第3話 莉緒ちゃんと外食
お待たせしました。最近朝が結構寒くなってきました・・・。
「莉緒ちゃんは何か食べたい物ある?」
乗り込んだ車内で俺(運転席)は莉緒ちゃん(助手席)に聞いてみた。
「えと・・・、私は特に希望はありませんので、弘人さんの食べたい物で良いです」
「う~ん、ならどうするかな・・・」
いくつか候補が挙がるものの、出来ればチェーン店でない所に連れていきたいと思っていた。
(一昨日はとんかつ定食、昨日は牛丼を食べたから・・・)
頭の中で整理して候補を絞っていき、最終的に決めたのは、
「よし、今日はカレーの店にしよう」
「カレーですか!という事は『GOGO一番家』でしょうか?」
GOGO一番家は全国に展開する有名なカレー専門のチェーン店である。確かにそれも選択肢として考えていたけど、チェーン店という事で除外していた。
「いや、今日はインドカレーの店に行こうと思う」
「えっ、インドカレーの店が近くにあるんですか?」
「近くと言ってもここから車で10分程掛かるけどね」
「私、インドカレーは初めてですっ」
「あの店は店員さんがインドから来た人だから、かなり本格的だと思うよ」
本格的と言ってもある程度日本人の味覚に合うように調整されているだろうけど美味しい事に変わりない。
「楽しみです!」
莉緒ちゃんはウキウキした様子で、声音からも本当に楽しみだという事が伝わってきた。
雑談をしながら車を10分ほど走らせるとインドカレーの店に到着する。
「ん~、もうスパイスの匂いがしてきます」
莉緒ちゃんの言った通り、車を駐車場に停めて車外に出るとすでにスパイシーな匂いが漂ってくる。
空きっ腹にはこの匂いがさらに食欲を刺激するんだよな・・・。
俺と莉緒ちゃんは店内に入ると店員さんの案内を受けてテーブル席に着く。アパート部屋でのソファーの一件とは違って莉緒ちゃんは対面に座った。
程なくして店員さんがメニューを二冊持ってきたので、二人でメニューを確認する。
ちらっと莉緒ちゃんの様子を見ると、目をキラキラさせながらメニューを眺めては唸っている。どうやら迷っている様子だったので、助け船を出すことにする。
「最初なら、この野菜カリーセットがお勧めだよ」
野菜カリーセットはカレーの種類が野菜カレーに固定されるが、他にサラダ、アチャール、ミニタンドリーチキン、飲み物が付いてくる。
ちなみにナンの種類はプレーンナン(通常)とミニチーズナン(+100円)、チーズナン(+200円)、スパイシーナン(+100円)の4種類で、
プレーンナンはタダでおかわり可能だがその他は改めて単品で注文しなければならない。
「弘人さんのお勧めであればこのセットにします!」
「了解。あとはナンの種類と飲み物を選んでおいて」
「はいっ。弘人さんはもう決まったのですか?」
「ああ俺はチョイスカリーセットにする」
チョイスカリーセットは十数種類あるカレーの中から二種類を選ぶセットで、あとは野菜カリーセットと同じくサラダ、アチャール、ミニタンドリーチキンが付いてくる。
莉緒ちゃんもナンの種類と飲み物が決まった様なので、店員さんを呼び注文をする。
俺はチョイスカリーセットでカレーをキーマカレーとポークマサラカレー、ナンの種類はチーズナン、飲み物はマンゴーラッシーとした。
莉緒ちゃんは野菜カリーセットでナンの種類はプレーンナン、飲み物はマンゴージュースとしたようだ。
ちなみにカレーの辛さは甘口、普通、辛口、激辛、超激辛の五段階あるが、二人とも普通の辛さとした。
注文が終わって店員さんが去った後に莉緒ちゃんへ声を掛ける。
「プレーンナンはかなりサイズが大きいから最初は驚くと思うよ」
「それは楽しみです。弘人さんはこの店に結構来られるのですか?」
「だいたい月に一回くらいかな。たまに無性に食べたくなる。他にも色々カレーの種類があるから何回来ても飽きない」
「そうなのですね」
しばらく二人で雑談をしていると、店員さんがカートを引いて料理を運んできた。
「うわぁ、大きいです・・・」
運ばれてきたプレーンナンを見た莉緒ちゃんは目を丸くしていた。
(まあ最初は驚くよな)
プレーンナンの大きさは半径35センチメートル弱の円形を八分の一にしたくらいで、男であってもかなりのボリュームがある。
対する俺が選んだチーズナンは直径が20センチメートル程度の円形になっているが、かなり大量の
チーズが使われていて見た目よりもボリュームがかなりある代物だ。
店員さんがカートから全ての料理をテーブルに置いて去って行ったので、食べ始めることにする。
「「いただきます」」
ほぼ同時に言うと、まずは莉緒ちゃんがどの様な反応を示すか確認した。
莉緒ちゃんはナンを千切ると、野菜カレーを少し付けて口に運ぶ。
「!美味しいですっ!」
莉緒ちゃんの輝く笑顔を見て心の底から美味しさを感じている事はすぐに分かった。
「喜んでもらえて良かったよ」
自分が見つけた店の料理を美味しいと言ってもらえると、紹介した甲斐があったというものである。
「こんなに美味しいインドカレーのお店が近くに有るとは知りませんでした。普段は家で食べますので、あまり外食する事が無いんです」
「それなら莉緒ちゃんが俺の部屋に居る間はたまにどこかで外食するか」
「ですが・・・」
「遠慮する事は無い。むしろしばらくの間はご飯を作ってもらう方が申し訳ないんだけど」
「それこそ気にしないでください。・・・私が作る料理を弘人さんに食べてもらえると思うと幸せですし」
後半がぼそぼそとした小声で言われたので何を言ったのか聞こえなかったけど、莉緒ちゃんが食事を再開したので聞き返すタイミング逃した。おそらくは大した事では無かったのだろうと思い、気にせず俺も食べ始める事にする。
まずはチーズナンだけを手に取って口に運ぶ。
「うん、美味い」
ふんわりしたナンの食感に濃厚なチーズの風味が広がった後で仄かに蜂蜜の様な甘味を感じた。この甘味がカレーと一緒に食べた時にさらに味を引き立てるだけでなく、チーズの濃厚な味がしつこくしすぎない様にしているのだ。
次にチーズナンにキーマカレーを載せて口に運ぶと、スパイスの効いたキーマカレーと濃厚なチーズの風味が調和して口の中に広がりとても美味しい。
「莉緒ちゃんもチーズナン食べてみる?」
「えっ、良いんですか?ではお言葉に甘えて」
莉緒ちゃんの料理の皿にチーズナンを一切れ置くと、莉緒ちゃんは野菜カレーを付けて口に運んだ。
「!!!とても美味しいですっ!」
「だろ?あとお勧めの食べ方だけど・・・」
雑談を挟みながら俺と莉緒ちゃんは存分に舌鼓を打ったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
今回から短編の先の話となります。
別作品の『BATTLE DOLL MASTER 〜黒の執行人の無双伝〜』では後書きに今回の話のコメントと次回予告みたいなものを書いていましたが、ここでは雑談的な内容を書いていこうかと思います。
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