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第16話 行きつけのカフェ1

お待たせしました。新ヒロイン登場です。

 空き部屋を整理した翌日。

 今日は日曜日のため休日である。

 休日といっても起きる時間は平日とそう変わらない。スマホの時計を見るとまだ6時過ぎである。

 俺は身体を起こして隣を見ると、すでに布団は折り畳まれていた。どうやら莉緒ちゃんも起床しているようだ。

 しかしリビングの方に足を運んでも莉緒ちゃんの姿はない。トイレや風呂場に居る様子もないとなると残るは

1ヶ所しかない。

 俺は昨日整理した空き部屋の前に立つと、ドアの隙間から照明の光が漏れてきているのが見えた。やはり莉緒ちゃんはここに居るらしい。

 ドアをノックすると、部屋の中から莉緒ちゃんの声がしたので中に入る。


「弘人さん、おはようございます」


 莉緒ちゃんは本から視線を上げ、俺の方を向いて挨拶した。


「おはよう。朝から本を読んでたの?」

「あはは、どうしても読みたくなってしまいまして・・・」


 照れたように笑う莉緒ちゃん。本をチラッと見たけど、どうやら読んでいたのはラノベのようだ。


「いつから読んでたの?」


 莉緒ちゃんが読んでるページを見ると、すでに半分以上は過ぎていたので起きてからかなり時間が経っていそうだ。


「えっと、朝の5時くらいからでしょうか」

「休日なのに随分と早く起きたんだね・・・。もしかしてあまり眠れなかった?」


 昨日は空き部屋の整理で疲れたのかすぐに寝入ってしまい、莉緒ちゃんがいつ寝たのかは知らないのだ。


「いえ、弘人さんがお休みなってすぐ後に寝ましたので大丈夫です」


 俺は莉緒ちゃんの顔を見つめてみても目の下にクマが出来ている様子も無いので、莉緒ちゃんの言った事は本当だろう。


「あ、あの、私の顔に何か付いてますか・・・?」


 頬を赤くしながら目を逸らす莉緒ちゃん。


「ごめん、莉緒ちゃんが言った事が本当か確かめたくてね。ちょっと見つめすぎちゃったかな?」

「そ、そんな事ありません!む、むしろずっと見ていて欲しいですっ」

「え?」

「い、いえ、何でもありません・・・。そ、それよりも朝食の準備をしましょうか」


 何か少し焦った様子で台所に行き、朝食の準備を始める莉緒ちゃん。よく聞こえなかったけど、何か恥ずかしい事でも言ったのだろうか。

 首を傾げながらも俺は朝食が出来るまでテレビを観ながら待つのだった。




「莉緒ちゃんは今日何か予定あるの?」


 朝食を食べ終わったところで莉緒ちゃんに聞いてみた。


「いえ、特にありません。今日は本でも読みながらゆっくり過ごそうかと思っています」


 本を読むか・・・そういえば俺も最近は仕事がそれなりに忙しかったので、じっくりと本を読む時間が無かった気がする。お気に入りのシリーズの新刊ですらまだ読めていなかったのだから。


