第71話 後輩と出張4
お待たせしました。
「本日落雷の影響で電気系統が故障したため、運転再開は明日以降になります!繰り返します・・・」
駅員が大声で説明をしている様子を見た俺と仙堂はお互いに顔を見合わせる。
「・・・ちょっとやばくないですか?」
「ああ、やばいな」
「どうします?タクシーで新幹線の駅まで行くしかないですかね?」
「あの大行列を見てもか?」
「あ〜・・・」
仙堂が苦い表情を浮かべる。なぜなら明石野さんに送ってもらって車を降りた時にチラッとタクシー乗り場を見たけどすでに数十人が並んでいたからだ。おそらくは今も順調に行列を伸ばしているはずである。そもそも電話した時にタクシーがどこも空いていなかった時点でさらに時間が掛かるであろう事はお察しなのだが。
「先程の方に戻って来てもらって送ってもらうというのは・・・」
「仙堂は他社の人間にそんな図々しいお願いが出来るのか?」
「言ってみただけですって!もう、センパイは冗談が通じないですね〜」
「割と本気に聞こえたのは気のせいか?まあここから新幹線の駅までだいぶ距離があるから、大雨の中だと事故のリスクだって出てくる」
「ですよね・・・」
そうなると思いつく選択肢は1つ、か。
「今日はここで宿を取るか」
「えっ!?今日は帰らないんですか?」
「ああ、むしろ今の状態で帰る方がリスクがありそうだ。幸い今日は金曜日だから明日の出勤を考える必要が無い。まあ状況は墨山課長に連絡しておかないといけないけどな」
俺の提案を聞いた仙堂は少し考えた後、
「・・・分かりました、センパイの指示に従います」
頷いて賛同してくれた。
「もし明日に何か予定が入っていたのなら、すまないが調整してくれ」
「いえ、明日は特に予定が無いから大丈夫です」
「そうか。じゃあ俺は墨山課長に連絡するから、その間で仙堂は周辺のホテルを探して予約状況を確認しておいてくれないか?もし可能なら予約もしておいてほしい」
「はいっ、お任せください!」
俺は仙堂の元気な返事を聞くと、連絡をするために少し場を離れる。
あとは莉緒ちゃんにも今日帰れない事を連絡しておかないとな。独りにさせてしまうのは少し不安だから彩音さんにフォローをお願いしてもらう方向で考えよう。
これは後でお礼をしないとな、と思いながら俺は会社用の携帯電話を取り出すのだった。
数分後、墨山課長に状況を説明し、莉緒ちゃんと彩音さんにメッセージを送った後で戻ってくると、スマホの画面とにらめっこをしている仙堂を見つけた。
「どうだ、ホテルは予約出来そうか?」
俺が声を掛けると仙堂は顔を上げて視線を向けてくる。
「あっ、センパイ。一応予約は出来そうなんですけど、駅から10分くらい歩いた場所しか空いてませんでした」
仙堂の話では駅前にあるホテルが全て満室になっていたらしい。おそらく他の人も同じ結論に至って近場のホテルから予約が埋まっていったのだろう。
「いや、予約が取れそうなら良かった。すぐに予約を頼む」
仙堂は頷くとすぐにスマホを操作して予約を完了させたようだ。
「予約を取りました!」
「よし、ホテルへ向かう前に駅前で夕食を食べてから行くか」
「賛成です〜!あとコンビニにも寄りたいです。傘とか色々買っておきたいですし」
「確かにな。だが買うなら傘よりレインコートの方が良いぞ。この大雨の中じゃ傘を使ってもびしょ濡れになりそうだ」
「あっ、そうですね〜売っていれば良いですけど」
「じゃあ先にコンビニへ行こう。早い者勝ちになりそうだからな」
こうして先にコンビニへ向かった結果、仙堂は残り1着となったレインコートを購入出来たけど、俺は大きいビニール傘も買えず折りたたみ傘のままホテルへ向かう事になったのだった。
「センパイ、大丈夫ですか?」
何とかホテルに着き、仙堂が心配そうな表情で見つめてくる。
「大丈夫、と言いたいが正直なところあまり良くないな」
大雨の中で差す折りたたみ傘は気休め程度にもならずかなりびしょ濡れになってしまった。全身に濡れた服が貼り付いていてかなり気持ち悪い。
ちなみに途中にコンビニが2軒あったけど、いずれも雨具が売り切れていたのでどうしようもなかった。
「早くお風呂に入らないと風邪を引いちゃいますし、すぐにチェックインを済ませましょう」
「そうだな」
2人でホテルのロビーへ向かうけど、まさかこの後にさらなるアクシデントが起こるとは思っていなかった。
「ご予約はダブルルーム1部屋で宜しかったでしょうか?」
は?何だって?
お読みいただきありがとうございます。
出張編が思ったよりも長くなってしまいました。多分次で終わると思います。




