第70話 後輩と出張3
お待たせしました。
展示会で有意義な時間を過ごし、会場を出た俺と仙堂に待ち受けていたのは雷が鳴り響く大雨の光景であった。
「うわ、マジか・・・」
大雨とは聞いていたけど、まさかここまで土砂降りになるとは思わなかった。
多分ゲリラ豪雨というやつだな。しばらくすれば雨足も少しはましになってくれるだろう、と思っていた。
「センパイ、大雨が深夜までずっと続くって予報が出てます・・・」
スマホで今後の天気予報を調べていた仙堂が珍しく困った表情を浮かべながら呟く。
「おいおい・・・」
冗談じゃないかと一縷の望みをかけてスマホから調べてみるも結果は無情だった。俺達が居る場所の雨雲レーダー予想を見ると確かに深夜までずっと厚い雲が覆っていて、しかも降水量も多い状態が維持されるようであった。
「仕方ない、すぐにタクシーを呼ぶか」
そう思って事前に確認していた複数のタクシー会社に電話をしてみたのだけど・・・
「ダメだ、どこも捕まらない」
返答はどこも『全て出払っている』とのこと。しかも最低でも1時間以上は空車が出ないだろうという補足まで同じであった。どうやら他の人々も考え付く先は俺達と同じだったという訳である。
「完全に出遅れましたねぇ・・・」
「だな」
それにしても困ったな。こうなるとタクシーが空車になるまで待つか、もしくは・・・
「センパイ、それは止めておきましょう!」
仙堂はズイッと俺に詰め寄ってくる。
「まだ何も言ってないが?」
「言わなくても分かります。どうせここから歩いて駅まで行くしかないとでも考えていたんじゃないですか?」
「・・・・・」
「沈黙は肯定と同じですよ?」
まあ選択肢が限られているのだからすぐに考え付くのは当然である。
「歩いて行けない距離じゃないですけど、少なくとも30分以上はかかりますよね?折りたたみ傘1つしかないのにこんな大雨の中で長時間歩いてたら確実にずぶ濡れになるじゃないですか。絶対に嫌ですよ!」
仙堂の言い分は尤もである。俺だってこんな大雨の中を歩きたくはない。
「しかしそうなるとタクシーが空くまで・・・」
「今日はお疲れ様でした」
俺の言葉を遮るように声が掛かったので視線を向けると、そこには明石野さんが居た。
「お疲れ様です、明石野さん。今日は終わりですか?」
「ええ、一通りご案内も出来たのでそろそろお暇しようかと思っています。お二人はどうされるのですか?」
「・・・実は帰ろうと思っていたのですが、タクシーがどこも空いてなくて。さすがにこの大雨の中歩くのは厳しいのでどうしようかと仙堂と話をしていたんです」
「なるほど・・・・それなら車で駅までお送りしましょうか?今日は荷物もあったのでちょうどレンタカーで来ていましてね」
正直言って明石野さんの提案はとてもありがたい思った。仙堂もこれでもかと頷いていることだし、少々恐縮ではあるけど今回はお言葉に甘える事にしよう。
「すみませんがお願いできますか?」
「いえいえ、このくらいはお安い御用です。ここに車を持ってきますので少々お待ち下さい」
「ありがとうございます!」
こうして俺達は運良く明石野さんのレンタカーに乗せてもらう事になった。
しかし、この先に更なる問題が待ち受けているなんて今の時点で知る由もなかったのである。
「助かりましたね〜」
「ああ、明石野さんには借りが出来てしまったな」
明石野さんの厚意がなければ、あのまま会場でタクシーを長時間待つ事になったはずである。まだまだ雨足が衰える気配も感じないので本当に良かったと思う。
「ほらほらセンパイ、早く行きましょ!」
仙堂が俺の右腕を掴んで強引に歩みを進めようとする。
「おいおい、そんなに引っ張るなって」
突然急かしてくるなんて仙堂は余程早く帰りたいのだろうか?まあ俺もかなり疲れたので早く帰りたいとは思っているが。
「あれ?」
駅舎内に入るとすぐに仙堂が首を傾げる。一体どうしたんだ?
「人が多いですね。ひょっとして帰宅ラッシュに重なっちゃいました?」
仙堂の言う通り駅舎内はかなりの人で溢れかえっていた。確かに時間帯でいうと帰宅ラッシュに遭遇してもおかしくはない。しかし漂ってくる雰囲気はどこか異様で、時折大きな声が聞こえてくる。
「いや、何か様子が変だ。とにかく行ってみよう」
人が特に集まっている方へ歩を進める先に目にしたのは、
『落雷により電気系統が故障した影響で本日の運転は見合わせ』
という電光掲示板の文字と駅員さんが説明している場面であった。
・・・ん?もしかして今日は帰れないのでは?
お読みいただきありがとうございます。
最近になってようやく朝晩が涼しくなってきましたね。