「じゃあ俺も今日はゆっくり本を読む事にしよう。となれば久しぶりに行ってみるか」

「どこへ行かれるのですか?」

「うん、ゆっくりと本を読みたい時にはいつも行きつけのカフェに行くんだ。コーヒーや紅茶が美味しいし、雰囲気も良いからね」


 やはり仕事の影響で足が遠のいていたので、久しぶりに顔を出してみたいという気持ちがさらに強くなってきた。

 カフェに行って何を注文しようかと想いを馳せていると、莉緒ちゃんがおずおずと聞いてくる。


「あの、私も行って良いですか?」

「勿論良いよ。というか元々一緒に行くつもりだったし」


 俺の返答を聞いた莉緒ちゃんはパァッと輝く笑顔を見せる。


「えへへ、楽しみです!」


 上機嫌な莉緒ちゃんとともに出掛ける準備を始める。といっても読みたい本を何冊かピックアップしてカバンに入れるだけであったが。

 戸締りを確認したら二人で車に乗り込む。


「どのくらいで着くのですか?」

「車でだいたい20分くらいかな。自転車で行くにしてもちょっと遠いね」


 雑談しながらしばらく車を走らせていると、周囲が住宅街で道も少し狭くなってくる。


「何だかカフェがありそうな場所に見えないのですが・・・」

「それは俺も思っていたよ」


 カフェを見つけたのはまったくの偶然である。就職した当初はこの辺りの地理がよく分からなかったから、休日にはドライブがてら色々な場所を走らせていたのだ。

 時には今の様な住宅街も行っていたのだけど、ちょっと気になる物を見て車を止めたのがきっかけとなっている。


「着いたよ」

「えっ、ここですか?」


 莉緒ちゃんが不思議そうな表情になる物無理はない。看板や店名らしきものは何もなく、二階建ての一軒家にしか見えないからだ。


「うん。ほら、あそこに札が掛かってる」


 俺が指を差した方向に莉緒ちゃんが視線を向けると、玄関のドアに長方形の札が掛かっていた。


「あっ、『営業中』って書いてあります」


 そう、俺が最初来た時に気になったのは玄関のドアらしきものに『営業中』の札が掛かっている事だったのだ。


「空いてるみたいだから入ろう」


 俺が玄関のドアを開けて入るとベルの音が鳴り、後ろに居た莉緒ちゃんが驚きの声を上げる。


「わっ、中は本当にカフェなんですね!」

「俺も最初来た時は驚いたよ」


 玄関のドアを開けた先はしっかりとしたカフェの店内となっているので、初めて来た客はきっと違和感を覚えるだろう。内装は派手な物はなく落ち着いた雰囲気であり、ゆっくりとくつろげそうな空間となっている。

 莉緒ちゃんが店内を見回していると、ベルの音を聞いて置くからメイド服の様なものを着た女性が近づいてきた。


「いらっしゃいませ~。あっ、お久しぶりですね、ヒロさん」

「彩音さん、久しぶりです」


 嬉しそうに微笑む女性はこのカフェでウェイトレスをしている空町彩音さんである。パーマがかった茶髪が肩くらいまで伸び、顔立ちも整っていて美人だしスタイルもかなり良い。マスターの話ではカフェに来る男性客の多くは彩音さんが目当てらしく、なるほどなと納得出来てしまう。


「あら、後ろに居る可愛い女の子は?もしかして娘さんですか?」


 彩音さんが俺の後ろにいる莉緒ちゃんに視線を向けて不思議そうな表情をしている。


「まさか、彼女は友人の娘ですよ」


 俺がそう答える時に一瞬だけ不穏な雰囲気が流れた気がしたけど、きっと気のせいだろう。

 ただ、今まで後ろに居た莉緒ちゃんが突然前に出てきて彩音さんへじっくりと視線を向け始める。


「初めまして、祭川莉緒といいます。弘人さんには小さい頃からとてもお世話になっています」


 笑顔を浮かべている割にはどこか緊張している様子の莉緒ちゃん。声音にしてもどこか固さを感じる。


「ふふ、ご丁寧な自己紹介をありがとうございます。私の名前は空町彩音です。このカフェ『木漏れ日』のウェイトレスをしています。私もヒロさんには色々と助けてもらっていますの」


 穏やかな笑みを浮かべながら自己紹介する彩音さん。ただ、最後のくだりは必要だったのだろうかと思わず首を傾げる。


「そうでしたか。・・・これはライバル出現かもしれませんっ!」


 莉緒ちゃんの表情がいつの間にか少しだけ険しくなっている。

 今の短いやり取りで気になる事でもあったのだろうか。しかもいつもの如く後半はよく聞こえなかったし。


「ではお席に案内します。いつも通りの席で良いですよね?」

「ええ、お願いします」


 俺と莉緒ちゃんは彩音さんの案内で席へと移動し始めるのだった。

お読みいただきありがとうございます。

最近はだいぶ寒くなってきましたし、各所でイルミネーションもよく見かけるようになりました。

本格的に冬だなと実感し始めてます。

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