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第53話 3人で夕飯

お待たせしました。

 ピンポーン


 インターホンを鳴らすと玄関の扉が開き、水色のエプロンを付けた彩音さんが姿を現す。


「こんばんは。さあ上がってください」

「「お邪魔します」」


 翌日、引っ越しの手伝いをしたお礼で夕飯をご馳走するという誘いを受けて俺と莉緒ちゃんは彩音さんの部屋を訪れた。

 俺としては見返りを求めて手伝いをした訳ではなかったので最初は断ろうと思ったけど、彩音さんの有無言わせぬ様子に根負けした形となる。


「ちょっと来るの早かったか?」

「いえ、もうすぐ出来ますのでリビングで待っていてください」


 彩音に連れられてリビングにあるソファーに腰掛ける。


「おお、ウチにあるやつより座り心地が良い」


 ふんわりしながらもしっかりと受け止めてくれるというか、とにかく素晴らしい座り心地であった。


「気に入ってもらえたようですね。私もお気に入りなんですよ」


 彩音さんの話では実家から持ってきたらしい。俺の部屋にあるソファーも結構な値段がしたんだけど、これはもっと高そうだ。

 あと荷物整理の時にも思ったんだけど、ソファーだけじゃなく他の物もかなり高そうな気がするんだよな。ひょっとしたら彩音さんはかなり裕福なのかもしれない。


 いつものように隣に莉緒ちゃんが座り、雑談しながらしばらく待っていると料理が運ばれてくる。


「あ、手伝います」

「いえいえ、今日はお礼なのですから私1人にやらせてください。お気持ちだけありがたく受け取りますね」


 笑顔で答える彩音さんだけど、あの笑顔は莉緒ちゃんがはっきりと断る時に使う笑顔に似ている。どうやら手伝うのは止めた方が良さそうである。

 テーブルにはどんどん料理が並べられていき、肉じゃがや鯖の塩焼き、ほうれん草のおひたし等といった正に和食といった様相であった。


「意外でしたか?」


 彩音さんがご飯を入れた茶碗を持ちながら軽く微笑む。どうやら少し表情に出ていたらしい。


「ごめん、ちょっと勝手なイメージだったな」

「ふふ、いつもはカフェでしかお会いしていなかったのですから無理もありません・・・これからは私の事をもっと知ってもらいますから」

「えっ?」


 後半がよく聞こえなかったけど、最近こんな事が多い気がする。


「さっ、冷めないうちに召し上がってください」


 彩音さんの一言で各々が『いただきます』と声を上げる。

 俺はまず鯖の塩焼きを口に運ぶ。


「っ!?美味い!」


 脂の乗っているだけじゃなく身の旨味もすごく感じるし、焼き加減や塩加減も完璧と言って良い程である。


「!!これは・・・!?」


 隣に居る莉緒ちゃんも驚いた表情で呟いている。


「お気に召していただいたようで何よりです」


 対する彩音さんは満足そうな笑みを浮かべていた。


「これ、もしかしなくても普通の鯖じゃないな」


 明らかに料理の腕だけでは説明がつかない美味しさであり、この辺のスーパーで売られているような質ではないと思う。


「ええ、私が知っている限りで最高のものを取り寄せました」


 肯定するように彩音さんが頷く。という事は・・・


「まさか、今日の料理全てが・・・」

「ヒロさんの考えている通りです。全て最高の食材を揃えました」


 つまり、どれも一般のスーパーで売られているような食材ではないという事である。思わずいくらお金が掛かっているんだと想像してゾッとする。これ、どう考えても荷物整理と割りに合ってないと思うんだけど・・・。


「えっと、本当に良かったのか?」

「お気になさらないでください。いつもより少しだけ質が良い食材を揃えた程度ですから」


 これでいつもより質が少し良いというのなら、逆に考えると普段も相当良い食材を使っているという事である。どうやら彩音さんが相当裕福なのは事実のようである。


「莉緒さんはいかがですか?」

「・・・とても美味しいです」


 そう答える莉緒ちゃんの笑顔がどこかぎこちなく感じる。何か気になる事でもあったのだろうか。


「ふふ、良かったです。さあ、もっと召し上がってください」


 彩音さんの言葉で色々な料理に手を付けるも、どれも美味しくてその後は会話もせず夢中になって食べてしまった。


「ふう、ごちそうさまでした。とても美味しかった」


 味も量も大満足である。ご飯も結構おかわりしてしまったな。


「そう言っていただけると腕によりを掛けた甲斐があります。もし宜しければ毎日でもご馳走しましょうか?」

「い、いや、やめとく。こんな食材を毎日食べたら普通の食材で満足出来なくなる」


 というかそもそも毎日作るというのも冗談だろう。そこまでしてもらう理由が全く見当たらないんだけど。


「それは残念。でもたまには夕飯を付き合ってくれると嬉しいです。1人で食べるよりずっと楽しくなりますから」


「勿論。俺にとってもありがたい申し出だし」

「ありがとうございます。あっ、あと連絡先を交換しませんか?その方が色々と便利だと思います」

「確かにそうか」


 俺としては断る理由もないので彩音さんと連絡先を交換する。


「莉緒さんも良いですか?」

「はい」


 莉緒ちゃんも頷き、連絡先を交換してから俺と莉緒ちゃんは部屋へ戻っていった。


 それしても途中から莉緒ちゃんの表情が少し暗そうに見えたけど何かあったのだろうか。

 もし何か悩みがあるのなら遠慮なく言ってほしいと思いつつ休日が過ぎていくのだった。



[莉緒視点]


「むう、してやられました!」


 空町さんに夕飯をご馳走になり、弘人さんに割り当ててもらった部屋に入ると悔しさが込み上げてきます。


 空町さんが作った料理はとても美味しいだけではなく、全てが弘人さん好みの味付けになっていました。

 私がこの同居生活でようやく掴んできた味付けをどうやって身に付けたのでしょうか。それにあれだけ良質の食材を用意出来るという事は経済力もあるに違いありません。


 美人で経済力もあって気遣いも出来て料理も出来る大人の女性。男性からすると魅力的なステータスばかりです。

 強力なライバルが身近に現れて焦りを感じる一方で不思議に思うこと事もあります。


 弘人さん下の部屋に引っ越して来たのは本当に偶然なのでしょうか。私にはここに弘人さんが住んでいる事を知っていたような気がするのです。


「まさか、ストーカーとかではないですよね・・・?」


 いえ、それは飛躍し過ぎでしょうけど、警戒はしなければならない事に変わりはありません。

 明らかに弘人さんに好意がありますし、これから接触してくる機会も増えるでしょう。


「私も負けていられません!」


 改めて気合を入れつつ、私は明日の朝食の準備をするために台所へ向かうのでした。

お読みいただきありがとうございます。

最近は朝昼の温度差が大きいので体調に気を付けてください。

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