第66話 ???の独白
お待たせしました。5章開幕です。
出会いと別れの季節。
これで一般的にイメージするのは春だろう。学生であれば卒業式、入学式、進級と様々なイベントがあるからだ。
社会人になると学生に比べて想像しにくくなるけど、全く無いという訳ではない。
だけど???の場合は違う。どうしても夏をイメージしてしまう。
理由はあの時の事。夏のある日、一緒に花火大会に行こうと約束していた。
とても楽しみにしていた。早くその日が来てほしいと待ち遠しかった。
だけど、約束は果たされなかった。
突然親の都合で海外へ行く事になったからだ。
離れたくなかった。珍しく我が儘まで言ったけどダメだった。
今度は逆に時が止まれば良いのにと強く願い始めた。1日が過ぎていくのがこんなに辛くなるなんて思ってもみなかった。
そんな気持ちとは裏腹に時間はどんどん進み、花火大会が始まる前に日本を離れていった。
最初のうちは寂しくて悲しくてたまらなかった。はっきり言って知らない土地で馴染めるかどうかの不安よりも遥かに大きかった。
そして同時に怖かった。時間が抱いている想いを忘れさせてしまうのではないか、と。
だけど、結果から見ると杞憂だった。むしろ想いはどんどん膨らんでいくばかりだった。
・・・そして十数年後。
再び日本へと戻って来た。すぐにでも会いに行けたし、何よりも会いたかった。
だけどもう忘れられているのではないかという想いが頭を過ぎって一歩を踏み出せなかった。
普段の言動とは程遠い臆病さに失望しそうな心境だった。
いっその事関係をリセットして再構築しようと考えた。それなら気兼ねなく会いに行けると。
その試みは半分成功し、半分は失敗した。まさかあんな事になっているとは思いもしなかった。いや、正確に言うと思いたくなくて無意識に選択肢から外していたのだ。
・・・いい加減覚悟を決めよう。
踏み込む気持ちと、あの日果たせなかった約束を果たすために。
そして、停滞していた時間を進めるために。
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