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第4話 初日の終わり

お待たせしました。今日は何を食べようかな〜。

「ちょっと食べすぎちゃいました・・・」


 莉緒ちゃんがお腹を押さえながら苦笑していた。


「まああの店はちょっと量が多いから仕方ないよ」


 カレーを堪能した俺と莉緒ちゃんはインドカレーの店を出て、車を走らせてアパートの部屋に戻ってきていた。

 莉緒ちゃんはセットメニューを完食していたけどやはり女の子にとっては量が多かったのだろう、ソファに座りながら少し苦しそうにしている。


「でもとても美味しかったです。次も行きたいですね」

「そう言ってもらえて良かったよ」


 莉緒ちゃんの隣(莉緒ちゃんにまたもや言われて)に座っている俺も少々食べ過ぎたので少し休憩が必要だった。


(以前は余裕で食べられたんだけどな・・・)


 あの店を見つけた頃はチーズナンにプレーンナンをおかわり出来たが、今はチーズナンを完食するので精一杯なため俺も年を取ったなと思ってしまう。

 その後は二人でテレビを観ながら雑談をしていたが、いつの間にか時刻が21時を過ぎていたのでそろそろ風呂を沸かす準備をしようと思った。


「今からお風呂を沸かすけど、莉緒ちゃんが先に入って良いよ」

「でも、弘人さんを差し置いて先にお風呂をいただくなんて・・・」

「気にしなくて良いから、先に入っておいで。だいたいおっさんが入った後の湯船に浸かるのも嫌じゃないか?」

「ではお言葉に甘えます。・・・弘人さんの後に入りたい気持ちは山々ですけど」


 またしても後半部分がよく聞こえず、俺は少し耳が遠くなってしまったのではないかと思わず疑ってしまった。


「悪いけど着替えを入れる籠は無いから、洗濯機の上にでも置いて」


 莉緒ちゃんはこくんと頷くと、着替えを持って脱衣スペースへと消えていった。

 莉緒ちゃんを見送った俺はスマホを取り出し、かなり古参のプレイヤーとなりつつある某有名RPGのソシャゲをしばらくの間プレイしながらテレビ番組を視聴して時間を潰した。

 約一時間近く経っただろうか、莉緒ちゃんがお風呂から上がってきてリビングに姿を見せた。薄ピンク色のパジャマを身に着け、髪が濡れて頬が赤くなっている様子は少々艶やかに見えた。


