第65話 テスト結果と誘い
大変お待たせしました。
「弘人さん!」
夕食を終えた後、莉緒ちゃんが片手に何かの紙を持って俺の隣に座ってくる。
「どうしたんだ?」
「期末テストの結果が全て出ました!」
「おう、どうだった?」
莉緒ちゃんの言動で予想は付いているものの、気付かないフリをして聞いてみる。
「これです!」
莉緒ちゃんは手に持っていた紙を渡してくる。なるほど、テスト結果が書かれている紙だったという訳か。
俺は莉緒ちゃんから紙を受け取って中身を確認する。
「おお、すごいじゃないか」
俺は素直に感心する。全ての教科が90点以上なのは予想通りだったけど、半分近くは満点を取っていたのだ。順位も前回と同じく学年1位である。
「えへへ、頑張っちゃいました」
莉緒ちゃんが照れ笑いを浮かべる。確かに今回は友達とも勉強会を何回かしていたし、中間テストの時よりも気合が入っているように見えた。
テストの成績を伸ばすためにご褒美を用意するというやり方は賛否があるのかもしれないけど、莉緒ちゃんの場合は普段から予習と復習といった勉強の習慣が身に付いているので一時的なものにはならないだろう。
「目標達成、だな。ご褒美は何にするか決めてる?」
「・・・実はまだ決まっていないんです」
莉緒ちゃんが困ったような表情になる。色々と考えているらしいけど、ピンくるものが浮かんでいないそうだ。
「まあ、ゆっくり考えれば良いんじゃないか?時間はたっぷりあるし。もうすぐ夏休みだよね?」
そう、期末テストが終わったという事は夏休みが近い事を意味する。学生にとっては嬉しい長期の休みだろう。
「はい、あと1週間後が終業式ですね」
つまりあと1週間経つとでしばらく送迎はお休みという事か。
「高校時代の夏休みは貴重だし、友達と一緒にどこか出掛けてみるのが良いと思う」
高校時代の夏休みは3回あるけど、3年生になると受験勉強で自由な時間があまり取れないから実質2回と言っても良い。
口で言うのは恥ずかしいけど、青春真っ只中な時期を楽しく過ごしてほしいと思う。
「はい、友達と色々話をしています。なので少し帰りが遅くなる事もあるかもしれません」
「了解、気にしないで行ってくると良いよ」
「ありがとうございます!それで、弘人さんはどうですか?」
「ん?俺か?まとまった休みはお盆しかないな。まあ今回は仕事が1日しか入ってないから、ある程度ゆっくり休めると思う」
俺の言葉を聞いた莉緒ちゃんは少し考え込んだ後、おずおずと口を開く。
「ではどこか一緒に出掛けませんか?」
「俺と?別に気を遣わなくても・・・」
「いえ、気を遣っている訳ではありません。友達との交流も大事ですけど、弘人さんと一緒に思い出作りをするのも同じくらい大事なんです」
真剣な表情で答えているのを見る限り嘘ではないのだろう。慕ってくれているのが分かるから嬉しくはあるけど、友達とかを優先してほしいという気持ちもあるから複雑である。
「分かった、そうしようか」
とはいえここまで言われて断るのはかえって良くない。それに、俺とて莉緒ちゃんと出掛けるのは楽しいからな。
「やったっ!」
莉緒ちゃんの嬉しそうな表情を見ると俺まで楽しい気分になってくるから不思議である。
「さて、どこに出掛けよう・・・」
俺が言葉を続けようとしたところでインターホンが鳴る。
誰だろうとインターホンのモニターを見ると、そこに映っていたのは
『こんばんは』
律儀にお辞儀をして挨拶する彩音さんの姿があるのだった。
「どうぞ」
「ありがとう、莉緒さん」
麦茶を持ってきた莉緒ちゃんにお礼を言う彩音さん。どうやら俺達に何か話があるそうなのでリビングへと招き入れたのだ。
莉緒ちゃんが隣に座ったところで俺は口を開く。
「それで、話というのは?」
「まずヒロさんに確認したいのですが、お盆はいつお休みの予定ですか?」
「えっと、12日から16日までは休みかな」
俺の答えを聞いた彩音さんが笑顔を浮かべる。
「それならちょうど良かったです」
「ん?良かったとは?」
「実は12日から15日に別荘へ行く予定でして、もし宜しければお二人もご一緒にどうかと思っていたのです」
「別荘、だって?」
少し驚きながらも内心ではどこか納得してしまった。今までの経済状況を見ても別荘を所有していてもおかしくないと思ったからである。
「ええ、毎年お盆の時期になると家族で別荘へ出掛けるのです。ただ、今年は両親もお祖父様も予定が入ってしまって私1人だけなのです。最初は取り止めにしようかとも考えたのですが、もしお二人の予定が空いているのであれば行こうかと思いまして」
「なるほど・・・俺は特に予定が無いし大丈夫。莉緒ちゃんはどう?」
「私も行きたいです!」
こうして、お盆休みに彩音さんの別荘へ行く事が決定したのだった。
[彩音視点]
「うふふ〜」
私は上機嫌で部屋へ戻ってきました。本当に上手く予定が合って良かった。
これで距離を少しでも詰めなければ。
私は視界に入った写真立てを手に取る。
「ねえ、貴女はどう思っているの・・・なーちゃん」
様々な思いを内に秘めながら私は呟くのだった。
・・・高校生くらいの男の子1人と小学生になるかならないかくらいの女の子2人が写っている写真を見ながら。
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回で4章が終わりになります。
次回からは5章が始まりますが、少しずつ人間関係にも変化を入れていこうと思います。
引き続き不定期の更新になりますが楽しんでいただけると幸いです。




