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ローザタニア王国物語 〜A FAIRY TALE〜  作者: 月城 美伶
jardin secret ~秘密の花園~

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第4章 Jardin secret ~秘密の花園~ 第七話

 普段のキリッとしたお姿とは少し違い、幼馴染であるヴィンセントと女性の話をしたりと砕けた様子でウィリアム様が休憩しておりますと、ヴィンセントが何やら発見してしまいました。

さて…第七話、スタートです。

 ウィリアム様とヴィンセントのいるバルコニーの角から、楽しそうにお話をされている聞き覚えのある鈴の音のような愛らしいお声と、もう一つこれまた聞き覚えのある優しい低音の甘いボイスが聞こえてきました。


「シャルロット!」

「あら?お兄様!それにヴィーまで…こんなところで何をされているの?」


カルロ伯爵にエスコートされる形でシャルロット様がバルコニーの角から談笑されながら出て来られました。ウィリアム様にお声を掛けられるまで気付かないくらい、シャルロット様はとても楽しそうに伯爵とお話をされていたご様子です。


「お前こそ…いつの間にかパーティー会場からいなくなったと思ったら…こんな夜の庭で何をしていたんだ?」

「ダンスに疲れちゃったからちょっと休憩しようと思って…。もうちょっと先のお庭のバルコニーでカルロ様と偶然お会いして、少しお話していたの」

「…本当にそうなのか?」

「陛下、ご安心ください…決して陛下が心配されるようなやましいことはございません」


カルロ伯爵は何かを感じ取られた様で、優しくウィリアム様に微笑まれながら頭を下げられました。


「そうよ!とても紳士的に一緒に居てくださったわ」


とても仲の良さそうなくらい打ち解けていらっしゃるお二人をご覧になって、ウィリアム様は狼狽…とまではいきませんが、とても緊迫したような表情でお二人を見ております。

何かを察したのか、ヴィンセントは少し険しい目つきで伯爵を見ていらっしゃるウィリアム様を諌めるように耳元でこそっと囁かれました。


「…体温の変化などございませんので、お二人とも嘘は仰ってなさそうです」

「…どうやらそのようだな」


ウィリアム様も伯爵とシャルロット様の様子をご覧になられて、お二人が嘘など言っていないと判断されたのかお顔を解されていつもの優しいお顔のウィリアム様に戻られました。


「んもぅ…ただお喋りしていただけよ?お兄様たちこそこんなところで何されているのよ…ってお兄様!煙草吸ってるのねっ!?」


別にやましいことは何一つないのに変な目で見られてご立腹のシャルロット様が目ざとくウィリアム様の手に持っていらっしゃる煙草を見つけて更にプンスカと怒り出し始めました。


「いや…シャル…これはその…」

「もう!お身体に悪いから止めてって言ってるのに!!ヴィー、どうせ貴方が進めたんでしょっ!」

「…煙草も葉巻も貴族の嗜みですよ?それに我々は法律上吸ってもいい年齢なのでなんの問題もありません」


スパーッと煙を豪快に出しながらヴィンセントは相変わらずしれっと言ってのけます。

その様子にシャルロット様は余計にプリプリとまるで小動物が地団駄を踏んでいるかのように起こり続けます。


「私が嫌なの!それにそんな毒みたいなものを吸うお兄様のお身体が心配なの!!」

「たまには毒も接種した方が良いときもありますって」

「何その理論…」

「ストレスの発散方法は人それぞれですから。まぁ毎日多量に吸っているわけでもないですし、ちょっとくらい見逃してやってくださいよ」

「んもう!ヴィーったらすぐにああ言えばこう言うんだから!ヴィーなんて嫌いよっ!!」

「嫌いで結構です」


子猫がライオンに楯突くようなシャルロット様のプンスカ怒りなど全く屁でもないヴィンセントは相変わらず煙草を深く吸い続けていましたが、煙草がだいぶ短くなってきたので渋々火を消してすでに吸い終わっていたウィリアム様の吸い殻と共にポケット灰皿へと始末されました。


「…だいぶアンティークの煙草を吸われていましたね。今は無きヘブンリーキッスの銘柄ですね」

「おや…伯爵もご存知でしたか」

「えぇ、私も昔は少しだけ嗜んでおりましたので。懐かしい香りですね」

「へぇ…実は私の祖父と父が大の煙草好きでしてたくさん集めておりました。ヘブンリーキッスのこの煙草は祖父が好きだったようで屋敷に残っていたんですよ。もう二人とも居ないので捨てても良かったんですが、勿体ないのでたまに拝借して吸っているんです」

「そうですか…それは…」

「あ、悲しむような話じゃないんで大丈夫です」


ヴィンセントの話に、カルロ伯爵は少ししんみりとされたお顔になりましたが、ヴィンセントはきっぱりと竹を割ったかのようにしんみりを拒否いたしました。


「それはそれは…。…そろそろ真夜中になりますね。それではこの辺で失礼させていただきます」

「ウチのシャルロットが何度も世話になりました」

「とんでもございません…偶然が重なったとはいえ幾度もシャルロット様にお会い出来てとても幸せな一日でした」


月が空の真上に上がったのをご覧になって、カルロ伯爵はスッと皆にお辞儀をされて退出しようとされます。シャルロット様の手を取られてキスをされると、優しくシャルロット様を見つめて微笑まれました。


「また…お会いしましょう」

「えぇ、絶対お屋敷に遊びに伺うわ」


ウィリアム様とヴィンセントの方に敬礼をされて、カルロ伯爵はスマートにその場を去られました。

角を曲がられるまで三人は静かにその後ろ姿を見送っておられました。


「さて…我々も部屋に戻ろうか」

カルロ伯爵の足音が聞こえなくなったのを確認されると、ウィリアム様は伯爵の後姿の余韻を見つめているシャルロット様に声を掛けられました。


「そうね。何だか今日はとても疲れちゃったわ」


余韻を断たれたシャルロット様は、ふぅ…っと溜息をつかれてウィリアム様の手を取られました。


「そちらの道は会場突っ切らなきゃならないので、あちらの人気の無い道から戻りましょう」

「そうだな。さぁシャル…行こう」

「えぇ…」


三人は伯爵が通られた道とは別の方向に踵を返し、バルコニーをあとにされたのでした。

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