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第43話 ゲーム勝負1

お待たせしました。

 俺がお風呂から出てくると、リビングでは絵菜と莉緒ちゃんから異様な雰囲気を感じた。

 一体何なんだと不思議に思った時に2人が俺の方を向くとドタドタと近付いてくる。しかも妙な圧を感じてしまい思わず後退る。


「お兄ちゃん!」

「弘人さん!」


 絵菜と莉緒ちゃんが同時に声を上げる。何を言われるのだろうか?


「「隣で一緒に寝るのはアタシだよね(私ですよね)!?」」


 これも同時に声を上げられる。2人共息がピッタリ合っているなぁと半ば現実逃避気味に考える。

 いや、何となくこうなった流れは読める。そろそろ寝る時間も近付いてきているので布団の準備をしようとしたところでお互い気付いたのだろう。

 莉緒ちゃんは頑なに隣で寝てくるし、絵菜も泊まりに来た時は必ず隣で寝ようとするのだ。

 つまり、こうなる事は必然だったという訳である。


「2人共別の部屋で寝るというのは・・・」

「ない!」

「ありません!」


 俺の提案は瞬時に却下される。まあ予想はしてたけど。


「莉緒ちゃんは用意された部屋で寝れば良いじゃん。別にお兄ちゃんの隣で寝る必要はないでしょ」

「どこで寝ようと私の勝手です。絵菜さんこそその年になってまだお兄さんの隣で寝ようとするなんて恥ずかしくないんですか?」

「全然?家族で一緒に寝る事のどこが恥ずかしいの?むしろ仲睦まじくて良いじゃん」


 2人の口論(?)はどんどん白熱していく。たかが俺の隣に寝る寝ないでどうしてこんな状態になるんだと言いたいけど、もし言ったら怒りの矛先を向けられそうなので沈黙を貫く事にする。


「これでは埒が明かないですね」

「そうね。じゃあここは1つ勝負でもしてみない?」


 絵菜の提案に莉緒ちゃんが首を縦に振る。


「分かりました。何にしますか?」

「う〜ん・・・、莉緒ちゃんはゲームって得意?」

「ええ、それなりには」

「オッケ〜、じゃあゲーム勝負にしよう!ソフトは・・・これなんてどう?」


 絵菜が見せたのは国民的に有名なレースゲームである。オーバーオールを来たおじさんキャラを始め個性的なキャラクターが多数登場し、時には操作技術、時にはアイテムを駆使してトップを目指すのだ。


 それにしても絵菜が見せているのは最新機種のソフトではなく、三世代くらい前の機種のソフトである。


 ではなぜそんな古いソフトで勝負を持ちかけたのか。理由は簡単、絵菜が得意だからである。

 実家に居る時にやたらとこのソフトで一緒に遊んでいたのをよく覚えている。


 そうなると絵菜に有利な勝負に見えるけど・・・


「分かりました」


 対する莉緒ちゃんは2つ返事で了承する。絵菜は莉緒ちゃんの様子を見て軽く首を傾げるけど、ゲーム機にソフトを挿し込んでゲームを起動させる。


「勝負はCPU込みの対戦、最終コースが終わった時点でポイントの多い方が勝ちで良い?」

「はい、大丈夫です」


 次にキャラクターの選択画面に移り、絵菜が選んだのは姫キャラである。

 このシリーズは一般的に重量級のキャラを使いこなせば有利なんだけど、このソフトに限っては軽量級のキャラが有利になるのだ。当然ながら姫キャラは軽量級である。

 対する莉緒ちゃんが選択したのは緑色の恐竜キャラ。実を言うとこのキャラも軽量級なのだ。


 ここでも絵菜は不思議な表情をしながら、次のコース選択画面へと移る。

 絵菜が選んだのはスペシャルカップ。難易度が高めのコースが多いので、実力に差が出やすいと思う。


 最初はジャングルのコースである。途中にある川をジャンプ台で横断するところがポイントとなっている。 

 スタート画面に移ると、スタート前の赤いランプが2つ点灯した後にスタートの青いランプが点灯する。


「っ!」


 ロケットスタートに成功したカート・・・姫キャラと緑の恐竜キャラが一気に前に出る。


「なっ!?」


 絵菜が驚いている間に最初のコーナーがやってくる。

 姫キャラと緑の恐竜キャラはほぼ同じタイミングでドリフトし始める。ドリフトの文字が白から黄、黄から赤に変化してからRボタンを離すと少しの間だけ速度がわずかに上がるのだ。


「ミニターボまで使えるの!?まさか・・・!」


 画面に集中しながらも驚きが隠せない絵菜。


「ふふ、私もこのゲームは結構プレイしてたんですよ?」


 莉緒ちゃんも画面に集中しながら笑顔を見せる。そう、実は莉緒ちゃんもこのゲームはかなりやり込んでいる。理由もこれまた簡単で祭川家にもこのゲームがあって、遊びに行った時もよくプレイしていたからである。


 最初のコーナーを絵菜が操作する姫キャラがわずかに先行したところで最初のアイテムを入手出来るボックスを通り抜ける。順位によって出るアイテムの質が変わるのだけど、姫キャラに出たのはバナナの皮1個、対する緑の恐竜キャラに出たのは赤甲羅3個である。


「ちっ、しまった!」


 舌打ちしながら思わず顔を歪める絵菜。

 バナナの皮は触れたカートをスピンさせるアイテムで、赤甲羅は1つ上の順位にいるカートをターゲットとして追尾し、当たるとクラッシュをするというアイテムである。


「えいっ!」


 莉緒ちゃんの掛け声とともに赤甲羅が発射される。絵菜はすかさずバナナの皮でガードするものの、まだ赤甲羅が2個残っている。

 しかし、続けて赤甲羅を発射させなかった。その理由も分かっている絵菜は苦い表情である。


 そして姫キャラが川を渡るジャンプ台に差し掛かった時、莉緒ちゃんは2発目の赤甲羅を発射する。


 姫キャラがジャンプする直前に赤甲羅が到達し、派手にクラッシュする。しかもダッシュマスでスピードが出ていたのでそのまま川へと落ちていった。当然ながらただのクラッシュよりも大きな時間ロスである。


「やってくれたわね・・・!」


 絵菜が睨みつけるも、莉緒ちゃんは涼しい顔で操作を続けていた。


 結局、コースに復帰してから絵菜は猛追を掛けるも莉緒ちゃんに追い付くことは出来ず2位に終わった。


「まずは1勝、です」


 笑顔を浮かべる莉緒ちゃんに対し、悔しそうな表情の絵菜。


「そこまでやるのなら、アタシももう容赦しないから!!」


 どうやらこの勝負、思った以上に殺伐としそうな予感がするのであった。

お読みいただきありがとうございます。

今回のゲームネタはご存知の方も多いと思います。

作者も相当やり込んだので印象深いゲームです。

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