表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/93

第55話 後輩の手料理

大変お待たせしました。

 週末の土曜日。


 今日は仙堂が手料理を披露すると約束していた日でもある。

 俺は車を近くのパーキングに停め、仙堂が住むマンションまでやって来た。

 ちなみに莉緒ちゃんは友達と遊びに行くという予定が入ったので家には居ない。ある意味でタイミングが良かったともいえるだろう。


 マンションのエントランスに入ると管理人さんがちょうど居て「こんにちは」と軽く挨拶をしてくれる。ここに来るのはまだ3回目だけど、すっかり顔を覚えられてしまったようだ。まあ前に訪れた2回がそれだけ印象的だったという事か。


 俺は自動ドア前に設置されている番号付きインターホンまで行くと、仙堂の部屋番号を入力して呼び出しボタンを押す。


『は~い、どちらさまですか~?』


 程なくスピーカーから間延びした仙堂の声が聞こえてくる。


「神白だけど」

「あっ、センパイでしたか!すぐに開けますね〜」


 スピーカーから声が途切れると前にある自動ドアが開いたので通り抜け、エレベーターの中へ入って『5階』のボタンを押す。

 5階に到着するとエレベーターから出て仙堂の部屋前までやって来る。

 インターホンを押すと中から『すぐに行きます~』と声が聞こえ、部屋のドアが開けられる。


「センパイ、お疲れ様です〜」

「おう、お疲れ・・・って何だその格好は!」

「えっ?何かおかしいところでもありますか?」


 仙堂が不思議そうな様子で自分の身体を見回している辺り、どうやら本当に意識していないらしい。


「いや、露出度が高過ぎるだろ」


 仙堂の服装は上が薄いピンクのキャミソールだけで豊満な胸が惜しげもなく晒されているし、下も白のホットパンツで生足がこれでもかと強調されているのだ。


「え〜、夏の部屋着だったらこれくらいが普通じゃないですか?」

「それは仙堂の普通であって俺の普通ではないぞ」


 俺が知っている限りだと莉緒ちゃんは仙堂程ではないし、絵菜に至っては上下スウェットなので露出は高くない。


「ん〜、友達も結構こんな感じですけどね~。あ、もしかして興奮しちゃいました?」


 急にニヤニヤした笑みを浮かべる仙堂。いつも俺を揶揄う時の表情である。


「何言ってんだ。まあ目のやり場には困るから着替えてほしいんだが」

「嫌ですよ。何で部屋着の事でいちいちセンパイに指図されなきゃならないんですか」

「恋人でも何でもない男が部屋に上がるんだから気を遣った方が良いんじゃないか?流石に無防備過ぎると思うぞ」


 すると仙堂がわざとらしく一歩後ろへと下がる。


「え、まさかセンパイ私を襲うつもりなんじゃ・・・」

「襲う訳ないだろ!」

「じゃあこのままでも良いですよね〜。さ、早く上がってください」


 そう言うと仙堂はさっさと部屋の奥へと去っていった。どうやら着替えるつもりは全く無さそうである。


 俺は小さく溜め息を吐いて仙堂の後を追うのだった。




「おお、これは・・・」


 リビングに入ると、テーブルの上には様々な料理が並べられていた。どれも彩りが豊かで家庭的な料理というよりは見映えを意識した印象を受ける。


「ふふん、見ましたかセンパイ!これが私の実力です!」


 両手を腰に当ててドヤ顔をする仙堂。うん、これは素直にすごいと思うけど・・・


「味はどうなんだ?」


 例え見映えが良くても一番重要なのは味だと思う。


「むむ、失礼ですね!ちゃんと美味しいですから余計な心配ですよ!あ、でもその前にちょっと待ってください」


 仙堂は寝室からスマホを持ってくると料理を様々な位置から撮影をし始めた。


「SNSにアップするのか」

「これが目的でもありますからね~」


 言っている間にもどんどん撮影を進めていく仙堂。中には同じ位置から何枚も撮影している場面もあったけど意味があるのだろうか?


「ふう、こんなところですかね。センパイも座ってください」


 仙堂に言われて俺は対面に座る。それにしても2人分にしては少々多い気がする。


「あ、食べ切れなかった分は夕食に回すのでご心配なく」


 俺の心情を読んだかのように仙堂が付け加えてくる。時々こんな事があるけど、ひょっとしたら表情に出ているのかもしれない。


「ささ、どうぞ食べてください」


 勧められるまま、俺は「いただきます」と小さく呟いて箸を持つ。


「これはどういう料理だ?」


 一番手前にある魚と野菜が綺麗に盛り付けられた料理を訊いてみる。


「それは鯛のカルパッチョですね」


 なるほどカルパッチョか。今まで食べた事無いからどんな味がするかも分からない。

 俺は鯛と野菜を箸で掴んで口に運ぶ。


「おお、美味いな」


 さっぱりとした味付けで食べやすい。他も食べてみないと分からないけど、どうやら味も心配なさそうで一安心である。


「とーぜんです!これで私が料理上手って分かったでしょ」

「ああ、疑って悪かったな」


 他の料理も食べてみてもどれも美味しい。今まで食べた事のない味が多くて新鮮な気持ちになるし、よく見ると栄養のバランスも考えられているように感じた。


「ふふ♪」


 仙堂は俺が美味しく食べている様子を見て満足そうな表情を浮かべている。


「仙堂は食べないのか?」

「センパイが一通り食べたら私も食べます。それと食べ終わったら1品ずつ感想を聞かせてもらえますか?今後の参考にしたいので」

「ん?俺で良いのか?そんな細かい感想は言えないぞ」

「色々な人から感想を聞きたいんで。・・・むしろセンパイの好みを知りたいんです」


 後半はかなり小声で聞こえなかったけど、仙堂の頼みなので頑張って感想を言えるように意識して食べてみるか。


 こうして俺は並べられた料理を次々と食べて進めていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