第19話 GW初日1
大変お待たせしました。GW編開幕です!
GW初日。
今日は依頼した工事があるので会社へ出勤である。
事務所に到着するとすでに何人かが来て仕事の準備をしていた。
休日にもかかわらず事務所に人が居るという光景は10年も経てば見慣れたもので、連休に出勤するというのももはや慣れてしまっていた。
席に着いてパソコンの電源を入れ、今日行う工事に関する資料を印刷しておく。工事自体は業者に施工してもらうし、資料も渡しているけど工事の支持用として使うのだ。
業者が来るまでまだ少し時間があるので、自動販売機で紅茶を買ってじっくりと飲み始める。
莉緒ちゃんは今日に予定は無いらしく、部屋で本を読んだりテスト勉強も少しすると言っていた。ただ起きる時間はいつもと変わらず、俺が起きた時にはすでに朝食の準備をしていた。しかもお弁当まで用意してくれたのだ。
休日まで態々作らなくても良いんだよと俺は言ったのだけど、「いえ、好きでやっている事ですので」と笑顔で答えられてはそれ以上何も言う事が出来なかった。本当に莉緒ちゃんには感謝の気持ちしかない。きっと将来は良いお嫁さんになると思う。
「さて・・・」
紅茶を飲み終えると、そろそろ時間が近づいてきたので製造現場へと向かう。
現場へ到着するとすでに現場担当者の姿があった。
「おはようございます、的場さん」
「おう、今日はよろしく頼むぜ!」
的場さんは製造現場で設備の保全を20年以上もしているベテランである。俺はこの製造現場を担当してまだ日が浅いので、的場さんには色々とお世話になっている。
しばらく的場さんと雑談していると、会社支給の携帯電話に業者から電話が掛かってきた。どうやら業者が到着したようである。
「業者が来ましたので準備をお願い出来ますか?」
「分かった、電源を切る準備をしておく」
的場さんが頷いた事を確認すると、俺は業者が居る場所へと向かう。
すでに業者はワンボックスから今日の工事に使う道具や材料を下ろしているところであった。
「おはようございます、西田さん。今日はよろしくお願いします」
「神白さん、おはようございます。事前準備もバッチリですので任せておいてください!」
西田さんは俺がよくお願いする施工業者の社長である。年は俺よりも10歳程上にもかかわらず気さくな人で、色々と融通を利いてくれるのでとても懇意にしているのだ。
「今日は4人ですか?」
「ええ。順調にいけば夕方までは掛からないと思いますよ」
西田さんと会話をしながら工事現場へと向かう。西田さんも下見は済んでいるので足取りに迷いは無かった。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
的場さんが西田さんに向かって軽く頭を下げる。
「おはようございます、的場さん。工事手順も頭に入っていますので任せておいてください」
俺が西田さんの会社によく工事をお願いするため、当然ながら的場さんとも顔見知りである。
工事準備も終わり、全員が揃ったところで朝礼を始める。本日の工事内容を簡単に説明し、施工時の注意点を周知していく。
工事を施工してもらう際に一番重要なのは安全面である。工事中に事故、つまり労働災害を起こしてしまう事は何としても避けなければならない。怪我をせず安全に施工してもらうためにも作業前に危険予知(頭文字を取ってKYという)をしておく事はとても重要である。
「ではよろしくお願いします。ご安全に!」
『ご安全に!』
『ご安全に』という声掛けは一般的にあまり耳にしないけど、製造現場や工事現場などでは安全意識の高揚や喚起するという意味合いでよく使われているのだ。
朝礼が終わると的場さん、西田さんと3人で電源をオフにするためブレーカーのある場所へと向かう。
「今日落とすブレーカーはこの2つで良いか?」
「はい、間違いありません。よろしくお願いします」
的場さんはブレーカーを落とし、取手の部分にブレーカーロック用の道具を装着して南京錠を掛ける。こうする事で他人から不意にブレーカーを入れられる心配はなく、感電事故のリスクを未然に防ぐ事が出来る。
俺を含めた3人でブレーカーを落とした事を確認したところで西田さんが配線の端子部に検電器と呼ばれる道具を当てる。検電器は電気が来ているかどうかを確かめる道具で、電気が来ていればピーという音が出るのだ。
「検電器に反応無し。確かに電源は切れていますね」
「では施工に入ってください」
「了解しました!」
西田さんが元気よく返事すると工事現場へと戻っていった。
「俺は別の場所で作業してるから、何かあったら連絡してくれ」
「分かりました」
俺が頷くと的場さんは作業する場所へと向かっていった。
「さてと・・・」
俺は工事現場に戻り、施工の様子を見に行く。時々西田さんの質問に答えながら確認しているといつの間にか昼前になっていた。
業者が昼休憩に行ったところで、俺も事務所に戻って弁当箱をカバンから取り出す。
弁当箱の蓋を開けるといつものように栄養のバランスが考えられたおかずが並んでいる。しかも冷凍食品は一切使われておらず全てが手作りとまできている。しかもいつもと比べて少し手が込んでいるようにも見える。
休日にもかかわらず朝早くから起きて弁当を作ってくれた莉緒ちゃんに改めて感謝しつつ、早速玉子焼きを口に運ぶ。
「うん、美味しい」
ふわりとした食感にダシが効いていて冷めていてもすごく美味しい。他のおかずも次々と口に運び夢中になって食べているといつの間にか弁当箱の中身が空になっていた。
「ふう、ご馳走さまでした」
弁当の余韻をじっくりと味わいながら両手を合わせる。美味しい物を食べた事で仕事への活力が湧いてくる気がした。
よし、午後からも頑張れそうだ!
