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第54話 呼び出し

お待たせしました。今回は仕事関係の話が多いです。

「神白君、仙堂さん少し時間はあるかい?」


 事務所でデスクワークをしていたところに墨山(すみやま)課長から声を掛けられる。


「私は大丈夫です」

「このメールを送信してからであればいけます」

「ではメールの送信を終えたら2人で第1応接室まで来てくれ」


 そう言うと墨山課長は先に第1応接室へと向かっていった。


「何かあったんでしょうか?」

「さあな、俺は心当たりが無い。仙堂はどうだ?」

「私もないですね~」


 仙堂の表情を見ても本当に心当たりは無さそうである。墨山課長の様子を見る限り悪い話ではない気がするし、俺と仙堂の2人が呼ばれるという事は人事関係の話ではないだろう。


(となるとおそらくは・・・)


 何となく予想を付けたところでメールを送信し、仙堂と2人で第1応接室へと訪れる。

 ドアをノックしてから部屋に入り、墨山課長の対面に2人で椅子に腰掛ける。


「態々時間を取ってもらってすまない」

「いえ。それでどのような話でしょうか」

「まずはこれを見てほしい」


 墨山課長はノートパソコンを操作してプロジェクターに資料を映す。


「これは・・・」


 資料を見た俺は予想が当たった事をすぐに確信した。


「ふむ、神白君は何となく察していたようだ。実はこの設備を更新したいと製造現場から要望があった」


 墨山課長が前置きを述べた後に概要の説明に入る。


(なるほどな・・・)


 要するに対象の設備が40年以上経過して老朽化が進んでいるだけでなく、最近ではトラブルの起こる頻度が増えてきているため今回思い切って設備全てを更新をしたいという事であった。


 確かに40年以上経っているとなると設備トラブルのリスクがかなり高い。しかも40年以上前に設置された設備となると、例え当時で最新の部品が使用されていたとしても現在まで取り扱われている部品など皆無に等しい。ただ、仮に壊れた部品がEOS(サポートが終了の意味)であっても、大半は後継品や代替品が出ていたりするので対処がある程度可能ではある。


 問題は取り扱われなくなった部品に後継品や代替品が無い場合である。もしその部品が今壊れてしまったら、どうしようも出来ず設備を復旧する事が出来なくなってしまう。

 そうならないために多くの部品はすぐにでも復旧出来るように予備をいくつか購入しておくのだけど、結局のところその部品が買えなくなるといつかは予備が無くなるので同じ結果に陥るのだ。


 だからこそ替えがきかない部品が買えなくなる前に設備を更新するのが理想である。しかし、設備に掛かる費用は莫大なので、そう簡単に更新するという決断に至るのは難しいのである。


 そして一通りの説明を終えた墨山課長が最後にこう述べる。


「設備更新自体は機械課の担当者が取り纏めをするが、電気課からも担当者が必要になる。そこで、本件の担当者に仙堂さんを据えようと思っている」

「えっ、私ですか!?」


 仙堂が大きく目を見開く。まさか指名されるとは思っていなかっただろうから当然の反応だと思う。


「そうだ。きっと良い経験になるはずだ」


 墨山課長の言う通り、この仕事をやり遂げれば仙堂にとって経験だけでなく大きな自信に繋がるはずである。しかし・・・


「墨山課長、今回の案件を仙堂が担当するのは少し早いと思いますが」


 確かに本件の主担当ではないとしても電気的な部分も様々な検討が必要である。それこそ仙堂みたいに2年目の社員では手に余る案件といえる。


「ああ、正直迷いはしたが仕事へのモチベーションと今後の成長を期待しての判断だ。勿論無理強いはしないし、断ったとしても評価には何も影響しない。ただ、このような大きな案件はそうあるものじゃないから挑戦してみてほしいという想いはある。どうだ、やってみないか?」


 墨山課長の問い掛けに仙堂は顔を俯けて考え込む。大きな仕事を貰える事はモチベーションにも繋がるけど、話を聞く限り俺が担当してもそれなりに苦労しそうな案件である。

 最初のうちは仕事で失敗しても良いと仙堂に言ってるけど、今回の設備更新は生産に大きな影響を与えるのでそう大きな失敗は出来ない。仙堂にも大きなプレッシャーが掛かる事だろう。


 俺としては墨山課長に申し訳ないけど、今回の案件を担当させるのはどちらかというと反対である。あと1、2年後に来た話であれば俺も賛成しただろうけど。

 ただ、それを決めるのは仙堂であって俺が決めて良い話ではない。


 仙堂が出した答えは・・・


「・・・やります。やらせてください!」


 仙堂は顔を上げて墨山課長を真っ直ぐに見つめる。その表情には強い決意が浮かんでいた。


「よく決断してくれた。大変だとは思うが頑張ってくれ。神白君は彼女のサポートを引き続き頼む」

「分かりました」


 仙堂がやると決めた以上は俺も最大限にサポートするつもりである。ただ、全てを教えてしまえば仙堂の成長を妨げることになるだろう。匙加減が難しいところだけど、この辺りは手探りでやっていくしかないな。


「それで、仙堂が担当するのは予算出しからですか?」


 このような設備投資案件は通常であれば予算枠を確保するためにあらかじめ予算出しを行う。予算出しは設備部門の仕事であり、これだけ大きな案件となるとそれなりに手間が掛かってくる。


「いや、予算出しはこちらでしておいた。ある程度余裕は持たせたつもりだが予算管理も意識はしておいてくれ」

「ありがとうございます」


 どうやら墨山課長が気を利かせてくれたようだ。まあ墨山課長は様々な大型案件だけでなく海外の製造工場建設を経験しているベテランであるので、予算出しの精度は間違いないだろう。


「資料は後程2人に送っておく。内容を確認して今後の取り進めを機械課の担当者含めてじっくりと話しておいてくれ」

「分かりました。機械課の担当者は誰ですか?」

「南野さんだ」


 やはり南野さんか。まあ本件の設備がある製造現場の担当者だし予想通りである。確か年齢は俺より5歳上で今年40歳だったはず。性格は穏やかながらも仕事はとても出来ると評判で、すでに管理職になっている有望株である。

 南野さんであれば仙堂との連携も上手く取れるだろう。


「他に質問はあるか?」

「いえ、ありません。仙堂はどうだ?」

「私もありません」

「では改めてよろしく頼む。あとここは少し長めに予約してあるから、話し合いにでも使用してくれ」

「お気遣いありがとうございます」


 墨山課長は軽く手を上げると第1応接室を出ていった。


「一応言っておくけど、結構大変な仕事だぞ?」

「覚悟はしてます。でもセンパイがフォローしてくれるならきっと上手くいきます!」

「おいおい、過度な期待はしないでくれよ。さて、資料を見ながら今後の取り進めを打ち合わせするか」

「はい!」


 こうして俺と仙堂は送られた資料を見ながら打ち合わせを始めるのだった。

お読みいただきありがとうございます。

最近車のタイヤを購入する事になりましたが、これも値上がりしてて結構な出費でしたね・・・

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