第14話 空き部屋の整理1
お待たせしました。明日から12月ですね。
今日は莉緒ちゃんが同居し始めてから初めての週末。
そして、いよいよ空き部屋の整理をする日でもある。
まずは今まで見せていなかった空き部屋の状況を莉緒ちゃんに見てもらう。
「これは何というか・・・」
莉緒ちゃんが言葉を失うのも当然である。何せ床面には足場の踏み場が無い程に大量のラノベや漫画、音楽CDやアニメDVDが置かれているのだから。
引っ越した当初は段ボール箱から開梱して一つ一つ整理してから棚に入れようと思っていた。しかし、この時期は仕事が忙しくて帰ってから整理しようという気力は湧かず、その後も床面の惨状(?)を見ると進めようという気が起きるはずもなく放置したまま今に至ってしまった。
「収納する棚はいくつかありますけど、明らかに足りないですね・・・」
「だからまずは棚を買いに行こうと思ってる。その間に莉緒ちゃんは今ある棚を使ってラノベとか漫画を収納していってほしい」
棚の数が足りていないけど、まずは床にある物を整理していかないと追加の棚を置くスペースが確保出来ないのだ。
「分かりました、頑張ります!」
「せっかくの休日なのに手伝わせてしまってすまない」
「いえ、掃除するのは好きですから。それに整理が終わったら読んでも良いのですよね?」
「もちろん、いくらでも読んでもらって構わない」
「ありがとうございます!読みたかった作品がいっぱいあるのでどれから読もうか迷ってしまいます」
ちなみに莉緒ちゃんはラノベや漫画を読むのがかなり好きである。というか俺と誠也が家で遊ぶ時はたいてい莉緒ちゃんも一緒だったので、その影響を大きく受けてしまったという背景がある。ゲームについても同様にかなり好きで腕前もかなり上手かったりする。
莉緒ちゃんに見送られてアパートを出た俺は車で近くのホームセンターまでやって来る。
店内に入ると早速俺は棚が置いてあるコーナーへと足を運ぶ。
「う~ん・・・」
本棚もいくつか種類があり、一つ一つサンプルを見ながら確認していく。棚を買うといっても部屋の広さを考えるとそんなに多くは設置できないので買いすぎても無駄になるだけである。それに本棚はラノベや漫画を整理するためであって、実際に部屋として使ってもらうには衣服を入れるタンスやテーブルも必要になってくるはずだ。
結局色々と見て回って棚、テーブル、CD等を入れるケース、衣装ケース等を購入した。タンスも検討したけどすぐに持ち帰れるものではないし、
棚を置いた後じゃないと置けるスペースも分からないのでとりあえず衣装ケースを買ったという流れである。
思ったよりも大量になってしまったため、店員さんにも手伝ってもらった。車に載せきれなければ軽トラを借りるという事も考える必要はあったけど、空いたスペースをフルに活用してどうにか載せきった。
車を運転してアパートまで戻ってくると、すでに2時間程経過していた。
俺は買った物を車から出して自分の部屋の前まで運び始める。いずれも重く、こればかりは莉緒ちゃんに手伝ってもらう訳にはいかないので俺一人でやるしかない。幸い距離はそれ程でもないけど、普段使わない筋肉を使っている気がするので次の日は高確率で筋肉痛だろう。
「あっ、お帰りなさい」
ようやく全ての荷物を運びこんで空き部屋に入ると、莉緒ちゃんが声を掛けてくれる。就職してからずっと一人暮らしだったので、お帰りの挨拶をされるのは何とも新鮮な気持ちである。
「ただいま。すごいな、かなり整理が出来てる・・・」
空き部屋を見ると、2時間前とは比べ物にならない程床面に置かれた本が整理されていた。俺ではこんな短時間でこれだけ整理するのは無理だっただろう。
「えへへ、ありがとうございます。でも、まだまだこれからですよ」
莉緒ちゃんの言う通り、整理は進んでいるものの空きスペースの確保には程遠い状態であった。
買った物を運んだ俺はすぐさま莉緒ちゃんと一緒に整理をし始める。
「あ、それと同じ本がいくつかありましたよ」
莉緒ちゃんは両手に取って全く同じ本を2冊見せてくる。
言っておくけど保存用と鑑賞用という用途分けで買った訳ではない。
「ああ、それは以前に買っている事を忘れて買ってしまったんだ」
単にそれだけの話である。時間が無くて読めなくても新刊をどんどん買っていくから、そのうちどの巻まで買ったのか分からなくなってしまったのだ。
「むむむ、お金がもったいないです!」
「面目ない・・・」
返す言葉もないとはこの事である。しかも自分の年齢の半分くらいの少女に注意されているのだから余計に情けないと思う。
作業し始めで出鼻を挫かれる形になった(自分の所為である)が、そのうちに集中してきて黙々と作業を進めていく。
「あっ、もうすぐお昼ですね」
莉緒ちゃんの声で俺は作業の手を止めて時計を見ると、確かにもうすぐで12時になるところであった。
「一旦休憩しようか」
「ではお昼ご飯を作りますね。あまり食材が残っていないので簡単な物しか作れないですけど」
「いやいや、いつも美味しい料理を作ってくれてありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
莉緒ちゃんは嬉しそうに台所へと向かうのだった。
お読みいただきありがとうございます。
本作はまだ春ですが、現実はもう冬です。最近は急激に冷え込み、暖房を使うことも増えてきました。そろそろコタツも出そうかと思っています。