第12話 疑念(佐奈視点)
お待たせしました。今回は佐奈視点です。
「怪しい・・・!」
私の名前は仙堂佐奈。今は某大手の会社に勤めてようやく1年が経ちました。
最近では少しずつ仕事を回してもらえるようになってきて、とても充実した日々を送ってます!
ただ、その大半はある1人の男性が大きく影響しちゃってるのですけどっ。
男性の名前は神白弘人センパイ。私がこの部署に配属されてからお世話になっている先輩社員なのです。年齢は私よりも一回りくらい年上ですけど、見た目はまだまだ20代後半と言われても違和感ないくらいで何よりかっこいい!
でも、配属された最初の頃はかなり素っ気無い態度を取ってしまっていました。
今思うと全く可愛げが無くって、あの時の私に怒ってやりたいくらいです。センパイは今まで見てきた男性とは違うんだって!
あんな態度を取ってしまっていたにもかかわらず、センパイは一つ一つ丁寧に仕事を教えてくれました。ちょっと不器用なところはあるけど、真面目で誠実な性格に私はどんどん惹かれていきました。
な、なんだかチョロい気もしてますけど、今までの言い寄ってきた男性と全く違うところに魅力を感じてしまったのだから仕方ないのですっ。
幸いセンパイはまだ独身なので、チャンスは充分にあるはず!
でも今まで私から男性に対して積極的にアピールしたことがないから、どうすれば良いか分かりません・・・。
まずは積極的に話し掛けてみようと思って空いた時間にセンパイに声を掛けても、素直になれず揶揄うような口調でしか話す事が出来ませんでした。
こんな絡み方をしていたらセンパイに嫌われてしまうのにどうして上手くいかないんだろう・・・。
寮に帰って反省しても次の日には結局同じように絡んでしまうという繰り返しで自己嫌悪に陥ったりする日々が続き、気が付くと入社して1年が経ってしまいました。
このままでは良くない!今年度こそは素直になろうと思っていても未だに直せずにいたある日、いつもと違う事が起きました。
私が出社した時にはいつも居るはずのセンパイが居なかったのです。勿論休暇ではなく、途中出社するという話も聞いていません。
ひょっとしたら急な体調不良で来れなくなったのかもと思っていましたが、しばらくするとセンパイが現れたのでホッと一安心しました。
でもちょっと気になったので聞いてみようかな。
「今日は遅かったですね~。寝坊でもしたんですか?」
私はセンパイに挨拶した後にこう切り出すとセンパイは
「いや、ちょっと用事が出来てな。しばらくはこの時間に出勤することが多くなる」
と答えました。
用事?と一瞬思いつつも、センパイと話せる貴重な時間が減る事に残念な気持ちの方が大きかったのでこの時は気になりませんでした。
「え~、朝にあんまりお喋り出来ないじゃないですか」
思わず本音が出てしまって焦りましたが、センパイは気にした様子も無かったのでセーフ!
で、この後はいつも通りの揶揄うような話し方になってしまったけど、センパイに近づいた時に何か違和感がありました・・・。
あれっ、いつものセンパイとはちょっと匂いが違う?
気のせいかなと思いつつも、無意識のうちにセンパイに近づいて匂いを嗅いでしまいました。
ちなみにこの日は寮に帰ってから大胆な行動をしてしまったとしばらく悶えてましたが今回は割愛します。
とにかく、その時に嗅いだ匂いはいつもと違っていると確信しました。しかも明らかに男性からはしてくるはずのない甘い匂い。ま、まさか他の女性と一緒に居てその時に付いた匂いじゃ・・・!?
私は表情が険しくなるのを抑えられません。
しかも聞いてみるとどうやら心当たりがありそう。センパイの返答は・・・
「多分部屋に芳香剤を置いたからだろう」
そんな訳がない!と思いました。だって、芳香剤のような人工的な匂いじゃないですっ!
結局始業のベルに邪魔をされて深く追及出来なかったけど、納得は一切していません!
それに今日の昼もおかしな出来事がありました。
いつもなら会社手配のお弁当を取りに行くはずなのに、今日はカバンを持って立ち上がったのですから。
不思議に思ってセンパイに聞いてみると、同期に資格関係の勉強を教えるとの事でした。
ど、同期ってまさか女性では!?と思い聞いてみましたが男性と答えていたので一安心・・・
でもどこか引っ掛かりを覚えます。話を聞く限りではおかしなところは無かったはずなのに。
こっそり追いかけようとも思いましたが、センパイに見つかったら気まずくなりそうですし・・・。
しばらくは様子見ですけど、もしセンパイに女性の影がチラついたら積極的に動いていきますからね!
お読みいただきありがとうございます。
今後もヒロイン視点を時々入れていく予定です。
そろそろ年末が近付いてきたので仕事がかなり忙しくなってきました・・・。