「すみません、かなり長く入ってしまって・・・」

「別に構わないよ。というかしばらくここに暮らすんだから一々色んな事を気を遣っていると疲れるだろうし、自分の家だと思って遠慮無くくつろいで欲しい」

「は、はい、分かりました。では、1つお願いがあるのですが・・・」


 おずおずと俺の顔色を窺うように莉緒ちゃんが尋ねてきた。


「ん?何だ?」

「あ、あの、髪の毛をドライヤで乾かしながら梳いてもらえませんか?」

「えっ、俺がやっても良いのか?」

「少し昔の事を思い出してしまって・・・。久しぶりにして欲しいです」


 そういえば莉緒ちゃんがまだ小さい頃は時々してあげた記憶がある。最初はぎこちない手つきだったけど、回数を重ねるうちに慣れてきたっけな・・・。

 莉緒ちゃんが中学に上がる頃には自然にやる事が無くなっていたが、誠也は今でもたまにやるらしく話題に何回か挙がっていた。


「分かった。櫛とドライヤーを貸してくれるか?」


 莉緒ちゃんは頷くと、キャリーケースから櫛とドライヤーを取り出して俺に渡してくる。


「じゃあ始めるよ」


 長い髪を梳かした経験は無いので、ドライヤーの風を当てながら慎重かつ丁寧に櫛で莉緒ちゃんの髪を梳かしていく。

 莉緒ちゃんの髪の毛は傷んでいる様子は全く無くサラサラとしていて、普段から手入れをきちんとしている事が窺える。


「んっ・・・」


 時々莉緒ちゃんが艶やかな声を上げるのでドキッとさせられたけど、どうにか手元を狂わせる事無く乾かし終えた。


「はい、これで終わり」

「丁寧にしていただいてありがとうございますっ!はぁ~、最高の気分です・・・」

「はは、大げさじゃないか?」

「いえいえ、大げさじゃありません。これからは毎日して欲しいくらいです」

「ま、毎日って、それは流石に勘弁してほしい・・・」


 莉緒ちゃんはあからさまにがっかりした表情になったが、俺としては毎日あの緊張感を味わいたくなかった。


「むむ、残念です・・・。でもたまにならやってくれますか?」

「まあ、それなら・・・」

「ふふ、約束ですよ?」


 莉緒ちゃんの表情が少し明るくなったので、俺としては一安心だった。

 ただし、これ以降は週一でやる事になるのだが、この時の俺は知る由も無かった。




「寝る準備をするよ」


 俺も風呂に入り終えてしばらくすると時間が23時近くになってきたので、そろそろ寝る準備をした方が良さそうだ。

 俺は来客用の布団を持ってきてどこに敷くかを考えようとしたのだが、


「あ、あの、弘人さんの部屋で一緒に寝たいです」


 と、莉緒ちゃんが唐突に言い出したので少し驚いた。


「え?それは流石にまずい・・・」

「だ、大丈夫です!な、何も起きませんからっ」


 いや、それはどちらかというと俺が言う台詞の様な気がする。

 少々無防備すぎる莉緒ちゃんに対して些か心配になってしまう。男女が同じ部屋で寝る事の危険性

 を理解しているのだろうか。しかも莉緒ちゃんは間違いなく美少女なので他の男の前でこの様な態度を見せると高確率で襲われてしまうだろう。

 誠也は過保護すぎるが、少しあいつの気持ちも分かる気がした。


「まあ莉緒ちゃんがそう言うなら構わないけど、他の男の前では無防備な態度を取っちゃダメだよ」


 一応注意だけはしておこう。


「ふふ、心配していただいてありがとうございます。でも、心を許した男性以外にこんな事は言いませんので安心してください」


 莉緒ちゃんがニコリを笑顔を浮かべながら答え、俺はその言葉に一瞬ドキッとした。

 おそらく莉緒ちゃんの物心が付く前からの付き合いなので信頼しているという意味だろうが、際どい発言は遠慮して欲しいものである。


 俺は自分の分と莉緒ちゃんの分の布団を部屋に敷く。布団は少し離して敷くつもりだったけど、

 莉緒ちゃんになぜか「くっ付けて敷いてください」と強く言われたので仕方なくくっ付けて敷く事になる。

 それから二人同時に布団に入ると、隣の莉緒ちゃんはやたらと上機嫌の様子ですぐに寝付きそうな感じでは無かった。


「まだ眠くなさそうだね」

「えへへ、久しぶりに弘人さんと一緒に寝ると思うと何だかワクワクしてしまって・・・」


 少し照れながらそう答える莉緒ちゃん。


「そういえば莉緒ちゃんが小さい頃は時々添い寝をしてたっけ」


 当時は誠也は遅くまで仕事をしている日もあって、その時は代わりに俺が莉緒ちゃんを寝かし付けに行く事がたまにあったのだ。

 確か小学校の低学年くらいまではあったけど、それ以降は誠也の仕事帰りが早くなったのでいつの間にか無くなっていた。


「懐かしい記憶です・・・。まさか一緒に寝る機会が今になって来るとは思いませんでした」

「確かに。ふぁぁ~」


 大きなあくびが出る。今日は仕事もそれなりに忙しかったし、何より莉緒ちゃんの事があったからいつもより早く眠気が襲ってきていた。


「先に眠らせてもらうよ」

「はい、おやすみなさい」


 いつもとは違い甘く、そしてどこか安心感のある匂いに包まれながら俺はあっさりと眠りに就いたのだった。

お読みいただきありがとうございます。


突然ですが作者は某白黒の名前を冠するカードゲームをしています。来週末には新作が発売するのですごく楽しみです!

公開されてきているカードを見ると結構強そうな感じがしています。環境まで行けると良いな・・・。

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