第44話 ゲーム勝負2
お待たせしました。
「これで9ポイント取れましたね」
莉緒ちゃんが嬉しそうに呟く。
1位を獲得すると9ポイント、2位が6、3位が3、4位が1、5位以降は0ポイントとなるため、ポイントを得るには4位以上に入らなければならない。
「ふん、今回はハンデにしておいてあげる。残りの3コースで充分に逆転すれば良いだけだから」
対する絵菜は悔しそうにしながらも気合を入れ直したようだ。
ポイント付与の画面が終わり、次に表示されたのは崖のコースである。このコースの特徴は途中いくつか道が分岐しており、唯一順位がゴールまで表示されない。また、コース後半は道の両端に落下防止の柵がなく、落ちるとかなりの時間ロスになってしまうのだ。
先程と同じようにロケットスタートを成功させる2人。操作技術は見た限りほぼ互角で、どちらが勝つかは予想出来ないくらいである。
2台がほぼ拮抗した状態でコースの分岐に差し掛かると、2人共全く同じルートを選択した。
「やっぱ最短ルートは知ってるか〜」
「ふふ、当然です」
2台がもつれ合うようにデッドヒートを繰り広げている先に数匹のハリネズミが現れる。これはコースの障害物で、ハリネズミに触れるとスピンをするのだ。
すると絵菜はニヤリと笑みを浮かべて自身が操るカートを莉緒ちゃんが操るカートに横からぶつける。
「あっ!」
莉緒ちゃんが操るカートがバランスを崩し、ハリネズミに触れてスピンをしてしまう。
「あは、さっきのお返しよ!」
莉緒ちゃんがスピンで時間をロスしている間に絵菜は巧みにハリネズミを躱して先行する。
(いやいや、2人共容赦なさすぎだろ!)
見た目の可愛い2人が対戦で明らかに嫌われるプレイングを平気でしている事に戦慄を覚えずにはいられなかった。
絵菜は先行しても決して手を抜かず、ヘアピンカーブに差し掛かる前に大きくドリフトをして崖に落ちる手前で小ジャンプをする。
「よし、成功!」
絵菜が喜びの声を上げる。ヘアピンカーブ後の道はカーブする前と比べて高さが低くなっていて、上手く操作すればヘアピンカーブを通らずにショートカットが出来るようになっているのだ。ただし、失敗すれば崖の底まで一直線でリスクはかなり高い。
絵菜を追う莉緒ちゃんも同じく操作してショートカットに成功するものの、この後も差を縮めきる事は出来ず今度は絵菜が1位でゴールした。
「まっ、こんなものか」
絵菜が満足気な笑みを浮べている傍で莉緒ちゃんは少し悔しそうな表情になっていた。2人共結構な負けず嫌いなのは知っているので、案外似た者同士なのかもしれない。
2人が同じポイントで並んだところで、次はおどろおどろしい沼のコースである。ここも落下防止の柵が所々無いので、コースアウトすると沼に落ちてかなりの時間ロスになってしまう。しかも細かなカーブが多いので慎重に操作する必要がある。
しかしこのコースについては2人に味方しなかったようだ。CPUが放った雷アイテムで莉緒ちゃんはスピンした勢いで沼に落ち、先行した絵菜は障害物のコウモリにペシャンコにされた。
その後も不運が続いて絵菜は2位、莉緒ちゃんは3位に終わった。
これで絵菜が21ポイント、莉緒ちゃんが18ポイントで最終コースに挑む事になる。
「これで1位を取ったらアタシの勝ちね!」
「いいえ、私が1位を取ってみせます!」
ちょっと気合を入れ過ぎじゃないかと突っ込みたくなるけど、余計な事を言うのも野暮なので黙っていようと思う。
さて、最後のコースは路面が虹色に輝いていて、このゲーム内で最も長いのが特徴である。そして、このコースにはもう1つ大きな特徴があるのだ。
