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第69話 後輩と出張2

大変お待たせしました。

「着いた~」


 電車を降りると仙堂は大きく伸びをする。まあ新幹線と在来線合わせて3時間以上電車に乗っていたのだから身体を伸ばしたくなるのは当然といえる。

 俺と仙堂は会場がある最寄りの駅にようやく着いたところである。


「うう、暑いですねぇ〜」

「夏だからな」


 冷房が効いていた駅構内から外に出たから余計にそう感じるだろう。まあ太陽が厚い雲に覆われていて日光が照りつけてこないだけましといえる。


「そういえばこの辺は今日の夕方から雨が降るらしいぞ」

「えっ、そうなんですか!?」

「ああ、調べてみればすぐに分かる」


 仙堂がスマホを取り出して天気を調べるとすぐに表情が曇る。


「うわ、本当ですねぇ。しかも大雨が降るみたいな予報になってるじゃないですか」

「ああ、一応折りたたみ傘は持ってきたけどな」


 実は今日の天気を教えてくれたのは莉緒ちゃんである。出掛けるという声を掛けた後に俺が玄関から出ようとしたところで莉緒ちゃんに呼び止められ、折りたたみ傘を渡されたのだ。


『出来れば早く帰ってきて欲しいです』と莉緒ちゃんが心配そうな表情を浮かべていたのも頷けるというものである。


「ずるいです!いざとなったらセンパイの傘に入れてもらいますからね!」

「ずるいって意味が分からん・・・まあ入れるのはいいけど、折りたたみ傘だし多分気休めにしかならないぞ?」

「その時は仲良くずぶ濡れですね!」

「まったく何言ってるんだ。ほら、さっさとタクシー乗り場へ行くぞ」

「あ、待ってセンパ〜イ」


 俺の後を追うように仙堂が慌てて向かってくるのだった。




「へえ~、結構人が多いですね〜」


 タクシーに乗って会場に到着して中に入ると仙堂が開口一番で声を上げる。

 会場内のホールはかなりの広さで様々な企業のブースが並んでており、仙堂の言うように人もかなり居た。イベントによっては人がまばらで少ない時もあるけど、今回は規模が大きめなのと大企業がいくつも参加しているというのが理由だろう。


「さて、どこから行こうか・・・」


 と考えていると、


「おや、神白さんではありませんか」


 後方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとそこには黒縁の眼鏡を掛けた同年代くらいの男性が居た。


「どうも。お久しぶりですね、明石野(あかしの)さん」

「ええ、ご無沙汰しております。この前お会いしたのは年明けのご挨拶の時でしたから半年以上は経ってますね」

「もうそのくらい経ちますか。最近になってどんどん時間が過ぎるのが早くなっている気がしますよ」

「はは、おっしゃる気持ちは分かります・・・それで、こちらの方は?」


 明石野さんが俺の隣、つまり仙堂に視線を向ける。


「は、初めまして。仙堂と申します!」


 少し慌てながらも仙堂は名刺を取り出して挨拶をする。


「これはご丁寧にありがとうございます。私は明石野と申します」


 仙堂と明石野さんは互いに名刺交換を済ませる。この場は俺が取り持って紹介した方が良いか。


「明石野さんは名刺に書いてある通り島蓮テクノスの営業の方だ。大手電気機器メーカーの貴河電機(たかがわでんき)をはじめ様々なメーカーの代理店なんだ」

「あっ、購入システムで見た事があります!まだ利用した事は無いですけど」

「仙堂が担当している製造ラインでも貴河電機製のものが多く使われているから、そのうちお世話になる機会が増えると思うぞ」


 代理店の営業担当と懇意にしておけば色々と便宜を図ってくれる。仙堂はまだ2年目だし、取引をする相手に広く顔を覚えてもらう事も仕事をするうえで重要である。


「明石野さん、彼女は昨年入社した若手の社員です。今は私が教育係となって色々と教えているところなんですよ」


 俺の言葉を聞いて明石野さんが少し目を見開く。


「ほほう、それはそれは。神白さんが指導するのであれば間違いないでしょうね」

「はいっ、尊敬出来る素晴らしい先輩です!」

「お、おい、仙堂・・・」


 お世辞だったとしても直接言われるのは恥ずかしいのだが・・・。


「ははは、後輩社員にも慕われているようで何よりですね」

「そうだとありがたいですよ。ところで招待状はもしかして明石野さんが?」

「はい、私が墨山様宛にお送りしたものですね」

「なるほど、そうでしたか」


 俺が納得していると明石野さんが腕時計で時間を確認していた。


「神白さん、もしよろしければご同行いただけますか?あと数分で貴河電機様の新製品をご紹介する時間になるのですよ」


 そう言って明石野さんはカバンから冊子を取り出して渡してくる。


(おっ、これは気になっていた製品だな)


 今後の参考にもなりそうだし、最初に聴きに行くのも良いかもしれない。


「そうですね、お願いします。仙堂も良いか?」

「はいっ、大丈夫です!」

「ではご案内します」


 こうして明石野さんの案内でブースへと移動を始めるのだった。




「ふう、疲れました・・・」


 そう呟く仙堂の表情にはありありと疲労の色が見える。

 明石野さんの案内で貴河電機のブースへ行き説明を聴いた後、色々なブースを歩き回っては製品の説明を聴いた。その間で明石野さんと同じような知り合いに会い、都度仙堂を紹介していった。

 体力的にも精神的にも疲れるのは当然だろう。

 とはいえ仙堂の顔も覚えてもらったし、色々な新製品も見れたので有意義な時間だったと思う。


「まあな。さて、展示会終了までまだ時間があるけどそろそろ帰るか」


 展示会はあと1時間程度残っているけど、すでに夕方の時間帯になっている。これ以上居ると帰りがかなり遅くなってしまう。


「賛成で〜す」


 仙堂も異論はないようなので会場を出たのだけど・・・


「うわ、マジか・・・」


 俺と仙堂が見たのは時折雷が鳴り響き、文字通りバケツをひっくり返したような雨が降る光景であった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

ヤバいくらいに忙しかった仕事が落ち着いて一時期かなり疲れていましたが、ようやく執筆するモチベーションが戻りつつあるので少しずつ更新していこうと思います。

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