな?」

「はい、反省してます・・・」


 仕事以外の事で注意するのはどうかと思ったけど、今後の事を思うと言わずにはいられなかった。


「よし、この話は終わりにしよう。もう少ししたら帰る準備をするぞ」


 仙堂が素直に頷いたのを見てわずかに安堵する。本当はもっとゆっくりしても良いところだけど、莉緒ちゃんの様子を早く見ておきたいし、何より


(昨日よりも体調が悪化している・・・)


 という点だ。昨晩寝る前は頭が少し痛いかなという程度だったのが、今は明確に頭が痛いのと喉にも少し痛みが出てきている。やはりずぶ濡れの状態が良くなかったらしい。

 この後は帰る準備を早々に済ませてホテルを出た。天気も良く電車も運行が再開していたのは幸いであった。

 仙堂に余計な気遣いをさせたくなかったので、出来るだけいつも通りに振る舞うよう意識した。これも仙堂が大人しかったおかげもあって気付かれる事は無かった。


「お疲れ様でした!」

「ああ、お疲れ。また月曜日に」


 新幹線へ乗り継いで地元に戻ってきたところで仙堂と別れる。元気に挨拶してきたところを見る限りある程度気分も戻ったようだ。月曜日にはいつも通りの姿を見せてくれるだろう。


 問題は俺の方が月曜日に出張出来るかどうかだ。移動中もどんどん体調が悪化していき、今では温度の高さが原因ではない身体の火照りを感じる。

 風邪薬のストックは確か有ったはずだから途中薬局に寄る必要は無い。俺は必死に車を運転して直接アパートへ向かう。


「ふぅ、何とか着いた・・・」


 最後の気合を振り絞ってアパートに到着して玄関の扉を開けて靴を脱いだ瞬間、緊張の糸が切れたかのように力が抜けていった。


『っ!!弘人さん!?』 


 遠くで誰が俺の名を叫ぶ声が聞こえた気がした。

お読みいただきありがとうございます。

来週はTCGの地区大会があるのでデッキ調整していきます。

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