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第47話 林間学校前日

お待たせしました。

「じゃ、また遊びに来るから〜」


 3人で賑やか(?)な日々を過ごして数日後。絵菜はなんの前触れもなく実家へと帰っていった。まあ俺にしてみればいつもの事なので特に驚きはないけど、莉緒ちゃんは「え?え?」と戸惑っていた。


「あの、絵菜さん何か用事でもあったのでしょうか?」

「いや、特に無いと思う。突然来て突然帰るというのが絵菜のスタイルだから」

「そ、そうでしたか・・・また、会えるでしょうか?」

「どうかな、絵菜の気分次第としか言えないな」


 絵菜は今度も突然遊びに来るだろう。ただし、その時に莉緒ちゃんが同居しているかどうかは分からなかった。


「・・・?」


 何だ?今少し違和感が・・・


「残念です。もう少しお話したかったのですが」

「はは、そのうちまた会えるさ」


 莉緒ちゃんの言葉に返答しているうちにわずかな違和感は無くなっていた。その後も特に違和感を抱く事は無かったので気のせいだったのだろう。


 こうして再び2人での生活が再開したと思っていたのだけど・・・


「弘人さん、明日から林間学校ですので3日間不在になります」

「お、そういえばそうか」


 莉緒ちゃんを迎えに来た車内での会話でハッと思い出す。絵菜の襲来(?)のインパクトが強かったせいですっかり忘れていた。


「準備とかは今からするの?」

「いえ、もう準備は済ませてあります」


 準備を事前に済ましている辺り、堅実な莉緒ちゃんらしいと思う。ただ、その割に表情が浮かないように見えるのはなぜだろうか。


「あの、私が居ない間の食事なんですけど・・・」


 どこか言いにくそうな様子の莉緒ちゃん。どうやら俺の食事をどうするか気にしているらしかった。


「もし宜しければ作り置きでもしましょうか?」

「いやいやいや、そこまでしなくて良いから!昼は会社のお弁当を頼むし、夜は外食で済ませるし」


 さすがにそれは気を遣いすぎだと思うし、何より莉緒ちゃんに負担が掛かりすぎる。


「それでは栄養に偏りが出てしまいます!」

「そうかもしれないけど、出来るだけバランス良く摂るようにするから作り置きはしなくて良いよ」


 その後も食い下がってくる莉緒ちゃんを説得してどうにか納得してもらうのだった。




「あれ、何かいつもより豪華な気がする」


 テーブルに並んだ料理を見て気付く。しかも品数も多くて何かの記念日かというくらいである。


「ふふ、作り置きは断られてしまいましたので、代わりに今日を豪華にしてみました!」


 笑顔で答える莉緒ちゃん。どうりでいつもより時間が掛かっている気がした訳である。

 結局気を遣わせてしまったけど、莉緒ちゃんが上機嫌な様子なので水を差す事もないだろう。


 当然ながらどの料理もとても美味しく、いつもより量があったにもかかわらず全て平らげる事が出来た。


 その後リビングでしばらくゲームをしていると、洗い物を済ませた莉緒ちゃんが隣に座ってきて頭を肩にそっと乗せてくる。


「ん?どうしたんだ?」

「えへへ、久しぶりにこうしてみたかったんです」


 さらにグリグリと擦りつけるかのように頭を動かしてくる。


「はは、確かに懐かしいな」


 甘えるような今の仕草は莉緒ちゃんがまだ小学生低学年くらいの時までよくやっていたのだ。


「お父さんは嘆いてましたけど」

「そりゃ誠也に対しては無かったからな」


 そう、父親の誠也に対しては全く甘える仕草をしなかったので、「何でパパにはしてくれないんだ〜!」とか叫んで半泣きになってたな。おかげで誠也には時々睨まれる羽目になったが。


「だってあの時はお父さんに散々くっつかれて嫌になってましたから」

「早い反抗期だったなぁ」


 あの時期は誠也の仕事が安定し始めて莉緒ちゃんと居れる時間が増えてきた頃だった。当時から莉緒ちゃんを溺愛していた誠也はようやく一緒に居れる時間が増えた反動で過剰なまでにベッタリしていたのだ。


 そのせいで莉緒ちゃんが誠也を避けるようになり、「弘人お兄ちゃん助けて」と俺の方に寄ってきてよく防波堤(?)代わりになっていたのである。


「お父さんに『近付かないで』とか言ってましたし」


 今でこそ苦笑しながら話している莉緒ちゃんだけど、一時期は口を利かないとか本当にやばい状態だった。

 それをさすがに見ていられなくなった俺が誠也に口出した結果、色々とあったのだけどそれはまた別の機会があれば語るとしよう。


 最終的には今のような形に近い状態で収まったので良かったといえば良かったのだろう。


「・・・ありがとうな」


 思わず小声で呟いたのだけど、莉緒ちゃんは反応して俺へ視線を向ける。


「えっと、何がでしょうか?」


 不思議そうに首を傾げる莉緒ちゃん。


「・・・いや、誠也と仲直りしてくれてありがとうって事さ」

「・・・私にとっては唯一の家族ですから。弘人さんこそお父さんとずっと仲良くしてくれてありがとうございます。弘人さんが居なければ、お父さんはもっと苦労していたかもしれません」


 娘である莉緒ちゃんに誠也へのお礼を言われるのは何ともむず痒いものがある。


「誠也とは長い付き合いだからな。色々と相談されるのは慣れてる。頼むから誠也の心の安定のためにもずっと仲良くしてくれよ?」

「ふふ、それはお父さん次第です」

「それもそうか」


 2人で笑い合った後、莉緒ちゃんが「一緒にゲームで遊びませんか」と誘ってきた。


「明日の事を考えると遅くまでやるのは良くないぞ?」

「分かっています。でも今は弘人さんと遊びたい気分なんです。ダメ、ですか?」


 上目遣いをしてくる莉緒ちゃんの要求に断れるはずもない俺はこの後一緒にゲームをして遊んだのだった。


 俺も大概莉緒ちゃんに甘いな、と思いながら。

お読みいただきありがとうございます。

3章も残すところあと数話になりました。思った以上に時間が掛かってしまいましたが、引き続き本作を楽しんでいただけると幸いです。


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