番外編2 お正月記念SS
続きを書こうかと思いましたが、お正月なのでまたしても特別編をお届けします。ただ、特別編にもかかわらず新キャラが登場します(ネタバレ)。
ピンポ~ン
「ん?何だ?」
インターホンが鳴った事に首を傾げる俺。なぜなら今日は1月1日、つまり元旦である。しかも朝8時という早い時間なのだ。こんな時に宅配便や来客があるとは思えなかった。
不審に思いつつもインターホンの画面を見ると、1人の女性が映っていた。
「おいおい、まさか・・・」
驚きながらも階段を下りてドアを開ける。
「やっほ〜。明けましておめでとう、お兄ちゃん!」
満面の笑顔で手を振る女性は俺の妹こと神白絵菜であった。少し茶色が混じった髪をツーサイドアップに纏め、赤色のダウンコートを着込んでいる。家族としての贔屓目を抜きにしてもかなり可愛くスタイルも良い。しかも性格も明るいときていて俺とは全く似ていないと思う。
「明けましておめでとう。っていうか来た事に驚きなんだが」
「ふっふっふ、サプライズだよっ!」
「サプライズって・・・。まあ良い、外は寒いから中に入れ」
「は〜い」
絵菜は茶色のロングブーツを脱いで、俺の後ろから階段を上ってきてリビングに荷物を置く。ってよく見たら大きいバッグを持ってるじゃないか。
「その荷物、もしかして・・・」
「とーぜん、正月の間は泊まるつもりだからっ!」
「はぁ!?んな事聞いてないぞ!」
「だって事前に連絡したら泊まるなって言うに決まってるじゃん」
さすが、俺の言いそうな事はよく分かってる。といっても俺の中でそんなに驚きは無い。なぜなら、たまにこうして突然泊まりに来る事があるからだ。
「優しい優しいお兄ちゃんがまさかこんな寒い中アタシに帰れって言わないよね?」
白々しい言い方だけど、全くその通りなので反論出来ない。俺は小さく溜め息を吐いた。
「来てしまったものは仕方無い。ちゃんと父さんや母さんには言ってきたんだろうな?」
「とーぜん!快くオッケーしてくれたよっ」
「何の連絡も無かったけどな」
「そんな事したらサプライズにならないじゃん」
と、このタイミングでRIMEが来たので確認してみると、宛先は母さんからであった。
『明けましておめでとう。絵菜がそっちに行くからよろしく!』
きっと絵菜が到着した事を見越して送ってきたに違いない。事後報告も甚だしいけど、許可が下りている以上何も言える事は無い。
「あっ、もしかしてお母さんから連絡でも来た?」
「ああ。絵菜をよろしくだってさ」
「さっすがお母さん、タイミングが良いねぇ〜」
「本当にな。で、朝ご飯は食べたのか?」
「もちろん、食べてないよっ!」
「食べてないんかい。じゃあちょうど食べるところだったから準備を手伝ってくれ」
「はいは〜い」
俺は冷蔵庫から買っておいたおせちを取り出した。
「おっ、結構豪華!これ1人で食べるつもりだったの?」
「まあな」
今回は仕事が終わったのが大晦日で、実家に帰るのも億劫だったので今回はアパートに留まる事にしたのだ。
その際に正月気分を味わいたいと思い、スーパーマーケットでおせち料理のセットを買って来たという訳である。
幸いというべきか3日間食べるつもりで多めに買ったので、1人増えたところで特に問題は無かった。
「お一人時間を満喫するつもりでしたか~」
「そりゃ誰も来る予定が無かったからな。箸はいつものやつを使ってくれ」
時々泊まりに来る関係もあって絵菜用となっている箸があるのだ。
「ん、りょーかいっ。美味しそ〜」
「だろ?さっ、食べようか」
「いただきま~す!」
絵菜はおせち料理を取皿で取ってから口に運ぶ。
「へぇ〜、結構美味しい!スーパーで売ってるのも馬鹿に出来ないね~」
俺も黒豆を一粒口に運ぶ。
「おっ、確かに中々イケるな」
いつもは実家に帰って手作りのおせち料理を食べているので、俺も今回買うのは初めてだったのだ。
「でしょ~。っていうかお雑煮は無いの?」
「ある訳無いだろ。俺が料理出来ないの知ってるくせに」
料理がほとんど出来ないのにお雑煮を作れる訳もない。
「あはは、言ってみただけだって。よ〜し、ならアタシが作ってあげるっ」
「作ってあげるってそんな材料無いぞ」
「帰りに買い物すれば良いじゃん。元旦でもスーパーはやってるんでしょ?」
「ああ、やってるな。って帰り?」
「そっ。食べた後に初詣行くからっ!」
行くからって言ってるけど、この流れだと・・・
「それって俺も行くのか?」
「とーぜんっ!アタシお兄ちゃんと一緒じゃなきゃ行かないもん」
狙ったように上目遣いで見てくるあたりにあざとさを感じるけど、悔しい事に可愛いのだ。
