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第27話 GW4日目2

お待たせしました。今回は少し長めです。

「ふへへ〜、セ〜ンパ〜イたのしんれますかぁ~?」


 目をトロンとさせながら呂律の回らない口調で仙堂はグラスに入った赤ワインを飲み干していく。


「お、おい、もう止めとけって」


 やっぱりこうなってしまったかと思いつつ、俺が必死に仙堂を止める事になったきっかけは今から20分程前に遡る。




「すごく美味しかったですね~」


 コース料理も最後のデザートとなり、俺と仙堂は惜しみながらもデザートを味わっていた。


「ああ、そうだな」


 店内の雰囲気も良し、値段もリーズナブル、そして料理が特に素晴らしく量も味も申し分無かった。評判になるのも頷けるというものである。

 しかもコース料理だけでなく単品のメニューも豊富で値段もさらに良心的だから、今度は莉緒ちゃんを連れて来ようかな。

 そう思いながらデザートを食べ終えようとした時、仙堂がテーブルに置かれていたベルを鳴らす。


「どうしたんだ?」

「メイン料理の時に飲んだ赤ワインが気に入ったので追加で注文しようかと」


 確かに赤ワインを美味しそうに飲んでいた気がする。


「あまり飲みすぎるなよ」

「大丈夫ですって〜」


 そう、今思えばこの時にもっと強く言っていれば良かったのだけど、もはや後の祭りである。

 仙堂は余程その赤ワインが気に入ったのか、最初に追加で注文した後も何回か注文をして気付いたときには見事な酔っぱらいの出来上がりとなった。




「あ〜赤ワイン美味しい〜れす〜。もっとおかわりしましゅ〜えへへ〜」


 覚束ない手付きで再びベルを鳴らそうとした仙堂の手を俺は慌てて掴んだ。


「なにしゅるんでしゅか〜?」


 仙堂の目が微妙に据わっていて少し気圧されるものの、これ以上は流石にまずいと思った。


「これ以上はダメだ。もう店を出るぞ」

「ええ〜、まら飲み足りましぇ〜ん!」


 強引にベルを鳴らそうと力を入れてくるけど、酔っぱらっている状態なのであっさりと押さえつけられる。


「ええい、そんなに酔っ払ったら次の日がしんどくなるぞ」

「明日は〜やしゅみなのでだいじょ〜ぶれしゅ〜」


 Vサインをしているけど、今の状態を見れば明日は二日酔いに悩まされるのは明らかである。


「とにかくダメだ。もう帰るぞ」

「いやですぅ〜もっとしぇんぱいと飲みたいですぅ〜」


 仙堂の言葉からは俺を慕ってくれているというのが分かって嬉しいけど、そろそろ周りの客の迷惑になりそうだから何とか収めないと。


「そのくらいならまた今度付き合ってやるから、今日のところは帰るぞ」

「えぇ〜、ほんとぉでしゅか〜?」

「俺が今まで嘘を言った事があるか?」


 俺としては少し面倒というのが本音だけど、別に嘘は言ってない。ただ、酔っぱらいを介抱するのは遠慮したいところだが。


「うぅ〜、わっかりましたぁ〜。今日はこれでゆりゅしてあげましょぉ〜」


 俺の言葉でようやく納得してくれたのか仙堂は席を立とうとするけど、足取りもかなり覚束ないというか千鳥足になっている。こりゃ支えてやらないとまともに歩けそうにないな。


「悪いがちょっと我慢しろよ」


 仕方なく仙堂の腕を俺の肩に回してどうにか支えられるようにした。あまり接触しすぎるとセクハラと言われかねないけど、ここはきちんと歩いてもらうためにも勘弁してほしいところだ。


「うっ・・・」


 仙堂との距離が近くなり、仙堂が付けている香水と酒の香りが混ざって俺の鼻に入ってくる。正直言ってちょっとキツイけど我慢するしかない。


 会計をした時に迷惑を掛けた事を店員に謝っておいたけど、「大丈夫ですよ」と笑顔で答えてくれた。

 ただ、しばらくの間この店に来にくくなってしまったのは確かである。




「ほら、着いたぞ」


 千鳥足状態の仙堂をどうにか助手席に乗せて車を走らせてしばらくすると仙堂が住むマンションへと到着したのだが・・・


「うわ、寝ちまってる」


 助手席を見ると気持ちよさそうに寝息を立てて眠る仙堂の姿があった。

 とはいえ、このまま寝かせていては良くないので仙堂を起こす事にする。


「おい仙堂、マンションに着いたから起きるんだ!」


 軽く肩を揺すってみるものの、中々起きる様子はない。いくら先輩とはいえ男の前でこんな無防備で良いのだろうか?

