第18話 行きつけのカフェ3(莉緒視点)
お待たせしました。今回で第1章は終わりです。
ふふふ、楽しみです。
なぜなら今日は弘人さんの行きつけのカフェへ行く事になったからです。
行きつけのカフェは弘人さんが本をゆっくり読みたい時に行くそうなので、落ち着いた雰囲気なんだろうなと想像していました。
車に乗って着いた場所は一見すると普通の一軒家に見えます。ドアに『営業中』の札が掛かっていないとカフェだと分からないでしょう。
中に入ってみると私の想像通りで落ち着いた雰囲気でした。ゆったりとした時間を本を読みながら弘人さんと過ごす。
ふふ、何て素晴らしいシチュエーションでしょうか!
こんなに幸せな事があって良いだろうかと感動に浸っていると、女性の店員さんが近付いてきます。美人でしかもスタイルが良く、大人の雰囲気がこれでもかという程感じられます。
「いらっしゃいませ~。あっ、お久しぶりですね、ヒロさん」
弘人さんの方を向いて親しげに声を掛けてきました。しかもあの嬉しそうな表情はまさか・・・。
「あら、後ろに居る可愛い女の子は?もしかして娘さんですか?」
彩音さんと呼ばれた女性の店員さんは私の存在に気付くと弘人さんにそう聞いてきました。不思議そうな表情をしている辺り弘人さんが独身だというのを知っていたからでしょうか。
「まさか、彼女は友人の娘ですよ」
弘人さんの迷いの無い返答を聞いて私の胸は少しズキンと痛みます。確かに弘人さんの言った事は本当ですが、まだその位にしか思われていないというのがとても悔しいです。
絶対に振り向かせてみせます!
改めてそう決心しつつ、私は自己紹介しました。
「初めまして、祭川莉緒といいます。弘人さんには小さい頃からとてもお世話になっています」
彼女に目を逸らさず、長い付き合いである事をアピールします。
「ふふ、ご丁寧な自己紹介をありがとうございます。私の名前は空町彩音です。このカフェ『木漏れ日』のウェイトレスをしています。私もヒロさんには色々と助けてもらっていますの」
対する空町さんも自己紹介をしてきました。しかも最後にサラリと私の発言に被せるかのような内容を言ってきたのです。その雰囲気からは大人の余裕が漂っています。
「そうでしたか。・・・これはライバル出現かもしれませんっ!」
私は小さく呟きましたが、心の中では確信していました。空町さんは弘人さんに少なからず好意があるのだと。
席に案内されてから、本を読んでいる間も彩音さんは事あるごとにこちらへ(正確には弘人さんへ)視線を向けていました。弘人さんは本を読む事に集中して気付いていませんでしたが、私にはヒシヒシと感じました。
そして弘人さんのカップが空になったタイミングで席までやってきて、さりげなくおかわりが必要か聞いてくるのです。しかも席を離れる時にチラリと一瞬だけ私へ視線を向けて軽く微笑む事もありました。まるで私を挑発するかのようにです。
弘人さんはきっと空町さんを気遣いの出来る女性だと思っている事でしょう。ですがあれは弘人さんにアピールするための手段に過ぎないと私には丸分かりです。現に他のお客さんには至って普通の対応しかしていませんから。
見た目はほんわかしていて清楚な雰囲気がありますが、中身はきっと計算高い女性に違いありません。弘人さんを見る目が一瞬だけ獲物を捉えるかのようになった事を私は見逃していません。
結局私は読書にあまり集中出来ませんでした。せっかく続きを楽しみにしていたのに内容があまり頭に入ってこなくて残念な気持ちになっています。
ですがそれ以上に気がかりな事が出来てしまいました。弘人さんにとってはもはや行きつけになっているので、余程の事がない限りはこれからも来店するでしょう。そのたびに空町さんが手厚くおもてなしをするのだと思うとモヤモヤした気持ちになります。
きっと空町さんも私が弘人さんに好意を抱いている事に気付いています。今まではどうだったか分かりませんが、これからは積極的にアプローチしてくる気がします。
私も負けていられません!
そう決意しつつ、弘人さんが独りでここに来ないように絶対に付いて来ようとも強く思いながらカフェを後にしたのでした。
お読みいただきありがとうございます。
今回で第1章が終わりになり、次回から第2章開始ですがもうストックがありませんので少し間を空けようかと思います。
年内には再開しようと思いますので、気長にお待ちいただけると幸いです。
ブックマークや評価をしていただけるとモチベーションが上がって再開が早くなるかもしれませんのでよろしくお願いします。