「分かった、近所の神社で良いなら」
「やった~、ありがとうお兄ちゃん!」
無邪気な笑顔で喜ぶ絵菜だけど、今は大学2年生ですでにハタチになっている。俺とは10も年が離れているにもかかわらず、今も慕ってくれるのは嬉しい事である。
「じゃあさっさと食べて行くぞ」
「うんっ!」
俺と絵菜はおせちを味わいながら雑談を続けるのだった。
「うわ〜、人がいっぱい!」
「そりゃ元旦だからな」
近所(といっても車で10分程の場所)にある神社にやって来ると、鳥居をくぐる前にもかかわらずすでにたくさんの人で溢れかえっていた。
「これじゃ人混みに紛れると迷子になっちゃいそう。ねえねえお兄ちゃん手を繋ごうよっ」
「ええ、何でだよ・・・」
俺が渋っていると絵菜が不満げな表情になる。
「お兄ちゃんはアタシと手を繋ぎたくないの?」
「いや、そういう訳じゃないけど、大学生にもなって兄と手を繋ぐなんて恥ずかしくないか?」
「ううん、全然!」
ハタチになって兄と手を繋ぐのが恥ずかしくないのって普通なのか?周りに兄妹がいないからよく分からない。ちなみに俺は少し恥ずかしい。
「アタシが繋ごうって言ってるんだから良いじゃん。別に減るものでもないし」
こうなってしまってはテコでも動かない事を知っている。まあ仕方無いか。
俺は絵菜の右手と繋ぐと、絵菜はすぐに笑顔になった。
「最初からそうしてれば良いのっ。まったく素直じゃないんだから」
ぶつくさと言われるけど、機嫌は直っているようなので良しとしよう。
「ふふっ、こうやって手を繋いだら恋人に見えるかな?」
「さあな。分からん」
「またまた照れちゃって〜。ホントは嬉しいんでしょ?」
絵菜は可愛いけど時々ウザ絡みをしてくるのが玉に瑕である。
「・・・手を繋ぐの止めるぞ」
「待って待って、冗談だからっ。謝るから許して〜」
ぐっと距離を縮めてアピールしてくる絵菜。普通の男ならあっさりと堕ちるだろうけど、生憎俺は家族なので特に何も感じない。
「はいはい分かったからくっ付くな。ほら、さっさと行くぞ」
かなりの人混みに苦労しながらも、俺と絵菜はようやく拝殿まで到着する。
「ふう、疲れたな」
「アタシは全然大丈夫だけど。やっぱり年じゃないの?」
ニヤニヤと笑みを浮かべる絵菜。明らかに揶揄ってきている。
「人混みで疲れただけだ。さあ、早くお参りしよう」
俺と絵菜は二礼二拍手一礼をすると拝殿を離れた。
「何をお願いしたんだ?」
お祈りをしている時が妙に熱心に見えたので気になったのだ。
「ふっふっふ、な〜いしょっ。教えたら叶わないじゃん」
人差し指を立てて口の前まで持ってきて『シッー』いうポーズを取る絵菜。何度も言うようだけどあざとい。
「それもそうか。じゃあお祈りもしたし帰ろう」
「ええ〜、おみくじしたいし出店とかも回りたいっ」
俺は人混みで疲れて帰りたい気分なんだけど、絵菜はというと不満げな表情を浮かべている。
「元旦くらいゆっくりしないか?」
「元旦だから一緒に回りたいのっ。たまにしか一緒に遊べないんだから良いじゃんっ!」
また出たよ。結局勝ち目が無いやつじゃないか。
「はぁ〜、仕方無いな。もう少しだけだぞ」
「やった~!これだからお兄ちゃん大好き!」
面と向かって言われると恥ずかしいけど悪い気はしない。
「お年玉くれたらもっと好きになっちゃうけどな〜」
「調子に乗るな」
絵菜の額に軽くデコピンをする。
「イタッ。あ~、暴力だいけないんだ〜!アタシの心はとても傷ついたな~。慰謝料としてお年玉を要求しますっ!」
「何だそりゃ。ほら、回りたいなら早く行くぞ」
「あっ、強く引っ張らないでよぉ〜」
その後はおみくじをしてから出店を回り、最後にスーパーマーケットに寄って帰路へと着いた。
・・・こういう正月もたまには悪くないと思いながら。
いつもお読みいただきありがとうございます。そして、明けましておめでとうございます!
今年も何かと忙しく更新が不定期になってしまいますがよろしくお願いします。
・・・って、SSを書く暇があるなら続きを書けとか言われてしまいそうですが(汗)。
という訳でお正月特別編をお届けしましたが、今回も時系列としては過去になります。本編の4年程前といったところです。
SSにもかかわらず新キャラの妹である絵菜が登場しちゃいましたが、本来であればもう少し後に出す予定だったんですよね。ただ物語にも大きく関わってきますので、この辺で少しでも知ってもらおうと思い今回の流れになりました。
本編も鋭意執筆中なのでもうすこしお待ちいただれば幸いです。
※本編で主人公の年齢を35→34歳に変更しました。
(短編版は35歳のままです)