 仕方ないのでもう少し強く肩を揺すると仙堂が身じろぎして目をゆっくりと開いた。


「んぁ〜しぇんぱぁいだぁ〜」


 舌っ足らずな口調で蕩けた笑みを浮かべる仙堂。少しドキッとしたけど、何事もなかったかのように声を掛ける。


「ようやく起きたか・・・。マンション着いたから降りてくれ」

「ん〜?あ〜ホントぉでしゅね〜」


 やはりというべきか覚束ない手付きでどうにかシートベルトを外し、ドアを開けて外に出るけど足取りは相変わらずフラフラである。


(はぁ、これじゃ以前と同じじゃないか・・・)


 内心で溜め息を付きながら俺は運転席から外に出て再び仙堂を支える。

 そう、実は以前も全く同じ状況で仙堂を送っていたのだ。ただ、あの時は住所を知らなかったので酔っぱらった状態の仙堂から聞き出すところから始めなければならなかった。それに比べればまだましだけど、かなり手間であることには変わりない。


 フラつく仙堂をどうにか支えながらマンションのエントランスに入る。

 このマンションはセキュリティが高く、エントランスには監視カメラに管理人が目を光らせていて、エントランスの先は番号を入力しないと開かない自動ドアがある。

 最初に来た時は番号を聞き出せず、仕方ないので管理人さんに声を掛けたら思いっきり怪しげな視線を向けられて説明するのもだいぶ苦労した事は記憶に新しい。

 そりゃ泥酔状態の若い女性を中年男が支えていたら不審に思うのは真っ当なので文句は言えなかった。


「仙堂、番号を押せるか?」


 一応聞いてみるけど、仙堂の様子が以前と全く同じだったので早々に諦めて管理人さんに声を掛ける。

 今回は怪しげな視線を向けられず、むしろ「大変ですね」と生暖かい視線を頂戴した。嬉しくもないが。


 管理人さんに自動ドアを開けてもらい、どうにかエレベーターに乗り込んで『5階』のボタンを押す。これがもし住人のカードキーが無いと利用出来ないタイプだったらもう一苦労するところである。

 5階に到着したらエレベーターを出て、仙堂を支えるのに苦労しながらゆっくりと歩く。


「ようやく着いた・・・」


 仙堂の部屋の前まで辿り着けばあと一息である。


「仙堂、カードキーを出してくれ」


 さすがに仙堂のカバンをまさぐる訳にもいかないので声を掛ける。


「ふぁ〜、かぁどきぃでしゅかぁ?」


 もはや口調どころか意識も怪しい仙堂がまともにカードキーを出せるどうか。

 しまったな、以前と同じように管理人さんに開けてもらえば良かった。あの時は管理人さんがまだ半信半疑の様子だったのか部屋まで付いてきていたのだ。

 今回はまだ返答が来るのでいけると思ったけど、今更戻るのもだいぶ手間である。


 どうしようか迷っていると、俺の想いが通じたのか仙堂はカバンの中を探ってカードキーを出してくれた。


「だしました〜」

「じゃあカードキーでドアを開けてくれ」


 やはり覚束ない手付きでカードキーを当てるとカチャという電子音とともにドアが解錠される。

 すぐに俺はドアを開けて仙堂を慎重に部屋の中へと入る。本当はこのままUターンして帰りたいけど玄関に放っておく訳にもいかないので、靴を脱がせて部屋へと上がる。

 マンションの間取りは1LDKで、仙堂の寝室はリビングの奥側にある。

 未だにフラフラ状態の仙堂を見て、寝室まで行った方が良いと判断してどうにか仙堂を支えて辿り着く。


 ここで一安心したのが良くなかったのかもしれない。


 ベッドが見えたからなのか仙堂が急に力を入れ出したので、俺はとっさに支えきれずに仙堂ともつれ合って一緒にベッドへ倒れ込んでしまう。第三者から見れば仙堂が俺を押し倒したような形に見えるはずだ。


「お、おい仙堂離れてくれ」


 さすがに強引に退かせる訳にもいかないので声を掛けるものの、仙堂はにへらと笑みを浮かべてさらに近付いてくる。


「えへへ〜、しぇ〜んばぁい〜」


 酔っているせいなのか妙な色気を出してくる仙堂。ところどころから仙堂の柔らかさが伝わってくる。


 ちょっとやばいって!!


 俺の離れてほしいという気持ちとは裏腹に仙堂はギュッと強く抱き着いてきて一層柔らかさが伝わって・・・!?


「ちょっ、仙堂!?」


 くっ、しかも豊かな2つの山を押し付けるようにすり寄ってくるんじゃない!

 必死に耐えつつ引き剥がそうとしても中々力が強くて解けない。

 焦っている間にも仙堂は自身の顔を俺の方へと寄せてくる。もう息遣いが伝わるほどに近くなって!?


「ふふふ〜、しぇ〜んばぁい〜、だ〜・・・」


 どうするつもりなんだと思った時、突然糸が切れた人形のように仙堂から力が抜ける。仙堂の顔も逸れて横にあった枕に埋まると穏やかな寝息が聞こえてくる。


「何やってんだか・・・」


 今度こそホッとしつつ、仙堂が起きないようにゆっくりと身体を動かしてベッドから抜け出すことに成功した。


「ゆっくり休めよ」


 聞こえないであろう一言を呟きながら、風邪を引かないようにそっと布団を掛けて寝室を出る。


「はぁ、まったく手の掛かる後輩だ」


 精神的な疲れがどっと襲ってくるかのようであった。仙堂の事だから以前と同じように今日の出来事が途中から記憶に残っていないだろう。

 そう思うと苦労を返せと少し腹立たしい気持ちにもなるけど、工事が無事に終わって緊張の糸が切れたのだと思う。

 仕方ないと思いつつも、今度一緒に行く事になった場合は絶対に酒の量を注意しようと心に決めた。


「帰るか・・・」


 玄関のドアはオートロックになっているのでこのまま部屋を出ても問題ない。

 俺は多大な疲労を感じながら家路へと着くのだった。


 ちなみにアパートへ帰ると莉緒ちゃんが笑顔で迎えてくれたのだけど、すぐに表情が固まっていたのはなぜだろうか?

お読みいただきありがとうございます。

意外にお色気シーン(?)を書くのは難しいと痛感しました。

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