第23話 GW2日目3
大変お待たせしました。
「はい、おまちどうさま〜」
注文してしばらくすると、美菜子自らオムライスを持って来てくれた。
「わぁ、美味しそうです!」
莉緒ちゃんはテーブルに置かれたオムライスを目を輝かせながら見つめている。トロリとした半熟の卵の上からデミグラスソースが掛けられていて、食欲をそそる匂いが漂っているのだから無理もない。
俺が注文したオムライスは半熟ではなくしっかりとケチャップライスを包み込んでいて、上からクリームシチュー風のソースが掛かっている。美味しそうな匂いも漂っているので早く食べてみたい心境である。
「さ、冷めないうちに食べとくれ」
美菜子さんに促されて俺と莉緒ちゃんは「いただきます」と同時に声を出してから口に運ぶ。
「!!とても美味しいですっ!」
思わず莉緒ちゃんの頬がほころぶ。俺も以前食べた事があるけど、濃厚なデミグラスソースに半熟の卵とケチャップライスが見事に合わさって蕩けそうなくらいに美味しいのだ。
「気に入ってもらえたみたいだねぇ」
美味しそうに食べる莉緒ちゃんを美菜子さんは微笑ましげに眺めている。
「はいっ、レシピを教えて欲しいくらいです!」
「おっ、嬉しい事言ってくれるじゃないか。でもさすがに教えられないねぇ」
「では少しでも味わって食べて参考にします!」
「はは、面白い事言う子だねぇ」
すると美菜子さんがテーブルを挟んで向かい側の席に座ってきたので、莉緒ちゃんは不思議そうな表情を浮かべる。
「あの・・・?」
「ん?アタイの事は気にしないで食べとくれ」
「は、はい」
美菜子さんに言われて莉緒ちゃんは食事を再開する。
「ほら、弘人君も」
「ええ、いただきますよ」
クリームシチュー風のソースが掛かった部分をスプーンで掬って口に運ぶ。
「うん、美味しい」
クリームシチュー風のソースのまろやかさと卵に包まれたケチャップライスが見事に調和していてとても素晴らしい味である。久しぶりに美菜子さんの料理を食べたけど、相変わらずの腕である。
「ありがと。腕によりをかけて作った甲斐があるってもんさ。で、今日は何しに来たの?」
「仕事が休みだったんで、莉緒ちゃんと映画を見に来たんですよ。それでまだ時間があるんでショッピングモールに来ました」
「ふ〜ん、じゃあアタイの店に来たのはついでって訳ねぇ」
「いえ、久しぶりに美菜子さんに会いたかったというのもあります」
「何か取って付けられたような気もするけど、まあ良いわ。アタイも久しぶりに会えて嬉しいし。でも親友の娘と出掛けるってのも何だか珍しいねぇ」
美菜子さんの疑問はもっともである。まあ美菜子さんになら事情を説明しても問題無いか。
「実は・・・」
俺は莉緒ちゃんの親である誠也が突然長期出張になって莉緒ちゃんを預かる事になった経緯を説明した。
「なるほどねぇ〜。ま、弘人君なら安心か」
「は、はいっ、弘人さんにはとても感謝しています!」
莉緒ちゃんの表情で心からそう思っている事が分かるので、俺は嬉しいやらこそばゆいやら奇妙な気持ちになりそうだ。
「いやいや、感謝してるのは俺の方だよ。毎食ご飯を作ってもらってるし、家事も色々やってもらってるから」
「い、いえ、私が好きでしている事ですので・・・」
莉緒ちゃんは頬を赤くしながら照れ笑いを浮かべる。
「へぇ・・・」
莉緒ちゃんの様子を見て意味深な笑みを浮かべる美菜子さん。何か気になる事でもあったのだろうか?
「あ、あのっ、美菜子さんはお店の方は大丈夫なのですか?」
あからさまな話題の変換だったけど、美菜子は気にした様子もなかった。
「ん?ああ、これは趣味みたいなものだから商売は考えてないねぇ。知り合いに美味しい料理を振る舞って喜ぶ顔が見れれば良いのさ」
「そうですか・・・」
どこか心配そうな莉緒ちゃんの様子を見て美菜子さんはフッと微笑む。
「君は良い子だねぇ~。本業は別にあるから安心して良いさ」
「えっ!?」
莉緒ちゃんが驚いたところで俺がフォローを入れる。
「美菜子さんの言った事は本当だよ。本業はアパレル関係の経営をしてるんだ。ほら、『MINAKOブランド』って聞いたことないかな?」
「ええっ、あのMINAKOブランドですか!?」
莉緒ちゃんがさらに驚いた表情になるのも無理はない。『MINAKOブランド』はリーズナブルな価格ながらもデザイン性が高い事で特に10代〜20代の女性に絶大な人気を誇っている有名なブランドなのだ。
「そ。だから何も心配する事はないさ」
「ご、ごめんなさい、何て余計な事を・・・」
莉緒ちゃんの表情が沈みそうになったところで美菜子さんは莉緒ちゃんの頭を撫でる。
「ふふ、怒ってないから大丈夫。むしろとても良い子だって事が分かったからアタイは嬉しいねぇ。弘人君が可愛がるのも分かる気がするよ」
「あ、あの、ありがとうございます?」
「どういたしまして。さ、どんどん食べとくれ」
「はいっ」
莉緒ちゃんの笑顔が戻ったところで俺達は雑談しながら美味しいオムライスを堪能したのだった。
「今日はありがとうございました。とても美味しかったです」
莉緒ちゃんが美菜子さんに深々とお辞儀をする。
「いやいや、アタイだってあんなに美味しそうに食べてもらって嬉しかったねぇ。また今度も来とくれよ」
「はいっ、是非!」
次に美菜子さんは俺の方を見る。
「そういう事だから今度来る時も彼女を連れてくるんだよ」
「ええ、勿論ですよ」
美菜子さんは莉緒ちゃんの事を相当気に入ったようである。なぜなら美菜子さんが今度も来てほしいと言うのは余程気に入った相手にしか言わない事を知っているからだ。
「あと、この子と2人で少し話がしたいから悪いんだけど先に出てもらえる?」
「?分かりました」
2人きりで話がしたいってなんだろうかと不思議に思いながらも俺は先に店を出た。
数分後には莉緒ちゃんも店から出てきたけど、少し頬が赤くなっているような気がしたのだった。
いつもお読みいただきありがとうございます。
かなり久しぶりの更新になってしまいました。
最近はさらに仕事が忙しくなり、中々執筆の方に手が付けられなかったです。
次はいつになるか分かりませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。