2人共当たり前のようにロケットスタートを成功させる。普通ならばすぐに大きな下り坂が来るので、小ジャンプをしてちょっとした空の旅を味わえるのだけど、2人はすぐに路面の左側にカートを寄せる。そして、進行方向から90度にカートを向けて小ジャンプ。
このコースは全てに柵が設けられているけど、コース外は闇が広がっていてコースアウトすると大幅な時間ロスとなってしまう。
2人の行為は知らない人からすると自分からコースアウトして自滅していくようにしか見えない。しかし、
「いけっ!」
「届いてっ!」
画面に広がるのは闇・・・だけではなく虹色の路面も見える。そして、2台のカートは共に虹色の路面へと着地した。
そう、この最終コースは大幅なショートカットが出来るのも大きな特徴である。しかし、失敗をすればスタート地点近くに戻されるためハイリスクハイリターンといえる。
「ショートカット出来るのですね」
「ふふん、当たり前じゃん」
ショートカットが成功すればもはやCPUなど敵ではなくなる。つまりここからは純粋に一騎打ちという事になる。
2人は1位と2位を繰り返しながらデッドヒートを続ける。難易度が高めなショートカットにもかかわらず2周目、最終の3周目もお互い成功し、レースも最終局面を迎えている。
2人共ほぼ同じ位置でアイテムボックスも残すところあと1つといった場面で事態は動く。
「あっ!?」
莉緒ちゃんの操るカートがコースを徘徊する光る怪物を避けきれずに接触してクラッシュしてしまう。
「油断したね!」
絵菜は光る怪物を躱して先行する。莉緒ちゃんも再び動き始めたけど、差が開いてしまっている。
「まだ終わっていません!」
それでも莉緒ちゃんは諦めずに最後のアイテムボックスを通過する。獲得したアイテムは赤甲羅3個である。
「いって!」
莉緒ちゃんはすぐに赤甲羅を発射する。最後は直線なのでまず外れる事ないだろう。
「間に合え!」
絵菜は必死に逃げるも、ゴール直前で赤甲羅がやってくる。
1発は緑甲羅を盾にして防ぐけど、2発目は防げずにクラッシュする。しかもゴールまであと1カート分といったところで停車する。
さらに莉緒ちゃんは3発目の赤甲羅を放ち、絵菜を再びクラッシュさせてその場に縫い付ける。
そして、莉緒ちゃんはそのままゴールを潜り抜けたのだった。
「やりました!」
「くう、またしても赤甲羅にやられた!」
両者の明暗はその表情が如実に物語っている。しかし、
「結果は引き分けですね・・・」
そう、莉緒ちゃんが言う通り、最終コースを終えて両者共に27ポイント。この勝負は引き分けである。
「よ〜し、それなら・・・」
「もうやめとけ」
絵菜が言いそうな事は予想出来たのですかさず割り込んでおく。
「え〜、まだ時間はいっぱいあるって〜」
「ダメだ。2人共負けたら負けたで別のゲームでまた勝負しようとするんじゃないか?」
「うっ、そ、それは・・・」
「え、えっと・・・」
2人が露骨に目を逸らす辺り、図星なのは明らかである。まあ2人共負けず嫌いなので、同じ事の繰り返しになるのは間違いないだろう。
「じゃあ、どうやって勝負を決めれば良いの?」
2人共別の部屋で寝るという案が却下されている以上、提案出来るのは1つだけである。
「勝負なんかしなくても、日替わりで隣に寝れば良いだろ」
「それが無難か〜。莉緒ちゃんもそれで良い?」
「はい、そうしましょう」
莉緒ちゃんも了承したので、とりあえずは収束したとホッと一息である。何だか妙に気疲れしたな・・・
こうして謎のゲーム勝負は幕を閉じたのだった。
ちなみにこの後、今日はどちらが隣に寝るかでまた揉め始めるのだけど、それはまた別の話である。
お読みいただきありがとうございます。
ゲーム勝負は好きですが、負けると悔しいので勝つまでやってしまいそうです。