午後も引き続き工事現場へ行って施工状況を確認している。時々西田さんから質問されるけど、工事は順調に進んでいった。
『神白さん、工事が終わりました!』
書類整理で工事現場を離れていた時に西田さんから電話で連絡があったので、足早に現場へと向かう。
「お疲れ様でした。では配線チェックを始めましょうか」
「了解しました!おい、配線チェックをやるぞ!」
西田さんが部下を呼んでテスターとワニ口クリップが付いた長さ30センチ程度のケーブルを準備させていた。
配線チェックはケーブルを配線し終えた際に配線間違いが無いかを確認するために行う作業である。
二手に別れて各々が配線したケーブルの両端へ向かい、片側でワニ口クリップが付いたケーブルを配線したケーブルに当てて短絡と開放を行い、もう片側ではテスターで抵抗値を確認する。短絡すれば抵抗値はほぼゼロになるし、開放すれば限りなく大きい値が表示される。これが確認出来れば配線に間違いは無いという事になる。
「よし、持ち場についたな!今から始めるぞ!」
電話越しに西田さんが部下へ配線チェック開始を告げる。
「短絡!開放!」という西田さんが電話越しで部下へ指示して都度テスターの数値を確認する。
「よし、問題無し!次のケーブル行くぞ!」
次々と配線チェックを行っていき、数分程で今回敷設したケーブルの配線チェックを終える。
「配線間違いは無し。問題ありません」
「ありがとうございます。ではブレーカーロックを解除してもらいます」
俺は電話で的場さんを呼び、3人でブレーカーロック解除を確認した。
「電源復旧するぞ」
「はい、お願いします」
的場さんがブレーカーを投入して切れていた電源が復旧する。
「では試運転確認しましょうか。的場さんはスイッチを操作してくれますか?」
「おう、任せとけ!」
「私も立ち会います」
西田さんは施工が終わっているにもかかわらず試運転の立ち会いをすると言ってくれた。相変わらずとても良い人だと思う。
的場さんは今回の工事で追加されたスイッチを操作、俺は正しく動作をするか確認していく。
「オッケー!依頼した通りの動作になってるぜ」
的場さんさんの言葉を聞いてホッと一安心である。10年この仕事をやっていても、試運転確認はいつも緊張するのだ。
「これで終了ですね」
「おう、ありがとうよ!」
「西田さんも立ち会っていただいてありがとうございました」
「いえいえ、私もちゃんと動作するか確認したかったですから」
西田さんは笑顔で答える。人柄の良さと融通を利かせてくれる柔軟性もあって西田さんの会社は小規模ながらも引っ張りだこになっているので、今回引き受けてくれて本当に良かったと思う。
「お疲れ様でした。今後もよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ」
西田さんは軽くお辞儀をすると、道具を片付けて引き上げていった。
「いつもながら仕事が丁寧で安心できるな。神白くんもご苦労さん。またよろしく頼むわ」
的場さんは軽く手を振ると、別の作業をするために去っていった。いつも思うけど的場さんもかなり多忙そうである。
「さて、帰るか」
工事が終わったので事務所へと戻って帰る準備をする。時間はもうすぐ17時なので、いつもよりは少し早く帰れそうだ。
道中も休日の影響もあってかいつもより道が空いていて早くアパートに着く事が出来た。
「ただいま!」
俺が声を上げると階段を降りてきたエプロン姿の莉緒ちゃんが笑顔で迎えてくれたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
第2章が開始しましたが、実はまだ書き溜めが出来てません・・・。
仕事が忙しすぎて中々進めていないのが現状です。合間を見つけて徐々に書いていこうと思います。




